表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/72

第3話「私、燃やし尽くす炎を受け継ぎます。」A

 

 街へ到着すると、先ほどまで賑わいを見せていたであろう街中は燃えており、黒焦げの人間であったものがあちらこちらに散乱している。


「うっ。酷い匂い。」


「私が逃げて来た時にはこんな状況ではなかったです。」


「ご主人様、この先に見える宮殿の方角から微弱な魔力を感じます。」


 私とミシロちゃんは口元を抑えながら魔力を感じるという場所へ進んでいく。進むたびに焦げた炭の死体は増えていく。


「キモチワルイ。ん?なにこの像?」


 宮殿の前にある広場には絵に描いたような巨大な赤色の竜の像が倒れていた。


「火花様!これは像ではなく6大竜の一匹、スヴァローグです!本当に存在していたなんてっ!?」


「スヴァローグ?」


「はい、このスヴァローグと呼ばれる竜は500年前に人類と争った6匹のうちの一匹です。しかしスヴァローグは紅蓮の女神様に敗れ、その世界を焼き尽くさんばかりの炎の力を女神様に与えて消え去ったと。」


「そんな竜がなんでここに?でも死んでるみたい」


 ー貴様は人間かー


「誰!?」


 咄嗟にミシロちゃんを抱きかかえて後ろに下がる。


 ー忌々しい人間め。街に生き残りはいないと思ったが。もう一つの街まで命が持たなかったかー


 それは竜が私達に話しかけてきていた。


「私はこの街の人間じゃないよ。むしろこの世界の人間じゃない。この街を燃やし尽くしたのはあなた?」


 ー異なる世界から来た者か。久しく見ていなかったが、まだいたとはな。この街は私が燃やした。ー


「6大竜とまで言われるあなたがなぜなのです!」


 ーこの恨みを知らしめるためだ。この国の人間は、眠る私の力を奪おうとしたのだ。遥か昔助けたことも忘れてな。ー


「あなたの力を奪おうとした理由は?」


 ーこの炎の力で異なる世界を襲おうとしていたのであろう。お前は何者なのだ。異なる世界からきたとはいえ人間なのになぜこのスヴァローグを恐れないー


「私はこの世界の人間全てを滅ぼしにきた東雲火花って言います。恐れないのは、この世界の人間を滅ぼすための憎しみが恐怖に勝っているからです」


 ーこの世界の人間を…はっはっは!死ぬ前に面白い冗談を聞いたわ。貴様のようなか弱き女子おなごに何ができようかー


「スヴァローグさん、貴方の力を私にいただけませんか?」


「火花様!?なんと恐ろしい事を!」


 ミシロは信じられないことを聞いたと驚いている。伝説の竜の最後に、この少女は死ぬならその力をよこせと言うのだ。ミャノンもさすがに言葉が出なかった。


 ーふははは!面白い!死ぬならば我の力をよこせとな!確かにそうだ。この恨みの炎、貴様になら託せそうだ。ー


 スヴァローグの右目が落ちると、それは突然燃えて空中をふわりと漂う。その炎は黒く赤く燃え、禍々しい。


 ーさぁ、それを剣に取り込めー


 私は言われるままその炎を剣に押し当てると、そっと剣と私の体の中に入ってくる。


「熱い……。あなたの恨み、憎しみ、憎悪、受け取った。必ずこの力を使って人間を滅ぼしてみせる」


 ー頼んだぞ。同じ裏切者よ。その内に秘めたる闇に飲まれるでないぞー


 そう言うとスヴァローグから生気が失われていき、赤い身体は錆びついたように崩れ落ちていった。私は剣を持つと、鞘に先ほどの赤黒い炎が纏った。


「これがスヴァローグの炎。なんて禍々しいんだろう。おりゃ!」


 私は宮殿に向かって試しに振り下ろしてみると、爆発かのような火柱があがり一瞬で宮殿は燃え尽きた。


「あ、あはは!いい力!」


「火花様!その力があれば人間の軍勢など埃同然でしょう!」


「さてミシロちゃん。試しにさ、あの街の人間消し去りにいこう」


 宮殿から見える草原の先にはまた大きな街が見えており、そこを指さした。おそらくスヴァローグが向かおうとしていたもう一つの街。


「火花様の思うままに。」


「じゃあすごい力ももらったことだし、始めようか。人間殲滅。」


 私はこのスヴァローグの炎の恐ろしい威力を、次の街へ行く途中で味わうことになった。そして、私の心が闇に染まっていくことになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ