第8話「私、初めての試練。そして心を垣間見えます。」A
前回のあらすじ。人類の頂点に宣戦布告。
火花とミシロはブーモウからしばらく歩き、次の町を滅ぼしたところであった。大陸の中央付近にあるという「死んだ王国、ネルフィス」を目指して進軍していた。
「しっあわっせはー、あ~るいてこぉない~だぁからあるいていっくんだねぇい」
「いい天気ですね火花様!先ほどの町も滅ぼして、さらに天気も良くていい気分です!」
大陸は晴天で涼やかな風が吹いていた。とても気分がよく歌を口ずさんでしまう。しかしその進軍の姿は異様で、前の町の人間を騎士隊達が引きずって行進しているのだ。途中ですれ違った商業ゴブリンの集まりもその光景に息をのんだ。
「あ、あれが死人の目ヒバナって魔王か。前にいた魔王よりやべーやつじゃねえか。」
「シッ。聞こえたら俺らゴブリンもあの引きずられてる人間の仲間入りにされちまうぞ。触らぬ魔王に祟りなし。行こうぜ」
「ねぇそこのゴブリンさん達!」
「ひぃいぃぃぃ!?」
「そんな怖がらなくても。私はここの世界の人間しか滅ぼさないよ。この先にネルフィスって王国があるって聞いたけどもうすぐ?」
商業ゴブリンの二人は顔を見合わせて安堵した。
「あ、あぁここから1時間てとこでさ。でも行っても無駄ですぜ?」
「なんで?」
「魔王様が連れてるような亡霊しかもういねえって噂さ。疫病のせいで王国丸々滅んじまったらしい。」
「へぇ~。疫病か。ありがとゴブリンさん!あ、引きずってきた人間だけど食べる?町を出てすぐに会ったリザードさん達が、やわらかい肉がいいっていうから子供全部あげちゃったから大人しかないけど」
「いいいいいいいらねえよ!俺達は雑食だが人間なんてくせえもの食わねえよ!」
「あっそう。いい情報ありがとね~!」
「ありがとうございました!」
そう言って魔王とエルフと悍ましい亡霊の軍団は手を振って先へと進んでいった。
「俺、亡霊に手を振られたの初めてだ」
「ばかやろう。俺だって。くわばらくわばら、先を急ごう。」
火花達が歩いて一時間ほどすると、外壁に守られた大きな街が現れた。しかし黒い霧のような物に飲まれており、中は見えない。立ち寄る気はなかったが、姿が見えたため気になり、様子見で近づいたのだ。
「うわー。あれが死んだ王国、ネルフィスか。」
「あの黒い霧……どこかで見たことがあるような。う~ん。」
「あ、そうだミャノン、そろそろメタトロンに通話つながらない?」
「先日からずっとかけなおしているのですが、繋がらないのです。もしかしたら休暇を取ってベガスへ行っているかもしれません」
「神が休暇とるなし。うーん、この鞘の剣どうすればいいのよぉ。この王国で戦うことになったらどうするんd」
言い終わる前に火花の直上に巨大な砲弾が吹きとんできた。
「だっと!」
瞬時にスヴァローグの炎で砲弾を焼き尽くし、鞘を構えた。
「フラグ回収はやすぎ。」
「火花様!あれを!」
外壁の上には兵士が何十人もおり、こちらに弓を向けている。
「疫病で滅んだとかいってなかったっけ」
「そ、そのはずです」
「ねぇちょっと!いきなり砲弾はひどいよ!そりゃ!」
鞘を振るい、城壁ごと燃やし尽くすと兵士達は悲鳴も上げずに倒れていく。
「なんかおかしいね。中にはいるよ!私は死なないけどミシロちゃんは疫病対策は?」
「ライトニングエルフは病気にかからない種族ですのでご安心を」
「よし。全軍、死んだ王国、ネルフィスへ突撃!」
そして王国内へ入ると、私は驚愕した。
「なんなの、これ」
王国の中は体中が腐れた人間達が歩き回っていた。まるで映画に出てくるような「ゾンビ」そのものだった。
「わーおマジ!?」
ゾンビの一人が火花に近づき、ミシロに燃やされる。
「お、思い出しました!これは「腐敗の呪い」です!疫病なんかではありません!すぐにこの王国を出ましょう!」
「腐敗の呪い?」
「これは、救いのない呪いです。人間の作り出した魔法の一つです!なんでこんなことに」
騎士隊も応戦するが、頭を吹き飛ばしても心臓を突き刺しても人々は掴み掛ってくる。大した脅威ではないが、気味が悪いことこの上ない。
「一旦撤退!」
騎士隊を短剣に戻し、近くに見えた教会へと走った。鉄製の扉を炎で溶かし、入れなくする。
「ふー、私も死なないけど、死なないやつ相手にするなんで初めてだよ」
教会を探索していると、驚くべきものを見つけた。