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DEVATECK.  作者: 脳内企画
Chapter2 調査団
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Chapter2-35


 「まったく。やかましいったらありゃしないよ」

 「ちょっとたいちょ、なにやってんです? もう報告済ませちゃいましたよ」


 いつの間にかどこかへと消えていたポーラがポスター達のいる一角に戻って来た。

またその傍にはイーヴァと同じ格好をした男が立っている。男の声に気付いたイーヴァが後ろを振り返った。


 「これ報告書の控えっす」

 「あら、コル。ありがとね」

 「さっきたいちょが人を殴るとこ見てましたよ。あのね、たいちょの拳は本当に人を殺しかねないんすから――って、あらら? ポスターさんじゃないっすか」


 コルと呼ばれた男が報告書の控えの束をイーヴァに手渡す。すると彼はちょうどその時、イーヴァのすぐそばにいるポスターの存在に気付いたようだった。


「しばらく」とポスターはコルの視線に応えるように言った。


「あー…なる、ほど」


 コルはポスターとイーヴァを交互に見やると合点がいった様子で頷いた。

 彼は今自分がここへ来るまでの間に何が起きたのかを悟ったようであった。


 「あーどっこいしょ。まったく、ごたごたするのはおよしよ」


 ポーラは備え付けの椅子に腰かけながら言った。

 それから彼女はしわだらけの手で懐から数枚の紙を取り出すと、それをカウンターの上に放り投げた。


 「ああ、これが欲しかったんだ」


 ポスターは紙を手に取ると満足そうに頷いた。

 近くにいたセラフィーナとウィリスの二人がそれを覗き込もうと顔を近づける。


 「なあに? これ」


 セラフィーナが尋ねると、「身分証パスだよ」とポーラは言った。


 「アサカは前線中の前線でね。そこにいる人間は個人っていう単位じゃあなく、開拓団という“合わさった個”として最適な行動をしなくちゃならない。でなきゃ到底人の根付く土地になんてならないからね。身分を保証された人間以外は追っ払うっていうのがあたしたちの方針さ」

 「合わさった、個…」


 セラフィーナが反芻すると、ポーラは嫌なことを思い出したように鼻を鳴らした。


 「グールをぶっ殺して生き続けること、目の前を整地して生き続けること。本当なら開拓地の人間が考えることはその二つでいいんだがね、現場の混乱に便乗するコソ泥がいるのさ。こっちは一刻も早く開拓を進めなきゃならないってのに迷惑なもんだよ、まったく。それでシンプルに事を進めるために、ギルド指定の開拓任務を受けた人間か輸送任務を受けた人間以外はアサカ周辺に立ち入ることは許さないことにしたわけさ」


 ただ、例外はあるがね――ポーラはそう言ってポスターが持っている紙を指さした。


 「あたしの名であんた達の立場を保証してやる。失くすんじゃないよ」

 「了解。助かるよ」


 ポスターはそう言って書状を折りたたみ、荷の中にしまいこんだ。


 「え、アサカに行くんですか? センパイ」


 横で話を聞いていたイーヴァが尋ねる。


 「書状を別で用意するってことは…いつもの輸送案件ではないですよね。まさか開拓ですか?」

 「いや、ちょっと依頼でヨシミまで行きたくてね」

 「ヨシミ?」

 「アサカよりも先にある未踏地さ」

 「え、ええ!? どんな任務ですが、それ」

 

 イーヴァは驚いて声を上げると、それからポスターの周りにいる人物たちに顔を向けた。

 一人は大柄な男、もう一人は若い女性。若い、というのはポスター達に比べてであり、イーヴァ自身の年齢に対しては同じか、それよりも少し上かというくらいの年齢に見えた。きっと彼らはポスターと一緒にその任務に臨むのだろう。イーヴァはまたポスターに視線を戻した。


 「トレイズのウィリスと、科学省から来たセラフィーナさ」


 紹介というにはやや遅かったが、ポスターが二人の名前をイーヴァに伝える。


 「どうも。ウィリスと呼ばれている。ポスターとはチームを組ませてもらっているよ」

 「遺失理論研究部のセラフィ―ナ・ハッカーです。ポスターさんとウィリスさんのお二人には私が依頼を出させてもらいました」


 紹介された二人はイーヴァとそれぞれ挨拶を交わした。


 「…コル。私、少し休みを取るから」

 「はあ。――は?」


 イーヴァはコルに一言そう言い放った。

次回更新日が固まり次第追記します。

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