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第5話「私、異世界の人間に宣戦布告します。そして強敵に出会います。」A

 

 早朝のことである。火花達は昨晩の飲み食いで完全に深い眠りについていた。その様子を見て商人ゴブリンのルプーアは静かにテーブルへその世界では大金である金貨10枚を置いて宿屋を出ていった。


「へっへ。残り少ないこの世界の時間だ。良い旅を祈ってるぜ」


 その刹那、宿屋から少し離れた商店外に爆発が起きた。


「ひゃい!?な、なに!?」


 爆音で目が覚めた火花は急いで着替えると外へと飛び出した。眠気眼をこすり、金貨の袋を咄嗟に持ってミシロもついてくる。外に出て火花は戦慄した。数時間前まで火花達が楽しく過ごしていた街は火の海になっていたのだ。


「な、なにがあったの?」


「火花様!海を見てください!」


「なにあれ!?戦艦!?」


 海には戦艦が何隻も配備され、街へと砲撃しているのだ。周りが逃げ回る中、火花の姿を見て駆け寄ってきた者がいる。レジィナだ。


「ああ!火花ちゃん、無事だったのね!逃げましょう!人間が攻めてきたのよ!」


「人間はもっと向こうの大陸にいるんじゃないの?」


「軍隊は少しは残っていたのだけれど、それがなんで攻撃なんてしてくるのかわからないのよ。今は逃げましょう!」


「ミシロちゃん、レジィナさんを安全な場所へ。私は、あの艦隊を沈めてくる」


 火花の雰囲気ががらりと変わり、目つきが鋭く憎悪の炎に燃える。


「し、沈めるって貴女!」


「私、この世界の人間を滅ぼしに来たんです。」


 ごうと火花の足元から炎が燃え上がり、赤い鎧が体に装着される。スヴァローグとの最後の修行で得た力である。


「貴女……ただの魔族じゃないわね?」


「早く行って!この力を全力で使って巻き込まない自信はない!」


「火花様ご武運を!」


 二人は遠くへ駆けだし、火花は安心した。そして大きく深呼吸すると海へ向かって歩き出した。丁度小型の船が何艘も向かってきており、人間の兵士の姿も見える。火花が堂々と海へ向かって進んで行く姿を見て逃げ回る者達は一斉に足を止めた。その異様な雰囲気に目を背けられなくなったのだ。


 まるで一切恐れのないその姿と周りを纏う炎に戦艦から見ていた人間達も思わず息をのんだ。一歩一歩進むたびに足元から炎が噴き出す。一方的な戦場と化した街は突然の静寂に包まれた。


「よくも、よくもこの街を壊したな。」


 火花が言葉を離した途端、その場にいた人間達は全員理解した。すぐにこの女を殺さなければ、と。殺さなければ間違いなく自分達が殺される、と。戦艦の砲撃や小型艇から射撃が飛んでくるが、全て火花の数メートル前で炎によって蒸発していく。


 高台へ逃げていたレジィナや無事だったルプーアも、その力に戦慄していた。


「ま、魔族ってあんなに強大な力あったかしら?」


「さ、さすが俺っちの命の恩魔族だぜ……」


 火花は鞘の剣を天高く構えると、巨大な火柱が天を焦がすかのような勢いで立ち上がった。それを見た人間は我先にと戦艦が逃げようとしたり、兵士が甲板から海へと飛び込んでいく。


「全て灰になって死ね!異世界の人間!てやぁぁぁああああ!」


 叫びと共に巨大な炎の剣が海へ振り下ろされ、大爆発が起きた。凄まじい水蒸気が上がり、熱された風が離れていたはずの高台まで届いていく。


「はぁ!はぁ!はぁ!あああああああ!!!グァァァァァァァ!」


 まるで獣のような咆哮が辺りに響き、生き残りの者達は歓喜の声すら上げられない。火花は突然助走をつけたかと思うと驚異的な跳躍で何百メートルも離れている生き残りの旗艦であろう戦艦の一隻に着地した。


 戦艦に悲鳴が上がり、銃撃を受けるが炎によって銃弾は再び燃やされる。逃げ遅れた一人の兵士の首を掴み、壁に叩きつけて首を絞める。


「ヴェルカンディアスの戦艦ですか?」


「ひぃ!?そ、そうです!」


「この艦隊の指揮官は?」


 その質問に一人の男が答えた。


「わ、私だ!貴様魔族か!?」


「黙れ。なぜ平和なこの港街を砲撃した。」


「ヴェルカンディアスの本部から通達があったんだ!この街には反乱の気配があると!だ、だから!しかしお前!こんなことをしてどうなるかわかっているのか!」


「どうなるって、海見ればわかりますよ。あれが人間の末路です。ヴェルカンディアスの一番偉い人に伝えておいてください。5か月後を楽しみに、って。この、東雲火花が人間を一人残らず殲滅させます、って。人間への反乱は私だ、ってね。」


「お前、ただの魔族ではないな?一体なんなのだ!」


「私は、裏切り者の女子高生だよ」


「ジョシコウセイ、シノノメヒバナ。覚えたぞ。後悔するがいい!」


「そのまま返すよ」


 戦艦を一つだけ逃がし、私は街へ戻ると歓声に包まれた。皆が私の元へ走ってくるのが見え、そこで意識が飛んだ。

 次の日、私はヴェルカンディアスへ向かって旅を始めるが、強大な敵に出会うことになる。


次回は明日投稿予定。

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