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稀少能力者Aのぼやき

 突然だが、某ゲームで出てくる努力値という概念を知っているだろうか。経験値とは別に、戦いを繰り返すごとに溜まっていき、能力値の上昇に影響するアレである。それが努力値と呼ばれる所以は、作中でそれが溜まった状態で話しかけるとものすごく頑張ったのね、というキャラがいるからだと思われるが…まあ、それはともかく。

 僕が何の脈絡もなくやってくる事になったこの世界には、その努力値らしきものが存在するようだ。

 何故わかるかと言えば、僕にはそれが見えるからである。より正確には、相手の努力値がそれぞれ二つに塗り分けられているように見えるというか…。まず、能力値が棒グラフ状に見え、それが赤と青の二色で塗り分けられているように見える。偶に、色がついていない部分もあるが…それは多分、加護などの外的要因で底上げされている分だと推測している。

 で、青が努力値、赤は…まあ、某ゲームにならって個体値とでも呼ぼうか。ちなみに、能力値全体の値はともかく、個体値と努力値がそれぞれ何ポイントなのかの数値まではわからない。まあ、別にわからなくても何ら困らないが。

 というより、寧ろ、それらがわかる必要性はないのである。能力値を数値として測定する技術は存在しているし、その内何処までが素の実力で、何処からが努力で補っている部分かなんて、知った所で何ら役に立たないのである。

 精々、誰かの知られざる秘密に気付いてしまうぐらいだ。

「…人は見かけによらない、とは言うけどさ」

 窓ガラス越しに見えるのは、この魔道学院で十本の指に入るだろう、有名人。学院の王子様アイドルとか言われている天才肌の優男である。

 尤も、僕から見える彼の能力値は半分以上青…努力値によって高い値となっているのだが。つまり、彼はかなりの努力家、という事になる。努力なんてしてません、みたいな顔をしているが。

 いや、まあ、彼が天才だろうが、実は努力家だろうが、割とどうでもいいのだけど。僕には関係ないし。関わりたくないし。

「――ウズカミ」

「え、あ、はい、何ですか」

「そこを退け。本が取れない」

「あ、ごめんなさい」

 僕がさっと退くと少年はふん、と鼻を鳴らして本棚に向かって本を探し始めた。

 彼もまた、かの優男と同じく、学院の有名人の一人である。クールで知的な努力家の秀才。氷の貴公子の異名を持つ彼は、僕から見ると基本的な能力値はまあ概ね真赤だ。つまり、彼は努力ではなく、素の能力が高いのだという事になる。…その分の努力値を何処に振っているのかまでは、僕も知らないが。いや、別に調べようとも思わないしね。

 …それにしても、彼は何故同じ学年とはいえ、平凡な学生たる僕の名前を把握しているんだ。クラスメートだけでなく同学年全員、生徒全員とかの規模で把握してたりするのか。…頭良いだけに有り得ないとは言い切れない…。

「ウズカミ」

「はいぃ?!」

「…何をそんなに驚いている」

「…いや、僕にはエヴァーレイン君に話しかけられる理由がさっぱり心当たりがなかったものだから…」

 というか、関わりたくない。面倒事の匂いしかしないから。

「その手に持っている本は何だ」

「え?…"精霊の言葉~蒼穹編"だけど」

「オレが探していた本がそれだ」

「…早いもんが………どうぞ」

 怖ッ。僕が本を差し出すと、彼は鼻を鳴らしてそれを受け取った。…おい、一言の断りも無しか。

「…これぐらい、一日で読める。また明日借りに来い」

「う、うん」

 …いや、別に僕もそれ一日で読めるけど。

 エヴァーレインが立ち去った後、僕は大きく息を吐いた。ああいう評判と実際が一致してない奴の相手は地味に緊張する。何でって、うっかり努力値周りの話を零したりしたら大惨事になる可能性があるからである。僕は、いつか来るであろう夢オチの日まで穏やかに暮らしたいのである。

「…他の本探すかー…」

「マヒロ、どうしたんだ?」

「クリス。…いや、別にどうしたって事もないけど…今日読む本何にしようかって悩んでるくらい?」

「だったら、私はマヒロに読んで欲しい本があるんだ。こっちだよ」

「あ、うん。何の本だ?」

 クリスは僕を物語の本が置いてある一画まで引っ張ってきた。

「これだよ。"正直者ウレリックの憂鬱な一日"」

「ああそれ読んだ事ある」

 というかそれ、コズミックホラーじゃないですか、やだー。






・把握されてるのはまあ、ルームメイトのせいである 

・見える条件は何かに透かして見る事。多分プラ板ごしとかでも見えるけど、世界観的にプラ板はないな

・西のエヴァーレイン(龍族、ユーフォラス)、東のサンスコット(天虎族、ニコラシカ)、的な

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