第9話「私、激戦。新たな手下と共に」A
前回のあらすじ。
神を討つ狼「フェンリル」に不死の力を封じられた火花はビビったがスヴァローグに元気づけられ立ち上がる。おでんの美味しい季節です。
「うおりゃああああああ!!」
火花とフェンリルはぶつかり合い、炎をまき散らす。その衝撃で教会はところどころ崩れていく。火花はなにか吹っ切れたかのような笑顔でフェンリルと剣を結んでいく。
「火花様!かっこよすぎですが周りが崩れていきます!狼さんも抑えて!って聞こえないか……。ひゃあ!?不死者が入ってきてます!?ファイア!ファイア!」
必死に侵入してくるゾンビを食い止めるミシロをよそに、火花とフェンリルはまるでじゃれているかのように戦い続ける。しかしお互いの攻撃は紙一重で致命傷を交わしている殺し合いだった。フェンリルはいつの間にか鎖のような物を纏い攻撃を防いでいく。
「おらぁ!」
「グォゥア!」
お互いがぶつかり合い、凄まじい勢いで吹き飛んだ。瓦礫に埋まり、火花もフェンリルも一度止まる。
「ぶはぁ!やったなこのくそ犬が!」
「グフゥ!グォ、グァォゥア!!」
「火花様早く決着を!あまり持ちません!」
「あと5分ーー!!」
「朝じゃないんですから!外に何百匹と不死者が集まってます!」
「ハァ、ハァ、なんか楽しい!ねぇ!あなたもそう思わない?」
火花は教会の周りが不死者に囲まれているというのに全く動じていない。焦っているのは一人で籠城戦を行うミシロだけであった。フェンリルももはや火花しか見えていない。
「さぁ、そろそろ決着をつけよう!」
「グオアアアア!」
二人は同時に駆け出し、火花は鞘の剣を、フェンリルは鎖を。
地面に投げ捨て頭突きをかました。ゴウン!という鈍重な衝撃音が響き、最後に立っていたのは火花だけであった。
「うわっ、痛そう……。あっファイア!ファイア!」
「ハァ、ハァ。勝った!……てかいったぁぁぁい!マジいったぁぁぁい!バカじゃないのマジで!おでこから血でてっし!」
少し痛みに悶えた火花は鞘の剣を拾ってフェンリルに歩み寄り、頬を叩いて目を覚まさせる。
「フェンリル!気に入った!私の力になりなさい!人間を滅ぼす旅についてきなさい!」
フェンリルの目が驚愕のために見開いた。どうやら火花の言葉は理解しているらしい。
「もう崩れますー!」
ミシロの悲鳴で火花とフェンリルは我に返った。すでに教会は火花とフェンリルのせいで崩れ、不死者が溢れてきたのだ。
「わーお、ミシロちゃんこっちにおいで!フェンリル、どうする?まずはこれ、なんとかしなくちゃいけないんじゃない?」
起き上がったフェンリルはそのまま火花に頭を垂れた。
「契約成立。のーせて!」
火花とミシロはフェンリルの背中に飛び乗ると、鞘の剣を構えた。
「まずはこの教会を囲むゾンビを倒そう!走れ!」
一気にフェンリルは走り出し、不死者達を次々と弾き飛ばしていく。フェンリルの力なのか不死者の魔法は効かず身体が砕けていく。
「おりゃおりゃおりゃおりゃああ!すごい!前よりも強い炎になってる!」
火花の炎も黒が混じり、より強力になっていた。不死の者達を瞬時に灰にしていくのだ。そして10分も経たないうちに教会周りにいた不死者は殲滅した。
「わーおマジこれ!?すごいじゃん!」
「すごいです火花様!できればもっと早くこうして欲しかったです!もう疲れてへとへとです」
「ふー…。フェンリル、疲れた。ちょっと休もう、よっと。」
フェンリルから降りた途端、先ほどの部屋に倒れていた天使が起き上がっていた。
「うわ!?なに!?」
いつの間にかフェンリルはその天使に頭を下げてお座りしている。そしてその天使はこう言ったのだ。
【フェンリル、あなた魔族を裏切る気?】
続きは明日公開予定。