第6話「私、亡霊達と戦います。そして、異世界の闇を知ります。」A
「ここが穢れた森……」
アリアとの戦いの後、到着したのは森というにはあまりにも毒々しく、生物の気配を感じない森だった。日が当たりにくい場所のためか草木は腐れ果てており、腐臭が漂っている。
「うぅ、やはり迂回しましょう火花様!ここは生きる者の来る場所ではありません!」
「でもなんだか、呼んでる気がするんだ」
森へ入ってからというもの、ずっと私を呼んでいるような気配がする。見知らぬ土地のはずが、歩みは勝手に進んでいく。
「ひぃぃん、死の匂いしかしないですぅ」
しばらく歩いていると、腐った泥沼から異様な怪物が何十体も這い出てくる。まるで人間が腐れ堕ちたかのようなその姿は映画などに出てくるゾンビそのもの。火花は恐れることなく鞘の剣を構え、スヴァローグの炎を纏った。
「ご主人様、あれはこの地へきて死んだ人間の成れの果てでございます。楽にさせてあげましょう」
ミャノンが静かに話すことも珍しいと思ったが、さすがの彼?もこの怪物達を哀れに思ったのだろう。いつものふざけた口調は無かった。
「なんでこんなところに人間が……。灰になりなさい」
横なぎに一振りすると、一気に辺りは燃えて人間の成れの果て達も灰となった。燃える彼らの顔は、なぜか穏やかだ。
「苦しみから解放したのです。きっと感謝しているでしょう。」
「感謝される筋合いはないけどね。なにか見えてきた。」
森の奥まで進んだ頃、目の前にあまり大きくはない廃城が現れた。かなり風化しており、何の気配も感じない。
「これが話に聞くチェルノボウグ城……。伝説とばかり思っていました。」
「ここはなんなの?」
「ここはチェルノボウグ騎士隊が王により与えられた唯一の領地、最後の城だったそうです。しかしここは彼らが死んだ場所でもあるといいます」
「唯一の領地……か。こんな森にしか居場所がなかったんだね。」
城の広場を少し見渡しながら歩いていると、城内への入り口を見つけた。ここから呼んでいるようだった。
「この先か……」
「ええ!?入るんですか!?」
「入るよ。怖ければこのくら~くてくさ~い場所で待ってたら?」
「い、行きます!私は火花様の部下ですから!」
廃城の中へ入ると、そこには数多くの鎧兵士の亡骸が散らばっていた。何百年と経ちどれもすでに骨となっており、冷たい風だけが吹いていた。倒れている鎧の足元に生花が添えられていることに気づき、近づく。するとなんとその一体の鎧が立ち上がり、火花へ話しかけてきたのだ。
ー殺してくれ-
「な、なに?ミシロちゃんは下がって?」
ミシロは影へと隠れる。
ーこの恨みの炎……消してくれ……ー
骸骨の何も無い目から涙がすっと流れた。倒れていた幾百の鎧達も立ち上がり火花へと歩いてくる。驚くことにまったく殺意を感じなかったのだ。
ー燃やしてくれー
ー楽にしてくれー
「わかったよ。燃やしてあげる。」
私はスヴァローグの炎と鎧を装備し、鞘の剣に全力で炎を込める。彼らは自身の心臓の位置にペイントされている太陽を手で触れて頭を下げた。
「てやぁぁぁああああ!」
全力で振り下ろすと、まばゆい光に包まれた。
次回明日更新予定。