決着
僕は時間を止めた。
息をのんで見守る煙の中。
黒い人影が……
止まっていた。
「やった……。やった!」
田湊さんは銃を構えたまま動かない。
「コノトくん! ありがとう!」
アカハが抱き付いてきた。
少し苦しいけど、我慢することにする。
「アカハ、ショウくんのとこ行きなよ」
「あ……。うん」
脇腹を抱えて起き上がろうとするショウくんのほうを指さす。
アカハは弾むような足取りで彼の元へかけていった。
「……コノト」
左肩に柔らかい感触。
そして、左の頬にもっと柔らかい感触。
「ユイ、カ……?」
赤い花のようなユイカの唇が僕の頬に触れた。
「コノト……」
唇を離した彼女は、まっすぐに僕の瞳を見つめる。
「勝手にメロドラマ始めないでくれる?」
「ユイカってば、大胆だな~」
「茶化すなよ」
クルミとミサがうっとりしたような、あきれたような視線を送ってくる。
「コノトくん」
ショウくんの声が僕を呼んだ。
アカハに支えられながらだけど、彼は立ちあがり僕のほうへ向かってくる。
「田湊を、時間を止めてくれてありがとう。君が時間を止めてなかったら、俺は確実に死んでいた。田湊は、本気で俺を殺す気だった」
「僕は、アカハの頼みを聞いただけだよ。彼女から言われなきゃ、僕は何もできなかった」
ショウくんは「それもそうだな」とアカハの頭をなでる。
「アカハ、幸せそう」
「こっちもメロドラマ始まったよ」
も、とかいうなよ。別にメロドラマじゃないし。
「俺たちはしばらく姿を消すよ。安心して。君たちの記憶は消さないから」
ショウくんは一人一人と目を合わせた。
「あおっか。……後のことは任せたよ、アカハ、ショウくん」
「きゃほ。かしこまり。というわけで、ユイカちゃん。戻っていいよ、あなたたちのいるべき場所に」
「うん。……プレイスムーヴ」
「スティルオフ」
こうして僕らは元の生活に戻った。
あいかわらず能力を使って日々を謳歌している僕は、人じゃない。
今はなんだか心が軽い。
足かせが外れたような感覚。
なぜか僕は、自由になれたような気がした。




