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稀少能力者のぼやき

とりあえず此処で一区切り 



 酷い目にあった。

 入学の時以来の精密能力測定(フル・スキルスケール)はとても面倒くさかった。能力値と所得スキルを隅から隅まで調べられたからね…僕は別に取得スキルとかはちゃんと申請してるし、隠しスキルなんて、ジャッジスキルくらいなんだけどな。それも面倒だから詳しく説明してないだけで能力測定スキルスケール系のスキルを持っている事自体は隠してないし。

 レイノルドが言うには、僕が漆黒の飛翔天(レウシェンツィリア)…レゥリアや精霊たちと話をしていたのが問題だったらしい。それで、何かその為の稀少能力ユニークスキルを持ってるんじゃないか確かめたんだとか。まあ、何も見つからなかったんだけどね。

 この世界に来てすぐから、僕は随分言葉で苦労したというか、色んな言葉を覚える事になったというか…。

 まず、最初に、この世界に来てすぐの僕を保護して言葉を教えてくれたのが水の精霊王で、彼(彼女?)の使っていた古代精霊語は精霊族でも古めかしい言葉だってんで風の上級精霊たちが現代精霊語を教えてくれて、ついでに彼らと仲が良いとかで紹介されたヴァンエルフの古老に神聖言語と古代エルフ語と東部エルフ語(イスタエルフィック)を教えてもらった。人里に出るようになってからはブラウンガーランもサウスマーメックも覚えたし、レイノルドと知り合ったきっかけが確か、ハイランディックを覚えている時だったかな。

 この世界言葉の種類多過ぎんだろ、と思ってたら、あるんだよね、共通言語。学院の人は大体共通言語(アランディック)なんだよね。僕はまだ行った事ないけど、この国の首都にあたるイルヴァースでは概ね共通言語だけで用が足りるらしいし。まあ、ある意味、そこで苦労したおかげで僕は言霊スキルを取得した上にレベルが上がりまくってるんだけど。

 言霊は別に稀少能力ユニークスキルではない。それどころか、特殊能力レアスキルですらない。誰でも取得しようと思えば取得できる、追加能力コモンスキルだ。効果は、言語によるコミュニケーションに限るけど、自分の伝えたい事が伝わりやすくなり、相手の伝えたい事が受け取りやすくなる事。取得方法は色んな相手と話をする事。此処で重要なのは、相手に自分の考えや気持ちを伝えたいという意欲がある事だと僕は推測している。

 まあ、そんな割と簡単に取得できる言霊は、実は持っている人の少ないマイナーなスキルでもある。何故なら、どうやらこの言霊、アランディックだけで話していると取得できないようなのである。"言語が通じない不自由さ"を経験していなければならないらしい。しかし、取得によるメリットは微妙だ。しいて言えば、祈りが通じやすかったり、操魔に補正があったり、くらい。雀の涙だけど。別に無くたって困らない、というのが一般的な評価の様である。少なくとも、積極的に取りに行く感じではない。僕もまぁ、気付いたら取得してた感じだしな。

 僕の取得スキルから推測される所によると、操魔と言霊がかなりの高ランクだから、ヒトの言葉を話さないものたちとも言葉を交わせるのだろう、という事だったけれど。

「それにしても、以前より更に修得言語が増えてるようだけど…一体何処で覚えているんだい?」

 レイノルドはそう言って目を瞬かせる。彼には別に特に隠す必要性が無いので、僕は素直に答える事にした。

「風の精霊は色んな土地を巡ってくるものだから、ある程度は言葉も覚えてるとかで、教えてくれるんです。後は図書館の本ですね」

 まあ、実際通じるかどうかは今のレベルじゃ微妙な所である。多分、片言レベル。実用に耐えるのは、やはり、その言語を使う人と直に話して覚えた言葉だ。

「羨ましい限りだよ。僕は精霊の言葉は聞けないからね」

「…とか言いつつ、レイノルドは僕より修得言語多いですよね」

「それは年の甲だね」

 レイノルドは言語修得マニアである。正規表現だけでなく、スラングや訛りまで網羅しているのだから、マニアとしか言いようがない。若干僕も人の事言えない感がなくはないが。

「マヒロも僕と同じぐらいの年になった時にはこれぐらい覚えてるよ、きっと」

「いや、僕多分そこまで長生きしませんよ」

 というか、邯鄲の夢、胡蝶の夢、なんて言ったりするが、数百年分レベルで夢を見続けているというのは勘弁してもらいたいものだ。"目が覚めたら"、その時はちゃんと"眠る前"の事も思いだせるだろうけど、もしかしたらこの夢も殆ど忘れてしまうかもしれないけれど、楽しかった事くらいは覚えていたい。あまり冗長だと、僕はきっと何も覚えていられないだろう。それは少しさびしい。

「暗殺でもされるのかい」

「なにそれこわい。…いや、僕レイノルド程長生きする種族に生まれた覚えがないので」

「ああ、種族による寿命の差か…まあ、そういうのはどうにもならないからねぇ」

 別に僕もどうにかしようという気がないしね。






・実はマヒロは相手によって言語を使い分けていたり、というか、単純に相手に合わせているのである


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