一件落着?
「怪我ないか?」
「うん、大丈夫」
僕はユイカの手を取って、彼女を立ちあがらせた。
よほど怖がっていたんだろうな。まだ手が小刻みに震えている。
僕は彼女から離れて、男の手から刃物を奪った。
「無事でよかった」
「コノト……」
「時間進めるぞ。スティルオフ」
ユイカに笑いかけて、僕は針を動かした。
「なんだ!? あの女はどこ行ったんだ?」
「ここよ!」
ざまあみろ、とでもいうように、ユイカは叫んだ。
「ユイカ、下がってろ」
ユイカは教室のあたりまで下がって、クルミに抱き付いた。
それを確認した僕は、さらに男に近づいた。
「ユイカに手出したこと、後悔させてやるよ、おっさん」
「この野郎!」
挑発するように相手をあおると、男は胸元から何かを取り出した。
「拳銃……?」
「本物だ。動いてみやがれ。血を見ることになるぞ」
拳銃を隠し持っていたのか。詰めが甘かった。
「スティル」
「喋るんじゃねえ! 死にたいの」
「オン!」
男にかまわず、僕は叫ぶ。彼の言葉は途中で止まった。
銃口から放たれた弾丸を回収して、僕は拳銃を窓の外に投げ捨てる。
「コノト、そいつどうする気なの?」
「んー。とりあえず警察送りかな。クルミ、なんか紐みたいなものある?」
「縄跳びでいい?」
教室から出てきたクルミは、縄跳びを持ち出してきた。
それ、僕のじゃないか? まっ、いっか。
「ありがとう」
僕は自分の縄跳びを受け取って、男の手首と足首を縛った。
「スティルオフ」
「か!」
か、ってなんだよ。死にたいのかの『か』か。
「もう終わりだよ」
「コノトくん!」
「宮尾先生」
僕と仲のいい、英語の宮尾先生。
あとは、彼に任せることにした。
「寺田先生、松森先生。犯人の始末お願いします。怪我はないか? コノトくん」
「大丈夫です」
「あんまり無茶するんじゃないぞ」
宮尾先生が、僕の頭をなでる。ちょっと恥ずかしいな。
「わかりました」
「宮尾せんせーい」
「はーい」
先生はほかの生徒に呼ばれて、どこかへ行った。
一件落着かな?
みんなに、僕の能力はバレてないのだろうか?