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第12話「私、最後の魔族の幼女王に出会います。そしてダークルージュが目覚めます。」A

前回のあらすじ。

久し振りにヴェルカンディアス王と水晶越しに話し自殺推奨。

インターネット回線の工事で遅くなりました。

 

 火花とミシロは死者の谷を迂回し、マリアブルの手前にある「許しのゆるしのみやこ」へと歩みを進めていた。そこは中世のヨーロッパのような雰囲気の街で異種族達が賑わいを見せていた。世界が終わりに向かおうとしているというのに、ここでは何が起きているのか聞くため露店のリザードに話しかけてみる。


「ねぇ、なにをこんなに盛り上がっているの?」


「ん?ま、魔族の生き残りかあんた!?悪い事は言わねえ、このフードを被りな。」


 リザードは地味な生地のフードを火花に手渡した。混乱したままフードを被るとリザードは辺りを気にしながら露店の裏に連れて火花に耳打ちした。


「あんたら、魔族の女王を助けに来たんならやめときな。あの子は自ら死を選んだんだからな。」


「ごめん、話が見えない。分かりやすく説明して。私はこの世界に来て日が浅いんだ」


「旅の魔族か。異種族の軍勢を率いていた魔族の王ガルゴ・レイ・ヴァルキュラルが勇者に敗れてから20年、そしてこの世界も終わっちまうかもしれねえってことで、その娘のロード・レイ・ヴァルキュラルが責任とって死刑になるのさ。かわいそうに、まだ200歳もいってねえってのに。それに、最後の魔族って言われてるから、これで魔族は絶滅になるかもな。ドワーフやハルピュイアと一緒さ。」


「最後の魔族……。それとこの盛り上がりは何の関係が?」


「あぁ、今は刑の執行前の前座として人間の断頭ショーをやってるのさ。断頭後は調理すれば食えるから祭りみてえになってやがる。」


 その言葉を聞いた途端、火花の身体からどす黒い闇がゆっくりと溢れてくる。怒りに満ちたそのオーラで足元の石道路にヒビを入れていく。


「ひぃぃ!?なんだ!?」


「火花様落ち着いてください!」


「ご主人様っ!クールブラッド!」


 ミシロの声とミャノンの魔法で気持ちは冷静に落ち着いたが、火花の怒りは収まらなかった。その賑わいは商業や祭りなどの盛り上がり方ではなく、火花の逆鱗に触れるものだ。


「殺せ!殺せ!殺せ!」


 街の真ん中には断頭台があり、そこでは人間の処刑が執り行われていた。その広場に着いた瞬間、数人の若い男女の首が斬り落とされ歓声が上がった。


「こんなこと…人間のやっていることと一緒じゃないの……」


 その火花の目には悲しみが満ちていた。人が殺されたからではない。唯一まともだと思っていた異種族達が、結局は恐怖心や虚栄心に駆られて人間と同じ道をたどっているということに。


「怒るのも無理はねぇが、ここの領主の命令だ。逆らえねえよ」


「火花様……。」


「ミシロちゃん。この街を出よう。もう二度とここへは来たくない。」


 私はふと街の奥に見える塔が目に入った。石作りの古風なその大きな塔の最上階。ペルーンの力を使い視力を高めると、その塔から悲しい目で街を眺める女の子が見えた。褐色というよりも黒に近い肌の少女には角が二本こめかみ辺りから生えており、目は緑色に輝いている。


「あれが幼女王ロード。見た目はミシロちゃんとあまり変わらないくらいだね。あんな子が処刑されるなんて……。やっぱり見過ごせないっ!」


「火花様!この大きな街であの魔族を助ければ人間だけでなく異種族にも狙われることになるかもしれませんよ!?」


「上等!あんな小さな子どもを殺すことが正しい事だっていうなら、私はこの街を滅ぼす!」


 そこへ街を巡回していたと思われるオーガの兵が火花の異様な力に気づいて話しかけてきた。


「そこのお前、ここで何をしている!この先の塔の横には我らが主、マルク様の宮殿がある。勝手に入ることは許さん」


「黙れ。チェルノボウグ騎士隊!フェンリル!来い!」


チェルノボウグ騎士隊の隊長が召喚と同時にオーガの兵を組み伏してしまう。それを見て次々と敵兵が集まってきてしまった。


「火花様!どうかお考え直しを!落ち着いて!」


完全に火花は冷静さを失っているように見える。ミシロが火花の袖を掴むが振りほどかれてしまう。ミシロはその瞬間に「この人は人間だけでなく、この世界を滅ぼしてしまうかもしれない」と思った。しかし。


「大丈夫だよ。全員!できるだけ異種族には手加減するように!でも、骨の1本くらいは許す!」


「火花様っ……よかった。」


火花とミシロを乗せたフェンリルは一気に塔へと向かって駆け出して行った。


その頃遠く見える塔では刑の執行のためにロードが檻から移送される所であった。塔の反対側では激走する火花達に気づかず刑を見ようとする群衆が溢れている。


檻の前でオーガの兵がロードを連れ出し、静かに話した。


「誰か、家族や仲間の生き残りはいないか?言い残すことがあれば聞くぞ……」


「民衆に…勝利を与えられずにすまなかったと……」


オーガの兵は辛そうに唇を噛んだ。


「すまない。君のような幼い子に全ての罪を擦り付けて……本当にっ」


涙を流す彼を見て、ロードは静かに微笑んだ。


「どうせ終わる世界よ。いずれみんな一緒に地獄に落ちるわ」


「あぁっ……。君を助けてあげたいっ!しかしっ」


「ダメよ。私を助けたら貴方が罰を受けることになる。さぁ、刑場へ連れてって」


次回、ダークルージュの真の姿が現れる。


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