疑問の答えを追い求めて
規格外に強いアンデッドモンスターを何とか倒して上層へと続く長い階段を上った俺達四人は、最終的に遺跡の反対側だと思われる方の地上へと辿り着いた。
外は既に闇が包み込む夜を迎えていて、あちらこちらで星々が大小様々な大きさと明るさで瞬いている。
こちらも来た側と同じく遺跡の中に地下ダンジョンへと続く階段が存在していたわけだが、闇夜に美しく輝く月明かりを頼りに遺跡全体を見渡すと、こちら側は向こう側とは違って遺跡はそれほど壊れている様子は無い。その事に若干の違和感を覚えつつも、俺はどうやってあっち側に居るみんなと連絡を取ろうかと考えていたわけだが、その問題は俺達がこちら側へと来てから約一時間ほどで解決をした。
しかしその後、俺はどうやってみんながこちら側へとやって来たのかの説明を聞く間も無く、合流したティアさんにみんなが居る場所から引き離されていきなり正座をさせられた。
「あの、ティアさん。これはいったいどういう事で?」
「…………ダーリン。さっきあの疫病神女から聞いたんだけど、ダンジョン内であの女に劇的なプロポーズをしたって本当なの?」
「はあっ!? プロポーズ!? 俺がラビィにですか?」
「ええ。あの疫病神女が嬉々として私に言って来たわ。『もしもお前に何かあったら、俺が一生面倒を見てやる! って言われたのよ』って。本当にダーリンはそんな事をあの疫病神女に言ったのかしら?」
「いやあの、確かにそれらしき事は言いましたけど、でもあれは――」
「やっぱり言ったのねっ!? 私という存在がありながら、何であんな性悪女になびいちゃったのっ!? ねえっ! どうしてなのよっ!?」
「い、いや、だからそれはアイツを乗せる為に仕方なくと言うか――」
「仕方なく!? と言う事は、あの疫病神女に無理やり言わされたのよね? そうなのよねっ!?」
「いやあの、確かに仕方なくではありましたけど、でもですね――」
「分かった! もう何も言わなくても大丈夫よダーリン! 私が今すぐにあの悪魔を滅して来るからっ!!」
「ちょ、ちょっと待った――――っ!!」
かなり興奮している様子のティアさんに俺の言葉は届いていないらしく、凄まじい殺気を醸し出しなからラビィの居る方へと向かい始めた。
それを見た俺は、慌ててティアさんを後ろから羽交い締めにして動きを押さえようとした。しかしティアさんは凄まじい力でその押さえ込みに抵抗し、俺を引き摺りながら前へと進んで行く。
「離してっ! ダーリンを救う為にあの悪魔を殺らなきゃいけないんだからっ!!」
「お、落ち着いて下さいティアさん!! お願いしますからっ! ティアさん!? ティアさ――――――――ん!!」
この後、俺の叫びを聞いた唯達が駆けつけてくれたおかげで何とかティアさんの進行を止める事ができ、ティアさんの考えが誤解だという事を唯やラビエールさんが一緒になって説明してくれたおかげで何とか事無きを得た。こうしてティアさんの誤解を解いた後、俺達は簡易的に作った焚き火を囲んでから反対側に居たはずのティアさん達がどうやってここまで来たのかを訪ねた。
待機組みを代表して話をしてくれたティアさんによると、なんでもティアさんは俺達が通って来たダンジョン内の道を一人と二匹でそのまま通ってこちら側へと来たらしく、その後でトランスポートの魔法を使ってみんなをこちら側へと導いたとの事だった。
待機していたはずのティアさんがなぜダンジョン内へと入ったのかだが、俺達がダンジョンへと入ってからしばらく経った頃に、金色ピヨのささみと銀色ピヨのせせりが突然騒ぎ出してダンジョン内へと駆け入って行った事がそもそもの切っ掛けだったらしい。
大慌てでダンジョン内へと入って行ったピヨ二匹を見たティアさんは単独で二匹を追いかけ、その先で大きく穴が開いた地面の前で騒ぐささみとせせりを発見し、それを見て俺達四人が遥か下の階層へと落ちた事を悟ったのだと言っていた。
そして下の階層へと落ちた俺達を救い出す為に一度みんなのもとへと戻り、色々と準備を整えてから一緒について来たささみとせせりを連れて俺達の後を追って来たらしい。
ちなみにアンデッドの魔法攻撃によって塞がれた隠し通路は、ささみとせせりが岩を蹴り壊して通れる様にしてくれたとティアさんが言っていた。
あの小さな身体で塞がれた通路の岩を蹴り壊すとは何とも信じ難いが、普段ラビィが『アイツ等の蹴りは当たりが厳しい』とか言ってたくらいだから、ささみとせせりの蹴りには凄まじい攻撃力があるんだろう。
こうして向こう側に居たみんながこちら側へと来れた理由を聞いた後、俺達は次にする行動の話を始め、その話が終わってからすぐに次の行動を開始した。
「それじゃあティアさん、そっちの事は頼みました」
「ダーリンと一緒じゃないのは不満だけど、仕方ないわよね。うん。こっちの事は任せておいて」
「リュシカも出来る限りでいいので協力をお願いします」
「分かりました。今回の件については私にも思うところがありますので」
「それじゃあラッティ、ミント、アマギリ、ささみにせせり、無茶しない様にな」
「うん! にいやん達も頑張って!」
「私達の事なら大丈夫ですからぁ、心配しないで下さいましぃ」
「き、気を付けてね?」
「「ぴぃぴぃ!!」
それぞれが思い思いの言葉を述べた後、俺達は二手に別れてロマリア領内を進み始めた。
ラッティ、リュシカ、ミント、ティアさんにアマギリ、そしてささみとせせりを加えたパーティーには、ロマリア内の様々な情報を集めてもらう為の情報収集役を頼んだ。これは単純にミアさんを助けて顔バレしている可能性がある俺達よりは、彼女達の方がまだ安全に情報収集をできると思ったからだ。
そしてラビィに唯にラビエールさん、それにロマリア王女であるミアさんに俺を含めた五人は、別の目的で行動を開始した。
俺達が二手に別れて行動をする期限は、今から二週間。
二週間後の夕刻までには何があっても今居たこの遺跡前へと集まり、お互いに情報を交換し合う事を約束した。
× × × ×
ティアさん達と二手に別れてから二日後のお昼前。
俺達五人はロマリア領の西にある古ぼけた遺跡の前へと来ていた。
「ここで間違い無いですか? ミアさん」
「はい。あの当時に父が調査していた場所の一つがここのはずです」
「分かりました。それじゃあ、さっそく中の調査をしてみましょう」
俺達は急いで遺跡内へ入る準備を整え、そのまま遺跡の内部へと入った。遺跡にある明り取りの空間からは眩しい光が射し込み、遺跡の内部を照らしている。
訪れた遺跡の外観は大きな神殿の様な風貌をしていて、内部もその外観に相応しく厳かな雰囲気と造りをしている。そしてそんな遺跡内を俺達五人でくまなく調査してみたが、内部は既に様々に調査された形跡があり、俺達が期待する様な新しい発見は無かった。
「結局何も見つかりませんでしたね……」
「ですね……でもまだ最初ですし、ギリギリまで色々と調べてみましょうよ。ミアさん」
「そうですね。まだ最初ですから頑張らないといけませんよね……」
そう返事はするものの、ミアさんは暗い表情を浮かべたままで遺跡の外へと出て行く。そんなミアさんの様子を気にかけながら、俺達は次の目的地へと向かい始めた。
俺達がわざわざ別行動をしてまで何をしているのかと言うと、かつてロマリア領内で起こっていた行方不明事件でロマリア王が調査をしていた場所を調べて回っている。
いったいその事に何の意味があるのかと思われるかもしれないけど、俺には一つどうしても引っかかっている事があった。それは豹変したとも言うべきロマリア王の事だ。
もちろん生きている内に人は歪む事がある。だが、それには必ず何かしらの理由や切っ掛けがあるはず。
ロマリア王が世界を支配しようと目論んだ切っ掛けが、ラッセルがロマリアへ訪れた事で生じた野望だとするのはまず間違い無いだろう。だが、ミアさんの話を聞く限りでは、とてもロマリア王がそんな事を考えそうな人物には思えない。
もちろんミアさんはロマリア王の娘なのだから、身内贔屓で父の事を良く言っている可能性はもちろんある。だが、父のやる事に反発してアストリア帝国へ助力を願おうと自国を飛び出して来たくらいだから、そのあたりについてはミアさんは冷静な見方をしていると思える。
それにロマリア王が豹変したのはラッセルが訪れてからしばらく後の話だと言うし、例の行方不明事件が起き始めたのもラッセルが来てからしばらくしての事だと聞いた。
これは本当に俺の勘でしかないが、ラッセルが訪れた事やその後に謎の行方不明事件が起こった事、ロマリア王が豹変した事には何かしらの繋がりがあるのではないかと思っている。
そんな思いを抱きながら俺も遺跡を後にし、ミアさんの案内で次の探索場所へと向かった。




