作戦決行
「なんだよ、幻影操作って」
「きゃほ。簡単に言えば幻を作り出せるってこと。だから、あんまり本物のショウくんは見れないんだよ~。たいてい幻だからね」
「そんなヤツ、どうやって見つけりゃいいんだよ」
シュウヤは悔しそうにつぶやいた。まあまあ落ち着けよ。
「できるかもしれない」
今までずっと黙りこくっていたユイカが、声を弾ませて言う。
「ユイカ? どうやるんだよ」
「それはね……」
ユイカの作戦は僕らの能力をふんだんに使ったものだった。
まずは僕の力で時間を止める。
次に、クルミの力でショウくんに語り掛ける。
相手が攻撃してきた場合は、ヒロキ、シュウヤ、ミツナが応戦。
攻撃してこなければ話し合う。
うまくいくだろうか?
でも、これ以外に手はなさそうだし、この作戦を続行することにした。
「この作戦で重要なのは、相手が攻撃してきた場合の対処。三人とも、行ける?」
「任せて」
「いけるだろ」
「問題ないぜ」
ミツナ、ヒロキ、シュウヤの順に、ユイカにサインを出す。
「じゃあ、すでに時間は止まってるわけだし、行きますか」
「きゃほ。ミサちゃんやる気だね」
「相手が現れて変なことしたら、思考回路ショートさせてやるんだから」
ミサ、怖いよ……。でも彼女は頼りになるな。
「クルミ、頼んだよ」
「はーい。サウンドオフ」
僕らの声が消えた。今からはテレパシーでの会話になる。
『ショウくん、どこにいるの?』
クルミの声が、僕らの心の中に響く。
今なら心の中で思ったことが全部聞こえちゃうから、気を付けないとな。
『俺はここにいるよ。理科室に』
『今から行っていいですか?』
『いいよ』
即答だった。
彼の了承を得て、僕らは理科室へ向かう。
いきなり攻撃をしてこないみたいだ。よかった。
「アカハ、ショウくんってうちの生徒?」
「きゃほ。そうだよ、ミツナちゃん。でも今は休学中なの」
「ショウは、アカハのこと覚えてるのか?」
「きゃほ。そうなのよ、タクミっち。ショウくんの記憶は消せてないの。だって私も本物のショウくんに会ったことほとんどないもん」
「なんで俺だけ『くん』じゃねえの?」
アカハは最後の拓海の質問には答えなかった。
「ついたな」
アカハからいろいろと話を聞いているうちに、僕たちは理科室にたどり着いた。
「失礼します」
ユイカは迷いなく扉を開ける。
残った七人も順に中へ入っていき、最後になった僕は中に入って扉を閉めた。