能力者
授業はなんて暇なんだろう。
僕のノートは白紙のまま。
黒板掛けされても他人のノートを見ればいいし。
写す時間なんて止めればいくらでもあるし、別にいいけどさ。
でも、力のことはみんなにバレちゃだめ。
ユイカにも口うるさく言われてるから、守ってるけど。
「先生、ちょっとトイレ行っていいですか?」
「いいですよ」
物わかりのいい先生だ。
僕はうきうきと教室を抜け出す。
あくまでみんなにバレないようにポーカーフェイスで。
「スティルオン」
トイレの個室で僕はスティルクロックの針を止めた。
すると、青白い光がまた僕を包んだ。
チョークと先生の声が聞こえなくなって、なんかすがすがしい。
ほかのクラスに入ったり、ベランダで外を眺めたり。
そして、彼女に会いに行ったり。
「ミツナ」
光奈は隣のクラスの女子。
ちなみに彼女はスティルオンの状態でも動ける。
だってミツナも能力保持者。
彼女の能力は感覚操作だ。
彼女とケンカでもしてみろ。
平行感覚がなくなったり、幻覚とか異常な痛覚とか……。
考えただけで寒気がしてくる。
感覚操作は、五感を操ったりとかできるからね。
「コノト。いきなり時間止めないでよ。びっくりするじゃん。せめてクルミの音声操作で話しかけてよ」
僕の存在に気づいたミツナは、シャーペンを動かしている手を止めて、僕にほほえむ。
胡桃は音声操作の能力者。
いわゆるテレパシーが使えたり、音のボリュームを自在に操れる。
だから、彼女を通じて脳内会議とかができる。
「ごめん。それ思いつかなかった。つか、クルミ寝てたし」
「ふふ。あっ、ユイカ!」
ミツナは僕の背後に立っている人物に、嬉しそうに手を振った。
「コノト、やっぱりここだったの」
教室にユイカが入ってくる。
「コーノト!」
「また時間止めたのかよ」
俺の名前を呼んだのは、思考操作の実紗。
相手の思考を遮断したり、促進させたりできる。
呆れているのは、感情操作の拓海。
感情を混乱させられたら、正しいことが分からなくなる。
一緒に入ってきた、物体操作の宏生と、重力操作の秀矢。
ポルターガイスト現象だとか、物の移動ができる、物体操作。
重力反転、無重力空間。
こんなことができるのが、重力操作だ。
ここにクルミを入れた七人が、僕たちの知る限りの能力者だ。
ただ、あと一人能力者がいるらしいんだけど。