最後の希望
「……田湊。ショウくんに……ショウくんに、なにをしたの?」
か細いアカハの声が、あたり一面に悲しく、そして虚しく響く。
世界は時間が止まったようにしんとして、誰一人として笑顔を見せない。
たった一人……。
田湊さんを除いては。
「力の差だよ、アカハ。……君だって、最初から分かっていたんだろう? ショウが僕に負けるってことくらい。彼奴が僕に勝てないってことくらい」
勝ち誇った田湊さんの笑顔。
彼は足元に横たわるショウくんを見下ろして、冷たい言葉を次々と吐き出す。
「おまえは、僕に勝てないんだよ、ショウ! 所詮、おまえはその程度だ! 死ね……。今ここでおまえは死ね!」
「田、湊……。この野郎……!」
殺気を放ち、ショウくんは苦しそうにもがく。
思わず目をそむけたくなるほどに血にまみれている彼には、もう能力を使うための力なんて、残っていないんだろう。
彼の瞳は、田湊さんを殺したい、殺してやる、と叫んでいるけれど……。
でもそれも長くは続かず、ショウくんはもう瞳の輝きを失い始めていた。
「ファントムオン」
僕らの知っているその言葉を言ったのはショウくん……、ではなく田湊さんだった。
「ショウくんになにする気!?」
「決まっているだろう? ショウを殺す。言うことを聞かない飼い犬には罰が必要だからね。というわけで、死んでもらうよ、ショウ」
頬に涙を伝わせているアカハを嘲笑うように、田湊さんは幻覚の、でも本物の銃を作り、その銃口をショウくんのほうへ向けた。
「止めて」
「嫌だね」
それを聞いたアカハは、視線を田湊さんから僕に移した。
「止めて!」
アカハの言葉が変わった。
止めて。
それはアカハから僕への頼み。
僕が田湊さんの時間を止めることができたなら、ショウくんは助かる。
でも止められなかったら?
ショウくんは……。
でももう、僕が時間を止められるということにかけるしかない!
「スティルオン!!」
ただ一点だけに集中させた。
田湊さんだけに集中させた。
辺りは静まり返って、何も動かない。
さっきまで僕らの耳に打ち付けていた風の音も。
悠々と青空を流れていた白い雲たちも。
時間は、止まった。
顔をゆっくりと上げたら、黒い影が見える。
その人影は動……。




