表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三十と一夜の短篇/卅と一夜の短篇

しかじかいうしか(三十と一夜の短篇第18回)

作者: 暁 乱々

僕は大きなつののしか。普通は山に住んでいる。

だけど僕らは特別で、公園の中に住んでいる。

追い出されないのは、神の使いだかららしい。


朝になると表に出て、芝を食べる。

おなかがふくれたら、膝をたたむ。

ふとおんなを見かけ、立ちあがる。


おんなに逃げられた。僕は木陰こかげに入りこむ。

群れを連れるしかが、とてもうらやましい。

速く流れる雲の下で、また短い芝を食べる。


座って休んでいると、小さな二本足がきた。

さっと立ち上がって、ゆっくりとお出迎え。

三回おじぎするのが、公園じかのマナーだ。


二本足は何か出した。あれはしかせんべいだ。

すぐさま首を伸ばし、しかせんべいをねだる。

けれども逃げられた。どうも角が怖いらしい。


二本足はいじわるだ。せんべいで僕らを釣りあげる。

おまけにおんな好き。みな揃っておんなのもとへ行く。

逃げたあのおんなは、小さな二本足と一緒にたわむれる。


横から視線を感じた。二本足が僕にカメラを向けている。

僕は顔を見せつける。そしたら二本足がにっこりと笑う。

きっと写真を持って、どこかへ見せびらかすに違いない。


僕らは遊ばれている。だけど僕らはつきあってやる。

二本足が気に入れば、観光客がもっと増えるらしい。

とても騒がしいけど、せんべいの枚数も増えていく。


これが僕らの商いだ。僕らはこの公園のマスコット。

食べ物をもらいつつ、すこし遊びにつきあってやる。

そしたら巡り巡って、僕らの暮らしはずっとつづく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 文字で遊ぶ、『視覚のリズムで完成された作品』であるということ。 [一言] 視覚的に安堵感があるだけではなく、内容もかわいらしくて好きです。 鹿って、こう描かれると、なかなかかわいいものな…
[一言] 鹿、いいっすね( ´_ゝ`)bぐっ。こう、諦めつつも足掻いてる感じが哀愁を感じさせます。見に行ってみたいなー、奈良公園の鹿。こないだのパンダといい、きっと暁さんは今アニマル強化週間なのですね…
[良い点] 整っている文章がきれいで、文章の開き方が好みです。 素朴な風景を切り取った作風はマネできません。 [一言] 鹿せんべいを食べるのはお約束で、食べてみましたが、味がなくて、おからのまずいや…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ