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第22話「私達、アウラの元へと向かいます!そして思わぬ共同戦線です。」

前回のあらすじ。


ティガが北へと向かう頃、東の砂漠へ向かっていたミシロ達。しかしロードとミャノンは……。

 

「ロードさん!ミャノンさん!もうすぐ砂漠なんですから気合いれてください!」


 東の砂漠「サラス」その入り口にある小さな異種族の町、ジプティーで物資調達を終えたミシロ達はアウラのいる砂漠へ足を踏み入れようとしていた。砂漠は昼夜の気温差が激しいため装備を整える必要があったのだ。しかし火花を失ったショックからミャノンもロードも落ち込み、気力を失っていた。もはやただの歩くお荷物だった。


「ミシロ……あんたはなんでそんなに元気なのよ。」


「そうですミシロ様。俺は……火花様を守れなかった。」


「二人共……目を瞑って歯を軽く食いしばってください。」


 二人は無気力のまま言われた通りに目を瞑る。そしてミシロはペルーンの雷弓を装着すると二人へ向かって雷の矢を引き絞った。そしてその矢を二人の足元へと放った。


「そいっ」


「「あぎゃあああああああ!?」


 二人はペルーンの雷の矢を受け感電し軽く焦げる。そこへミシロは近くの井戸から水を汲んでき、痺れて動けなくなっている二人に向かって無造作にぶっかけた。その目は怒りに満ちていた。


「いい加減にしてください!火花様は生き返ります!」


 痺れる口でなんとかロードが疑問を投げかける。


「ど、どうし…て」


「証拠に私が今ペルーン様の弓を使えたことです!私はまだ未熟でペルーン様の力を半分火花様に預かって頂いているのです。もし火花様がもう生き返らないのならば、力は私に移って今の威力じゃ済まないんです!」


「あの……もし全力の威力だったら……」


「先程は手加減しましたが、上半身と下半身がお別れしてコゲ肉になるかと。ですから、諦めることはないんです!火花様が諦めると言うまで私は諦めません!まずは進むんです!進まなければ何も起きないんです!進まなければ……みんな死ぬんです。今必死に他の大陸で頑張っている復讐の狼さん達も、死んじゃうんです。」


「そう…よね。まずは進まなきゃ……」


「ああ……進もう」


「はぁ~……そのままじゃ歩く荷物じゃないですか。邪魔にならないようについてきてください」


 焦げた二人に回復魔法をかけるミシロ。そんな健気な様子を見てロードもミャノンも少しは希望を感じたが、ミシロの言葉使いの粗さが火花に似てきていると感じた。


 砂漠に入ると灼熱の太陽が射す。はずだったのだが、空にいる天使が半分ほど遮っておりそこまで熱くなかった。天使はやはり落下してきている。


「確か邪神像神殿にアウラは住んでいると聞いたことがあります。そこまで遠くはないですが、急ぎましょう。竜の命もあと少しだとウィンディーネ様がおっしゃっていましたし。」


「ティガのやつ……大丈夫かしら」


「信じましょう。フェンリルさんもついていることですし。」


 しばらく歩いていると、前方に何かが見えた。砂漠の真ん中に立つそれは土色一色の砂漠に似つかわしくない桃色。それを視認した瞬間ミシロはなぜか全身の毛が逆立つような鳥肌が立つ。ロードもミャノンも呆けていた意識が強制的に戻された。全員が有無を言わさず戦闘態勢に入ったのだ。一目で自分達の知る火花ではないと理解していた。


「貴女誰ですか!?なんなんですかその邪気は!?」


 ミシロは今まで感じたことも無い程の恐ろしい邪気をその火花そっくりな少女から感じ取った。ニコニコと笑顔を見せている彼女は武器は背負っているが、隙だらけの状態である。その様子を見て猶更ミシロは警戒した。もはやペルーンの弓を構えいつでも討てるようにしているのだ。それを見てロードも鎧とアクアスラッシュを、ミャノンは輝く剣を構えた。


「もう、そんなにぴりぴりしないで?こんにちは!私は東雲火花!ヨロシクッ!」


「あんたが火花様なわけないでしょう!その邪気、魔族でも滅んだ悪魔族にも見たことないわ!誰なの!」


「火花様を語る不届き者め。俺は許さないですよ」


「今日は挨拶に来ただけだよ。なんだかおかしな世界だねぇここ。黒い私はいるし人間殺しまくってる魔王みたいな私はいるし、神様は何考えてるのかな。」


 神様と聞きミャノンが反応した。


「神様?メタトロン様のことですか?」


「メタトロン?誰それ。とりあえず挨拶は終わったから帰るね!あと一つ忠告!この先にある邪神像神殿、気をつけたほうがいいよ。この世界のアホが巣を作ってる場所だから。」


 そう言うと彼女は砂嵐に包まれ消えていった。気配が消えた途端、ミシロ達は全身から汗が噴き出した。今戦わなかったことに心底安心したのだ。


「今のは……蜃気楼とかじゃないですよね……」


「間違いないわ。ミャノン、メタトロンとかいう神に聞いてみなさいよ」


「あー、その、人の姿になったのはいいのですが戻り方も分からず連絡の取り方も分からないのです。」


「つっかえな。とりあえず進みましょう。」


 周囲を警戒しながら進むこと数時間、砂漠と崖の境目まで来たところで真ん中に巨大な女性の像が現れた。しかし誰もいないと思っていた神殿に真っ黒なフードを着た者達が見張りを行っている。ミシロ達は岩陰に隠れて確認するとそれらを見たことがあった。


「これが邪神像神殿…。それにあれはヤギョウですね…」


「あぁ、ここがヤギョウ総本山さ。」


「そうだったんですか……って、え?」


 ミシロ達が振り向くとそこには悍ましい目でこちらを睨むアリア・デルセンとその他達が一緒に隠れていたのだ。


「きゃっ、もがが」


 悲鳴を上げようとした三人の口をそっと塞ぐとアリアは口元に指を当てて静かにしろとジェスチャーした。


「今回はお前らと戦うつもりはない。ん?死人の目はどうしたぁ。それに貴様は誰だ。」


「別の竜を受け継ぎに出ています。いずれ戻ってきますよ。彼は…新しい仲間です」


 火花が死んだことを隠すため平然と嘘をついたミシロは堂々としており表情ひとつ崩さない。


「ふん、まぁいい。いようがいまいが言うことは一つだ。手を貸せ。ヤギョウ達は風の竜アウラを使って王都を襲撃しようとしている。」


「えっ、てことはアウラは?」


「すでに奴らの手に落ちている。魔法で無理矢理生き永らえさせ、拘束している。あの邪神像の中でな。」


「それでヤギョウを殺したら、次は私達ってわけ?」


「その前にあの天使だ。あの空の天使をどうにかしたい。私はな、別にブルーサファイアなんてものには興味はない。むしろ全て滅んでしまえばいいとさえ思っている」


「どういうことですか?」


「知る必要はない。協力するのか、しないのかどちらなんだ」


 ミシロは考えた。今アリアには敵意はない。アウラ奪還にはボロボロのメンタルな二人は役に立たない。答えは一つだった。


「わかりました。でも条件があります」


 ミシロの出した条件にアリアは驚愕した。



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