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尋問

 尋問を続けようとしたところに、一の門から公治と千夏が公治の霊獣≪(えん)(ろう)≫に乗って到着した。


 「すまん。五門全部に回ってたら少し遅れてしまった。状況は・・・終わったみたいだな」

 炎狼から先に公治が降り、公治の手につかまりながら千夏が飛び降りる。


 「ああ、今取り調べ中だ」

 公治と千夏にこれまで分かったことをざっと説明する。


 「なるほど。こいつらが狂信者のご尊顔ってわけか。まさに下衆という顔ぶれだな」

 吐き捨てるように公治が言う。千夏も黙ってはいるが、その目には怒りの炎がくすぶっていた。


 「で、尋問で本拠地までは調べたのか。じゃあ、続きは俺がやってもいいか」

 悪魔のような笑みを浮かべ公治が尋ねる。


 「まあいいけど、殺したりするなよ」炎虎を撫でながら僕は返す。


 すると、突然祭使が笑い始めた。

 「馬鹿者どもめ。これ以上、我々を傷つけるようなことがあると、神罰が下るぞ。ハハハッ。ようくきいいいいいいい」

 祭使の話が終わらない内に、公治が無表情でふくらはぎに刺さった矢を引き抜いた。

 祭使は顔を真っ青にして苦痛に顔をゆがめていた。血が溢れだし、辺りに小さな血だまりをつくる。


 「言ったそばからこれだよ・・・」

 僕は頭を抱え、千夏に頼む。千夏は嫌そうな顔をしながらも矢を抜いた部分に手を当てると、傷の部分に光があつまり、その胞子が弾けたかと思うとさっきまであった傷はふさがってしまっていた。


 「血を止めただけだから」

 千夏は嫌悪感をあらわにして、祭使を見る。


 「悪いな、こんなことに力使わせちゃって。矢が刺さってたから引き抜いた方がいいのかなって思ったんだよ」

 全く悪びれた様子もなく公治が言う。


 「さて、下衆野郎。尋問の続きだ。あと俺の許可なくしゃべったら、次は手で水がすくえなくなるぞ。分かるよな」

 公治の脅迫に対し、祭使が薄ら笑いを浮かべて答える。


 「ああ、どうなってもしらんがな」


 その返答を聞き、公治の怒りが限界に達しそうなことが分かったので、急いで莉々を呼び、再び鱗粉を浴びせかけた。

 どうやら祭使には幻惑の効果が効きにくいらしかった。

 全く効果がないわけではなさそうなのが幸いである。


 「まず、一番に聞きたいのは史華達の行方だ。どこに連れて行った」


 「彼女たちもみんな山中の洞窟にいます」


 「生きているんだろうなあ」

 公治が祭使の首をつかみながら問う。一瞬辺りに緊張感が漂う。


 「生きてはいる。しかし、あれは死んでいるようなものかもしれグハァッ」


 「どういう意味だ。もっと分かりやすく言え」

 さらに首を絞める力を入れる公治を見て、僕はすっと公治を押しとどめた。

 

「公治、まだその時じゃない。一回落ち着け」

 僕は公治を一旦祭使から離す。


 「生きているんでしょ。私が助けに行くわ」


 千夏が言う。いつの間にか彼女の隣には翼馬の霊獣が立っていた。


 「ああ、そうだな。頼む。ただ、一人拠点を守ってるやつがいるらしい。いくら相手の弱点が分かったからと言って、一人で行くのは危険だ。西南方向といえば近くに四の門がある。銀がいるはずだからあいつと連携し、必ず四人以上で探索に向かうこと。いいな」

 千夏は頷く。

 僕は証文を手渡し、耳元でそれの使い方を伝えた。千夏は再度頷きを返すと、翼馬に跨る。翼馬は羽ばたきを一回したかと思うと、あっという間に南西方向に飛び立っていった。


 「さて、だいたい聞きたいことは終わった。お前達の出自も大まかには分かってきたしな」


 公治が南西方向を指す。『祭使』『祭使官長』という言葉、呪術、そして、このような隠密行動。

 これらを用いるのは山都の国の西方の隣国――砂塵と経典の国リゥウィくらいだろう。


 「もうこれ以上は聞きたくないんだが、これはどうしても必要なことらしい。だから・・・いや、やっぱここからはお前に任せるわ、鏡矢。俺は聞いてる最中にこいつをやってしまいそうだ」


 そう言って公治は僕の肩を叩くと、少し離れた場所に座った。

 個人的にも聞きたい話ではないが、自分が決めたことであるので仕方がない。意を決する。


 「目的はなんだったんだ」

 祭使の委細を見逃さないようににらみつける。


 また幻惑が切れたのか、祭使は高らかな笑い声を上げた。

 「決まっておる。ここの国で子を産ませ、我が国に連れ帰り育てる。そうして豊かな国を作るためよ。この国はまだあの災厄から立ち直っていない。いや、国というものが無くなったに等しい。なにせ、統治者足りえるものがいないのだからな。故に、我らが管理し手助けしてやろうというのだよ」


 まるでそれが崇高な理念であるかのように、祭使は語った。

 予想通り胸のむかつきをおさえるのに苦労したが、ようやくこれでこの事件も終わるのだと思うと、気持ちを切り替えることも出来た。


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