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黄昏の騎士の方略



 あの駄虎がクリスに抱きついているのを確認し、オレはクリスを駄虎から引き剥がし、手近な所に居た者を投げつける。

「…どさくさに紛れて抜け駆けか、ニコラシカ」

「ユーフォラス…!」

「ユーフォラス、突然何だ」

「恋敵が対象に接近していれば妨害するのは当然の事だと思うが?」

 そう返しつつ、クリスの状態を確かめる。多少心拍数は上がっているが特に何をされたという事もなさそうだ。まあ、この駄虎は肝心な所でへたれだからそんなものだろうが。

「いったぁ…うわ、何だこのもふもふ!?」

「ウズカミ?!」

「マ、マヒロ、大丈夫か!?」

 ずれた眼鏡を直そうともせず、ウズカミは駄虎に目を輝かせている。ウズカミは駄虎の本性を知らなかったくちか。まあ、奴は若干この姿にコンプレックスがあるようだからな。…その割に、自制心が緩むとすぐその姿になるが。

「でっかいにゃんこ…?」

「わ、私は猫ではなく、虎…天虎だ!」

「お前には迫力が足りないのだ、ニコラシカ。だから猫などと言われるのだ」

 ウズカミは驚いたように振り返り、そして眼鏡をかけ直してオレと駄虎を見比べる。

「…もしかして、サンスコット君、なのか?(…うっかり操魔を使わなくてよかった)」

「…ああ、それはニコラシカだ」

 クリスがウズカミに手を貸そうとするのを適当に阻止し、オレはウズカミに宣言する。

「クリスはオレのものだ。あまりなれなれしくしすぎるな」

「お、おう…?」

「ユーフォラス、お前どさくさに紛れて何を言っている!?」

「ユーフォラス、私は君のものになった覚えはない」

 抗議の言葉を紡ぐクリスの口を閉じさせ、オレは言い聞かせる。

「言った筈だ、クリス。立派なオトナの男にならないのならオレの妻になれ、と。…他の男の妻になる事だけは、絶対に許さない」

 駄虎は当然、ウズカミに恋して女になる事だって認めない。クリスを女にするのはオレだ。そうでなければ、クリスが男になるという事でなければならない。それ以外、許さない。

「…ああ、そういう三角関係」

「三角?何を自分は関係ないという顔をしている、ウズカミ」

「いや、だって…僕は別に君らをそういう目で見てないし。実際、関係ないじゃないか。友達だからって、それはまた別問題だろう」

 酷い朴念仁を見た。

 クリスどころか、駄虎も絶句しているじゃないか。…いや、ある意味これは好都合か。此処で芽を潰してしまえばいい。クリスがこいつに目移りなんてしないように。

「なら、クリスを誘惑しないと誓えるか、ウズカミ」

「別に誘惑する気はないけど、何でそんな事誓わなきゃいけないんだよ。君らがクリスに相手にされないのと僕は関係ないだろう」

「…貴様は言ってはならない事を言った」

「…あっ」

 …いや、まあ、オレたちが長年クリスに袖にされ続けているのは事実だが。だからこそ口に出してはいけない事というのもあってだな?

「ユーフォラス、マヒロに手出しする事は私が許さないぞ」

「それは、そいつがお前の友人だからか?」

「…ああ、そうだ。マヒロは私の友人だ」

 真剣な顔でオレを睨むクリスに、オレは溜息をついて肩を竦めてみせる。

「…まあ、今回はクリスに免じて見逃してやる」

「お、おう…」

「マヒロ、行こう」

「あ、ああ…」

 ウズカミを連れてクリスが出ていき、オレは駄虎と医務室に二人きりになる。駄虎はウズカミの発言に未だにショックを受けているようだ。軟弱な奴め。

「何時まで落ち込んでいる気だ、駄虎」

「…いや、ウズカミにライバルと認識されていないのは気付いていたんだが…クリスの事も何とも思っていないだと?あんな可愛い生き物が傍にいてか?奴の価値観はどうなってるんだ?!」

 駄目だこいつ。色々ダメだ。

「…それを言ったら、こんな麗しい幼馴染が二人もいて、欠片も相手にしないクリスも相当だと思うが。…あの一族は面食いなはずなんだが」

 兄上や父、叔父、それに女性陣からの評判を聞く限り、クリスの一族は大体面食いである。伴侶に選んだ相手が醜かった例がない。…まあ、己の身を美しく装えない様な低能は近づけないだけなのかもしれないが。

「…それは逆に、私たちが美しいので、美しいものは見慣れてしまって引っかからないという事なんじゃないか?…ウズカミは平凡だが、それが逆に新鮮だったのかもしれない」

「まあ、クリスの傍にはあまりいなかったタイプだろうな」

 だが、それだけと考えるのは恐らく早計だろう。






・マヒロは理事長の後見で学院に通う事になった

・ユーフォは妻or主君だから…

・ユーフォの初恋はきっとクリスの姉かおばあたり

・黎明期の王には無性別のまま長く過ごした王もいるとかなんとか

・こいつ駄虎って言いすぎじゃね

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