ファースト・コンタクト
「うわああああああああああああああああああ」
元号が切り替わって半月ほど経った今日。
「ああああああああああああああああ!!!!!!!!」
Y県Y市のとある山の上の神社で。
「ぐあおおおああああ………………うぅ…………」
参拝を終えたばかりの清々しい心で。
「うぅ…………ぐ…………あぁ…………」
木漏れ日が差し込む爽やかな天気と共に。
「死に………………た…………ぐ………………」
私は、日文宵紬は、死にました。
そんでもって、巷で流行りの異世界転生なる文化(?)に巻き込まれてしまいました。
なんで?(素朴過ぎる疑問)
いや、確かに、たしかーに俺は死んだよ。死にましたよ!
大学で選択科目で仏教より神道の方を選択したもんだからって理由で近所のやや有名な山の上の神社に参拝をしましたよ。うん。
その直後に苔で滑ってなっがーい階段から落ちた所までは覚えてるのよ。そりゃ青春真っ只中で死にとう無いからって思うじゃん。
その念が滅茶苦茶に強かったのと参拝直後だったのもあるのかな。
まさか異世界転生するとは思わなかったよ。
あ、そうそう。このままだと無闇矢鱈と馴れ馴れしい語り手に対して「何者だよ」って思うよね。
と、言う訳で自己紹介と洒落込もう。
大学二年生、合法で飲酒が出来るようになったばかりの普通の青年。
階段から落ちたら異世界に転生するハメになった数奇な運の持ち主。
色々な説を検証する人気番組で名前について取材を受けた事があるのが一番の自慢。
好きな食べ物はコロッケ。
日文 宵紬とは俺の事よ!
---いや、少しイキリを入れて名乗ると恥ずかしい物だね。ごめん、やり直してもいいかい?
日文 宵紬です。まあ、ボチボチよろしくお願いします。
---《???・神の間》---
どうも、大学の学食では決まってコロッケ蕎麦を買う日文宵紬です。
只今、[死後の世界]のイメージをそのまま形にした様な場所に居ます。
白いもやがフワッと掛かった空気感に雲っぽい地面。高級そうな白と金で仕立てられた机。その向こうに座る中年男性(?)。私の隣には黒とシルバーでCOOLにキメた同い年ぐらいの男性(??)。
なにこれ?(ごくごく普通の疑問)
「あのー……すいません。出口ってどちらですか?」
「あ!ほらほら彼、彼だよ君とバッティングしちゃった子!」
隣の青年とバッティングセンターに行った覚えは無い。
と言うか何者だよ。
「アンタか!俺のライバル予定のやつは!俺は百川祝治ってんだ。異世界転生のチャンスなんて滅多にないんだ。お互い頑張ろうな!!」
「よろしくお願いする前にライバル予定ってどういう事ですかね?と言うか貴方は誰ですか??すいません、今の私の状況を教えて頂けませんか???」
セリフひとつで情報量は直ぐに渋滞を起こすものである。
とりあえず何か知っていそうな目の前の中年男性(よく見たら俳優の佐藤二百郎に似ている)に助けを求めた。
「ああ、ごめんね?祝治君、今すっごいイキイキウキウキしてる所だからさ。で、えーとだね。うん。君は---」
長ーい説明がようやく終わったので要約すると(渾身の駄洒落)、
・全く同じタイミングで同じ年齢かつ同性の人間が事故で死亡した。
・どうやら死後は多数存在する異世界へと魂のリソースが循環している様で、たまたまその中でも貴重な[記憶を持って転生]する枠が一つ空いていた。
・その枠へと何らかのミス(転生管理課のミスらしい)があり、私と百川君が同時に割り当てられた。
・記憶持ちの転生者にはサービスとして特別なスキルを貰える。
・ミスのしわ寄せを受けた神(転生管理課の中間管理職らしい)と百川君(トラックに轢かれたらしい)と私の三者面談状態になった←イマココ
と、言う事だ。
待てや。
「で、私と百川君はどうすればいいんですかね?転生先とかスキルがどうとかの件についてとか色々聞きたいんですけどその前に、まず一つ質問です」
「はい宵紬君どうぞ」
神はノリが軽い。
「一つだけの枠に対して今ここにこうして2人が居るわけです。この場合転生はどちらか1人だけになるんですか?」
「フッ……(キラッ)」
百川君、何故君はドヤ顔をキープ出来るのか。
「あー、ね、それについては大丈夫!ちゃんと二人とも記憶を持って転生出来るから。うん」
なるへそ。
「それじゃあ第2の質問です。スキルは一人分だけと仰っていましたがこの場合どうなりますか?」
「あー、それなんだけどねぇ…………あの…………」
どうした神、挙動不審にも程があるぞ。
「それについては俺から話すぜ!」
隣の百川君がこっちを向いた。いやーな予感。
「悪ぃ!俺が先に貰っちまった!!早い者勝ちって事でよろしく!!すまん!!!」
なんとぉーっ!!!
「ウッソだろお前……いや、おい、神。神!おい、こっちをご覧になって?私の顔を見て?ねえ、おい」
「いや、本当にゴメン!最初彼が来た時はまだ上から連絡が無くて!!てっきりこの子にスキルを配分すれば良いとばかり!!この通り……!」
焼き土下座ならぬ神土下座。流石に神を土下座させるのは忍びないので土下座は直ぐに辞めてもらったが。
「それで残念だけど……上から支給されたスキルは全部渡しちゃってね。お詫びにと言っては何だけど…………」
と、申し訳無さそうに机の引き出しを開けて中を漁る神。
話を聞いていない百川君。あんたは何故少しも悪びれないのだ。ドヤ顔をいつまで続ける気だ。
「……あったあった!コレは転生管理課とかの支給じゃなくて自分で作ってみたスキルなんだけど、もし良ければコレをお詫びに差し上げた---
「有難く頂きます。ありがとうございます!」
即答した。と言うかこの(ますます佐藤二百郎にしか見えなくなってきた)神、スキルを自作出来るのか。
と言うか上から支給されたり自作出来るってどういう概念なんだよ。そのスキルシステムって。
「ちなみに、彼……百川君はスキルをあるだけ持って行っちゃってね。宵紬君にはこの[プラスチックを操る能力]だけしか渡せなかったんだ。本当にゴメンね?」
待てや(さっきぶり2回目)
待てや(3回目)
プラスチックって。
ほら横の百川君めっちゃドヤ顔してんじゃん。
百川君、後ろに[俺の方が強い]って大文字出てるって!
ほら、神!お前!って神……そんな申し訳無さそうな顔しなくていいじゃん…………
うっすら涙目じゃん…………
こっちもなんか申し訳なくなるじゃん…………
何故百川君はドヤ顔を辞めないのか。貴様もしやそれが素顔なのか??表情筋がデフォルトでその位置なのか??
「………それじゃあ、このガラス玉を胸に当ててね」
「あ、はい」
神はテニスボール大のガラス玉を私に手渡した。
それと同時にビー玉大のガラス玉もこっそり手渡した。
「あの、これは……」
神よ、ウィンクをしても声に出さねば解らないぞ。
まあいいや。良い人(神)そうだし。ええいままよ!
「へぇ~、意外と実感湧かない物なんですね。スキルを手に入れる瞬間って……」
別にゾクゾクするわけでもなく、[---ドクンッ!!]みたいにカッコよく覚醒する訳でも無かった。
わかりやすく例えるなら[ラムネ菓子を食べた後の清涼感]が1番近い感覚だ。
「---さて!そろそろ次の仕事が押してるからお待ちかねの転生タイムだよ!!」
ビックリしたぁ。いきなり叫ぶのは良くないって。
百川君!!まさかドヤ顔で立って寝てるとは思わなかったぞ!!!!
「あ、ああ!とうとう異世界ライフが始まるんだな!!」
「ところで転生先の世界って……」
神は椅子から立ち上がると、両手を広げて高らかに宣言した。
「これから君達が転生するのは[剣と魔法と蒸気機関の世界!!幻想世紀ウィアデニア!!!]さあ、行っておいで!!」
---で、よ。
まさか床に穴が空いてボッシュート形式で転生するとは思わないよねぇ。
落下するのは既にトラウマなんだよなぁ!?
死因がそれだからねぇ!!




