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DEVATECK.  作者: 脳内企画
Chapter2 調査団
31/79

Chapter2-9


 輸送任務を請け負う二人はタチカワを出て、様々な場所へ足を運んだ。


 タチカワほど大きくは無いがギルドのある街や、その周辺に点在するさらに小さな集落、さらには開拓用拠点まで。訪れた先で歓迎を受けることもあれば、到着した開拓地が既にグールの襲撃によって壊滅してしまっていることもあった。荒らされた資材と人間の死骸だけが転がる景色を前にして、ポスターは転がる遺体を始末し、遺品を整理してザックに入れていく。

 ウィリスはこの時、ポスターのザックには必ず遺品を入れるだけのスペースが空けられているということに気付いた。壊滅した開拓地との遭遇を何度か繰り返して、彼はこの世界の過酷さを知っていった。

 

 生きた町を訪れれば多くの住人につめかけられることになった。小さな集落のごくささやかな歓迎ではあるが、そこにはグールに襲われる危険を賭して足を運んでくれる者に対しての確かな敬意が向けられていた。

 

 近隣の街や開拓地跡から運んできた荷や手紙、そして遺品を受け取る者。迎える者達の反応は様々であった。


 ポスターとウィリスはそんな旅を朝も夜も無く続けた。

 タチカワを出て既に三日が経ち、二人は小さな町の役場の中で休息をとっていた。


 「馴染んだか?」


 役場の壁にもたれるウィリスにポスターが尋ねる。ウィリスは何かを考えるように腕を組んだ。


 「お前のおかげでな。……ここはとんでもない世界だ」


 ウィリスがそう言うと、ポスターは「同感だね」と笑う。そんなポスターにウィリスは顔を向けた。


 「なあ、どうしてだ?」

 「何がだい?」

 「どうしてそんなに良くしてくれる? 仮住まいどころか任務の面倒まで」

 「別にたいしたことじゃあないよ」


 なんだそんなことか、とポスターは笑った。


 「たまたま僕が君を見つけて、ギルドに連れて行って、家の余っているスペースを貸しただけ……。何か特別に助けてやろうってわけじゃない。ただ僕にそれができたからやっただけさ。普通のことだよ」

 「普通の事……」


 ポスターの言葉をウィリスが反芻する。ウィリスはこれまでの旅の中で、ポスターという人間の行動基準についてある程度理解するようになっていた。ポスターがろくな休みも取らずに街と街の間を走り続けるのも、彼に言わせれば「やれるから」なのだろう。


 「そうか、お前はそういう性癖ってわけなんだな」

 「せ、性癖!? ……普通の事だと思うんだけどなあ……」


 腑に落ちたように言うウィリスにポスターは苦い顔をした。

 その様子を見てウィリスは笑った。


 「よう、ポスター。実はまだ気になっていることがあるんだ」

 「ああ、もうなんでも答えるよ。なんたって性癖まで披露してるんだからね」


 ポスターは茶化した様子で肩をすくめた。


 「この世界じゃあ、街の外は全て死ぬ恐れのある危険地帯になっているよな。ここに来るまでにグールに襲われることもあったし、拠点ごと壊滅している場所だってあった」


 ウィリスが確認するように言う。ポスターはそれに応えるように頷いた。


 「そんな状況でお前はどうして輸送任務ばかりを受けるんだ? 正直、危険に対して報酬の方は釣り合っていないように思う。……もちろん「やれるから」というのはわかるんだ。ただ、他の任務だって十分こなせるだろうし、輸送任務と同じように重要なものもあるよな。けど、輸送任務ばかりを請けている。何がきっかけでこの仕事を始めたんだ?」



いつも足を運んでくれる方、ありがとうございます。

次回更新日は改めて追記します。


6月10日追記:

Chapter2-10は6月11日(日)の午前0時頃更新予定です




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