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Gunner Game  作者: 涼風 蒼
3/4

The first game

 夜の学校はその闇とともに一瞬にして危険な場所へと化す。どこぞのアニメや漫画で言う妖怪がうようよ………………なんて甘いことではない。


 まさに戦場。


 なぜそんなことが言えるのかというと、今まさにその真っ最中だからだ。

「あんにゃろ――……少しは慣れてきたっつってもこっちは素人なんだぞ……」

 カチャッと拳銃の引き金を引きながら、俺はぶちくさと文句を言う。

 これほど呑気なことを言ってはいられない状況なわけだが、最近慣れてきている自分に驚いている。もともと運動神経も良い方だし、意外と順応能力も高い、と自負はしているが、さすがに自分自身に引いてしまう。

「随分と余裕が出てきたじゃないか、森本先生」

 クスッと笑った声まで、静かな校内に響く。近くにいる、などと錯覚してはいけない。反響がいいぶん、相手が近くにいるとは限らないのだから。

 けれど、無理矢理こんな夢物語のような、嘘のような現実に嘆くな、というほうが無茶な話だろう。だから、この相手には本気で怒りをぶつけることが出来るわけなのだが。

「何が余裕だ! おま、俺が素人ってこと忘れてないか!?」

「ほう? たった数字つで撃ち方も避け方も様になってきている奴が、まだ素人気分とはな」

「うっせーよ! だいたい、テメーがこんな事を始めたのが原因だろうが!」

「言ったろ。簡単にガキ一人を殺すのはつまらねーって」

「子どもでも一人の命だぞ! そう簡単な物のように言うな!」

「簡単だろう。世の中は生きるか死ぬか。単純に出来ているんだからな」

 さも軽々しく言う東藤に、俺は何度怒りを覚えただろうか。

 だが、どれほど言おうと、東藤は全く聞き入れてはくれない。

「お前の説教は聞き飽きてるんでね。そろそろ動こうぜ? 森本先生」

「……にゃろ……」

 パンッと耳元の横を銃声が通った。わざわざ外したことぐらいは分かる。おそらく口ではなく動け、ということだろう。

 先ほど撃ってきた方角に俺も撃ってみるが、何一つ物音がしない。おそらく空振りだったんだろう。周囲が静かなせいで普段より音が良く通った。ピリピリとした緊張感が肌を刺していく。

 チラリと近場にある時計に目をやった。時刻は深夜一時を回っている。奴が掲示してきたゲーム時間は深夜二時まで。それまで、あと一時間弱。

「素人甚振って楽しいの……かよっ!」

 容赦のない東藤に、俺も少しばかり反撃を試みる。けれど、全く手応えがない。撃ち抜いたのは何もない空間。

 それでも、諦める気はなかった。

 俺が諦めればそこでゲームは終了。生徒の命を見捨ててしまうことになる。

「そんなこと……絶対させてたまるかっつーの!」

 怒声とともに何発も撃ってやった。しかし、どれも手応えがあるとは思わなかったが、ちんたら撃っていてもきりがない。

「……やるじゃねーか。ま、一発も当たってねーけどな」

「う、うっせー!」

 こんな状況かで、そんなことを褒められても全く嬉しくない。そもそも、殺り合っているような場面で、相手を褒める東藤の気がしれなかった。

「おっと……楽しんでたら時間切れ(タイムアウト)か。今日はここまで、だな」

 東藤の台詞を聞き、俺は自分の腕時計を見た。そこには二時の文字盤を通り過ぎている針が目に入った。

 時間が決められていたことにホッと胸をなで下ろした。拳銃弾数を見ると、一つも残っていない。最後に乱れ撃ちしたことで弾を使い切ってしまったらしい。弾数をちゃんと数えろ、とか言われてしまうかもしれないが、こんな緊迫した空間で、そんな余裕なんてあるはずもない。

「……弾……」

「無駄弾撃ち過ぎなんだよ」

「知るか。お前がこんなゲームなんて止めてしまえば銃なんて不必要だろ」

「それじゃあ、俺が楽しめないだろ」

「んなこと知るかよ」

 幾度となく説得を試みる俺だが、東藤には何一つ理解してもらえない。結局無駄話となってしまう。けれど、諦めるつもりは毛頭なかった。

 足元に弾が入っている袋が転がってきた。一週間はこれで済ませろ、ということらしい。持ち上げるとその重さが腕に伸し掛ってくる。

 この一発で、人を簡単に殺せる。

 こんな状況でなければ、拳銃の重さも、弾一つの重さも知ることはなかっただろう。

「……お前、こういうのってどこで手に入れてくるんだ?」

 話しかけ、返事を待った。しかし、東藤からの返事はない。

「東藤?」

 もう一度声をかけてみるが、やはり返事はなかった。渡す物だけ渡して、本人はとっとと帰って行ったのだろう。すでに何度もこういった置いてきぼりをくわされている俺としては、何も感じない。

「んなわけねーだろ!くそっ、絶対改心させてやる!」

 拳銃を懐に忍ばせてるホルスターへとしまい、俺は職員室へと戻った。自分のカバンをひったくるように持つと、全速力で家へと帰宅した。




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