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第16話「私、ヴェルカンディアス到着。空の天使に異変が起きます。」A

前回のあらすじ。

聖血を使用し天使と化したバルトを全員で撃破した火花とロードは海に落ちた。



「へっくしょい!!あ~、不死なら風邪なんてひかないはずなのに。てか人生で初めてこんな酷い風邪ひいたかも。くそ~、あの黒い私絶対許さないわ。」


海に落下した火花は風邪をひいていたようだった。船長室を見つけ、高熱を出した火花はその部屋を使って休んでいる。一緒に海に落ちたミシロはもちろん加護があるため問題無しで、「ひとつ恩返しができる」とうきうきと厨房で火花のための料理に勤しんでいた。ロードやティガは負傷者の治療や船内の見回りに向かっている。時間をもらった火花はぼーっと天井を見ているとミャノンが話しかけてきた。


「ご主人様、メタトロン様から通話が来ております。出ますか?」


「既読つけないで無視しといて……」


「ファイ!」


「うわうるさ……。ねぇミャノン、少し眠るから、なにかあったらおこ…し…」


「おやすみなさいませ。」


ミャノンは主人がこんな時に助けることもできないことを指輪ながらに悔やんでいた。辛い現実や様々な恐怖、そして増えた仲間達からの期待感に押しつぶされそうになっていないか、とても心配だった。


「私は…貴女の力になれているでしょうか……」


火花が眠りについてすぐに、部屋の空気が一変し、時が止まった。火花の眠るベッドの横に人に具現化したスヴァローグとペルーンが現れた。燃えるような赤い髪と鎧の女性と金色の髪と鎧の女性、二人は火花をのぞき込み優しく撫でた。


ー愛しい私の主よ。随分と無茶をしているようだな。ー


ーまさかここまでやるとは思わなかった。それに、心が闇に飲み込まれていっているなー


ーたとえ闇に染まろうとも、主よ。どのような道を選んでも私は心の中でずっと支えるぞー


ー我がもう一人の主よ。この身体の熱は我がもらい受けておくぞー


「ん、ありがと。スヴァローグさん、ペルーンさん」


ーなんだ気づいていたのか。気恥ずかしいから消えるとしようー


ーあぁ全くだ。我が主よ。次の大陸には同胞達がいるはずだ。しかし我と会った時と同じく命長くはないだろう。急げ。-


「わかった。ずっと心の中にいてね?見守ってくれてありがと。大好きだよ?」


二人は今まで見たことのない優しい笑顔に少し驚くと、頬を赤く染め心の中へと消えていった。部屋の雰囲気が戻ると同時に部屋へノック音が響く。


「あの、火花様?ミシロです。風邪に効くお薬とお食事をご用意しましたが…入っても大丈夫ですか?」


「ふふ、ペルーンさん会っていけばいいのに。はぁい!いいよ!」


ドアが開くと心配そうな顔をしたミシロが顔をのぞかせた。手には出来立てであろう湯気の立つ食事や薬が持たれていた。


「あれ?なんだか顔色が良くなりましたね?よかったです。お食事、ここに置いておきますから食べてください。マーメイドさん達が火花様のためにと新鮮な魚を取ってきてくれたので、ぜひ。調理は私や他のエルフさん達と。お薬もピクシィさん達が調合したので効果抜群ですよ」


「なんだか贅沢しちゃってごめんね。」


「いいんですよ。火花様は私達の英雄でご主人様ですから。あ、そうでした!あと数時間でヴェルカンディアス大陸に到着します。港町のローガという場所です。おそらく人がたくさんいるかと」


「ありがと。じゃあ……そこも滅ぼさないとね?」


「は、はい」


ミシロは最近気になっていることがあった。火花の目が時折黒く闇を帯びることがある。それが気がかりの一つであった。そしてもう一つは尋ねるかどうか迷っているものであり、心の中に押し込めた。


数時間後、数百メートル先にローガが見えてきた。モビィディックは戦闘態勢で海上を進んでいくが、町からは敵意もなく予想していた待ち伏せもなかった。


「あれぇ?なんで襲ってこないのかな」


「もしや火花様に恐れて逃げたんじゃないの?」


「けっ、人間が火花のあねさんを放っておくわけねえさ。罠に決まってら」


「んーー…とりあえず停泊しよっか。」


港に横付けし、降りてみると町は人間一人いない異種族の賑わう場所だった。いたるところに商業ゴブリンやリザード、エルフなどがいる。戦艦の護衛のため火花、ミシロ、、ロード、ティガだけが町へと降りた。


「ミシロちゃん。ここももしかして人間がいなくなった町?」


「おそらく。シーゲートのように人間に見放され、諦めて最後はここで生きようとしている者達の集まりかと」


「ねぇそこのリザードさん。人間いないの?」


「ん?魔族、珍しい。ここ、人間、もういない。みんな王都。」


「やっぱりか。」


「みんな、最後ここで死ぬ。みんな一緒。あの天使、落ちてくる。」


「ん?あぁ審判の天使ね、あれって人間が私の…じゃなくてブルーサファイアへ移動しようとしてるんでしょ?」


「違う。それ、失敗した。ここ、落ちてくる。」


「えっ、それどういうこと!?」


すると近くを歩いていた商業ゴブリンの一人が話を聞いていたようで会話に入ってきた。


「もしかしてあんたがヒバナさん?ルプーアから話は聞いてるよ。一週間前にな、王都選りすぐりの魔法使い達があの天使へ拘束魔法を放ったんだ。それが弾かれ失敗。それから破壊しようと魔法を打ち込みまくるがあの大きさだ。どうにもならんかったようだ。あの天使様っつーのはどうやってもこの大地に落ちてくる気らしいんだわ」


「かなりやばいじゃん。どれくらいで落ちてくる?」


「確か一か月くらいって聞いたがね。人間達も急いで転移装置を作ってるってさ。」


火花達は血の気が引いた。たった一か月でこの世界は終わってしまうことが分かったのだ。人間を滅ぼすどころかこのままでは心中してしまう。


「ミャノン!メタトロンさんに通話!」


「ふぁっ、ファイ!メタトロン様!メタトロン様!」


ーはぁい。通話無視されたメタトロンよ?ー


「その話はあとで聞く!あの天使、一か月でここ落ちちゃうって!」


「へぇ、ミャノンから声が聞こえる。火花様、そちらの方は誰なの?」


「その話もあとで聞く!」


ーあら、ずいぶんと大変そうね。人間殲滅よりも先に竜探しがんばらなきゃー


「だから竜の居場所教えて!この大陸にあと4匹いるんだって!」


ーミャノンが知ってるはずだけど?ー


「おいミャノン、てめぇ」


「おおおおおおおお待ちください!私にそのような情報はっ……あっ、ありました。残り四竜ですね?水の竜ウィンディーネ。光の竜アマテラス。風の竜アウラ。闇の竜クラミツハ。」


「メタトロンさん、この馬鹿返品していいかな。もしくはオークションに出そう」


「いひぃいいいいお許しを!なぜ私も気づかなかったのかわからないのです!今の今までまるで隠されてたかのような!」


「はいはい。冗談はさておき。メタトロンさん、人間殲滅も進めながらまずは竜を探してくるよ。じゃないとこの世界ふっとんじゃうみたい」


ー気を付けて。-


こうしてまずは竜を探さなければならなくなった。

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