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第4話「私、炎を学びます。そして次の大陸へ」A

 

 ー起きろ、人間。起きろー


「日曜は寝かせて」


 ー起きろ人間!ー


「ひゃい!?」


 目が覚めると私は真っ白な空間に一人佇んでいた。目の前には微かな炎が揺らめいている。


「スヴァローグ?」


 ーそうだ。それよりもなんだ先ほどの府抜けた戦いはっ!-


「ひゃい!?すみません!?」


 ー私はもうすぐお前に吸収され消えるが、このままでは人間殲滅の前にお主が死ぬ!その前に私の力の使い方を教えてやる。-


「修行回ですか?てかここはどこ?」


 ーここはお前の心の中だ。さぁ、私が最後の稽古をつけてやる!-


 微かな炎は一気に燃え上がり、赤い鎧の女性が現れた。凛々しいその眼は赤く燃えており、巨大な赤い剣を私に向け、周りは炎で囲まれる。


「あっつ!手加減してよ!どうせ私の力になるんだから!」


 ーその鞘の剣を構えろ!力が強くても使えなければ意味がない!-


「一理ある!よし、かかってこい!」


 スヴァローグと私の鞘の剣がぶつかり合った瞬間、激しい炎と黒い何かが弾けあった。鍔迫り合いの中でスヴァローグが微笑む。


 ー良い闇だ。人間でここまでの憎しみの炎を持っている者は初めてだ。-


「そんなに何かを憎んでたかは分からないけど、私は私の世界を守りたいだけ!てやぁ!」


 私はスヴァローグを蹴り飛ばし、一気に突きを入れる。が、軽く振り払われ、逆に首を掴まれて投げられてしまう。


「ひゃああ!?こ、このぉ!」


 空中で態勢を立て直すと、私はダメージを受けることなく着地できた。今まで武道や運動部に参加したこともない普通の女子高生のはずが、身体が自然に動いていく。


 ー良い動きだ!だがまだまだ!-


「てやああ!」


 スヴァローグと戦い始めてどれくらい経ったのかはもう分からない。けれど、彼女?と刃を交わしていく度に私の心は燃え上がっていく。


 ずっとこうして彼女と戦っていたい。


 そんな気持ちが私の心に現れ始めた頃だった。私の目から涙が溢れ始めた。なぜかは分かる。この楽しい戦いと彼女が終わってしまうことが悲しかった。そして彼女の炎が溢れる度に私の心に語り掛けてくる。


 この炎で世界を燃やし尽くせ、と。


 この戦いを終わらせたくない、けれど私の身体は突き進んでいく。そしてスヴァローグの剣が砕けた。


 ーあとは、頼んだぞ?火花殿。私の心はいつでもお主の中にいる-


「さようなら、スヴァローグ」


 鞘の剣でスヴァローグを貫き、私は炎と光に包まれた。


 目が覚めると、私は見知らぬベッドに横たわっていた。そばにはミシロちゃんが眠り、寝息をたてている。ふと左手の薬指を見ると炎のように燃える赤い宝石のついた指輪がつけられていた。


「もう、この指は結婚に使う大事な指なのに。でも、ありがとう。」


 私は感覚でスヴァローグの力が完全に身体に在ることを理解した。指輪を握りしめ、改めて人間の殲滅を誓った。


「あれ、そういえば私何かに胸を……」


 私は思い出した。そういえば何かに胸を貫かれたはず。しかし今は簡素なローブを着ており、装備は外されてテーブルに置かれていた。鏡で胸を見ると傷もなく、なんともないが制服は乾いた血が付いている。


「うわグロ。」


「お目覚めですかご主人様!ご無事でなにより!」


「うわうるさ。ミャノン、ここは?それにあれからどうなったの?」


「覚えていらっしゃらないので?ご主人様は胸を貫かれてから、まるで獣のように傭兵達を殺しまわったのです。そのあとは目指していた街の者達を皆殺しにされたのです。」


「ぜんっぜん覚えてない。じゃあこの街は?」


「ご主人様に殺されなかった商人ゴブリンに救われて、海を渡り、隣大陸のゴールドシュガーへ来たのです。ここは海辺の街、シーゲート。人間はおらず、異種族の集まりのようです」


「隣大陸……。私どれくらい眠ってたの?」


「本日で一週間でございます。お洋服は勝手に洗濯してよい物かわからず、そのままでご」


「いっ一週間!?ミャノン洗濯よろしく!」


 私は急いで装備と制服を脱ぎ捨て、部屋にあるシャワー室へ飛び込んだ。


「ざいます。忙しきお人で…」


「あれ?あっ!ご主人様目が覚めた?」


 ミシロが目を覚まし、嬉しそうにミャノンへ語り掛けた。


「はい。今は身を清めていらっしゃるところです。ミシロ様は今のうちにご主人様の衣服を洗濯なさい」


「はぁい」


シャワーを浴びていて、ふとスヴァローグが最後に私の名前を呼んでくれたことが少し嬉しかったことを思い出した。シャワーを浴びたあとはひとまず街へ出てみようと思う。


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