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はじまり2

 「それで、どうする」

 公治が静かに答えを促す。

 「玲や美緒にも一応聞いたが、最後は(きょう)()、お前と≪(びゃっ)()≫様の考えに従うってことだったぜ」


 僕を見つめる公治の目には決意が感じられた。これまで多くの困難を乗り越えてきたからこそできる目でもあった。

 今過去して怒りをぶつけても仕方がない。気持ちを切り替えなければ。


 「分かった。考えはある程度まとまってるんだ。すぐに白狐と一緒に向かうから、集会所で待ってて。あと、外を出歩く際は、必ず霊獣に周囲を警戒させて、一人で行動はしないこと。そして、知らない者に出会ったら全力で逃げることを最優先にするよう、もう一度徹底しておいてくれ」


 子供とはいえ霊獣を持っている者三名が殺害された。このことから考えて、この忠告が功を奏することは少ないかもしれないが、今はこれしかない。今出来うることを徹底して行う。

 これが僕たちが今まで生きてこられた最大の理由なのだから。

 誰かに怒りをぶつけても仕方ない。今は前だけ、生きることだけを見ていかなければならないのだ。


 そのことを伝えると、公治は「了解っ」とわざと明るく言い残し、この書庫を後にした。



 焦る気持ちを抑え、改めて周囲を見渡す。小さい部屋ではあるものの、壁一面の本棚にところせましと本が並べられている。

 今僕たちが得られる知識のすべてが詰まったものである。


 しかし、どの書物を見ても、今の事態の最適な解決方法は記されていなかった。

 「平和はこのように尊いものですよ」と絵空事のように書いてある書物を見ても、「平和を取り戻すにはこの方法がいいですよ」とは書かれていない。

 やはり、解決策を見出すのは、自分の知識を総動員し、そして、みんなで力を出し合うしかないのだ。



 「白狐行くよ」

 そっと背後に話かけると、すっと宙から白く毛並みの鮮やかな狐が顕現する。すたっと地上に着地すると、一度大きく伸びをして僕の足元にすり寄ってくる。

そんな白狐を眺めていると、なぜか力が湧いてくるような気がした。自分はどんな時も一人ではないのだ。


短め

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