GODのツケと贖罪
どうも。今日もせっせとチート転生作業に励んで、いい加減肩が凝ってきたGODです。
もう、この頃みんな我儘な子ばっかりでやんなっちゃうよ……。
転生希望先のバリエーションもべらぼうに広がってますからね、同じ「リリ○ルなのは」でも無印とStrik*sとかあるからね。どっちでもいいじゃんっていうのが本音だったり……ファンに怒られますね、ごめんなさいorz
あと一緒に与えてやる能力とかも色々あるし。数年前からは仮面ライダーの変身能力欲しいって人が目に見えて増えたかな。
ひとえに仮面ライダーって言っても、えーと、デ○ケイドとかダブ○とか○ーズとか次々新しいのに世代交代しちゃってて、情報が追い付かないっす……。
変身アイテムや強化アイテムもいちいちチェックしないとだし、あとはサブライダー?二号ライダー?っていうんですか。
主人公以外のライダーがいいっていう人もちょこちょこ出てきたりして、そっちの需要にも応えなk
「ちょっと神様! いつまでパソコンいじってんですか、もう休憩終わりますよ!」
「ええ、うそ!? まだ五分あると思ってたのに……」
「ぶつくさ言ってないでスタンバイして下さいよ、とっくに次の人喚んじゃってんですから!」
「だあああっ分かってるって! せめて保存だけさせて、また書き直すのヤダもん!」
白いカーテンを無遠慮に捲り上げた秘書専門天使・マイケ君に急かされ、わたわたとマウスを操作する。
ノートパソコンの薄い液晶の中に打ち込んでいた文章をメモ帳ソフトにコピーアンドペーストし、名前と保存先をしっかり確認してからOKをクリック。
この前は急いでいたせいで、滅多に開かないようなどこかのドキュメントファイルに無題のまま保存してしまい、発掘して探し出すのに四苦八苦した。神様たるもの、同じ失敗を繰り返すわけにはいかない。
一通り終わると同時にパソコンを閉じ、マイケがイライラと待ち構えるカーテンをくぐって休憩スペースを出る。
白いスモークが焚かれ、淡く点滅する照明で神秘的に演出された部屋が広がった。
さっきまで活動報告記事を書いていた休憩スペースのカーテンは、スモークに紛れて影も形も見えなくなる。
「──ぅえッほエッほ!! ちょ、マイケ君……スモーク濃すぎじゃない? 年寄りの喉に毒ですよ……」
「今更何言ってんですか、神様に年寄りも毒もないでしょうに。安心してください、協会規定の職場環境基準はちゃんと守ってますから」
大きくむせ返りながら言ってみたが、マイケ君は聞く耳持たずに即一蹴。
彼はなかなか仕事のできる優秀な秘書天使なんだけど、いかんせん言葉がきついと評判だ。分かってるとはいえ、ここまでにべもないと神様と言えど哀しくなってくる。
「無駄話はともかく、次の人について話しておきますね。名前は○○○×××、男性。21歳。死因は、横転してきた石油タンクローリーの爆発事故に巻き込まれたことによる爆死および焼死です。職業は……いわゆるニートらしいんで、転生持ちかけたらすぐ飛びついてくれるでしょう。ろくな人生送ってないでしょうからね。趣味は読書。多分ラノベ系の世界を希望すると思われるので、あらかじめ転生先は絞り込んでおきます。付加能力は……ああ、最近特撮にハマったのか。m*xiの日記に記録がありました。『変身してえ!』とか言い出します、きっと。単純極まりないですね、その方が楽でいいですが」
手元のタッチパネル型携帯情報端末を指先でちょいちょいと操作しつつ、しれっとした顔で毒舌を吐き散らす。
端末には毎回"喚ばれた"人間の生前の詳細が、協会を通して転送されてくる。
担当となった神様と秘書天使はこれを元に相談し、彼らが何を求めてくるのかあらかじめ予測を付けておき、よりスムーズな交渉に持ち込まなければならないのだ。そうでもしなければ後が詰まって仕方ない。
ボクは軽く頷きながら、口ひげをゆっくりと指先で撫ぜた。
「ふむ……ニートがチートに生まれ変わっちゃう、ってか。てへ(照)」
「何が『てへ(照)』ですか。無い座布団をこれ以上持って行かせるんだったら神様と言えど問答無用で張っ倒しますよ。傾向的にチョロい人種なんで3分で話つけてくださいね、ではお願いします」
「ハイハイ、つれないなあ」
思いついたオヤジギャグはあえなく玉砕。まあ予想はしてたけど……。
マイケ君はスモークでカモフラージュされた、転送先および付加能力制御室へとさっさと引っ込んでいく。
ボクはやれやれと頭をかいて、同じくスモークに隠れた小高い壇の上に佇んだ。
足元は見えなくなっているので、一見すると浮き上がっているような錯覚を相手に与える、これまた神様の演出の一つ。
「いきますよー」
「はいよー、どうぞどうぞ」
制御室からの声に答え、改めて身だしなみを整える。
そして、休憩モードで下がっていた目尻をきりりと引き上げ、眉間に皺を刻み、緩む口元に力を入れた。両手を前に組んで、背筋を真っ直ぐに伸ばす。協会規定に則って長くした白髪と髭がふわりと揺れた。
荘厳な「神様」の出来上がりだ。
もわり、と足元のスモークが膨れ上がった。新たな気配がそこに生まれ落ち、淡い灯りに照らされて人影がうっすらと浮かんだ。
──来た。
尚更気が引き締まり、スイッチを切り替えたように自分の眼差しが自然と研ぎ澄まされていくのを感じる。
「……ぶぇッほゲほ!! おええっ」
あ、むせた。しかもえずいた。
やっぱりスモーク濃すぎなんじゃないかなあ……。規定水準以内とは言ってたけど、やっぱりケチって安物のスモーク発生装置なんかで済まそうとしたからかしら。とりあえず後でマイケ君に相談してみようっと。
険しい表情を固定したまま、背中を丸めて悶えている人影を前にそんなことを考える。
やがて、彼は手を振り回してスモークを払い、きょとんとした表情で周囲を見回した。
「げっ……な、なんだここ?」
「げっ」って何よ、「げっ」って。なんか失礼な反応だな。
数秒間呆けた後に、彼が目の前の「神様」の存在に気付いて硬直するタイミングを見計らいながら、心の中だけで不満を垂れる。
ボクは彼を見下ろしたまま、ゆっくりと口を開いた。
──ようこそ、○○○×××。
──いや、ご愁傷様と言うべきか……。
口髭の中に仕込まれた超小型マイクを通し、不可思議な反響が残るように合成されたボクの声が、足元の壇のスピーカーから発せられる。
その声とボクの雰囲気に気圧されたのか、びくり、と彼──×××が半歩後ずさった。
──まず、私はお前に詫びねばならぬ。
──お前は死んだ。不本意であろうが、その短い人生に幕を引くこととなった。
「死んだ……って、はぁ!? 何言ってんだよ!」
お決まりパターンの台詞で反論する×××。
まあ当然っちゃ当然の反応だよねえ。
ボクは構わずに言葉を続けた。
──そして、お前が死ななければならなかった理由……それはひとえに、私にある。
「私に、って……じいちゃん誰だよ」
じいちゃん呼ばわりか。さすがにこの外見だと「おっさん」って若めに見てもらうのを期待するのは高望みなのかねえ……。
──私はいわば、お前たち人間が"神"と呼ぶ存在。
──人の運命をこの手に握り、手繰り寄せ、世界の理を保つ者。
──しかし私は、してはならぬ過ちを犯してしまった……。
──お前の死だ、×××。
「……。あれ、なんで俺の名前……」
お、信用度が上がってきたかな。
ていうか名前呼んだの二回目だけどね。ちょこっと鈍いかも。
──本来ならば、お前の死期はまだ先に定められているはずだった。
──だが私の手違いで、お前は事故に巻き込まれ、命を落とした。
──私は神たるが故に、この絶対的な力によってお前を殺してしまったのだ……。
「そ、そんな……じゃあ、あの爆発とか、全部夢じゃねーのかよ……」
がくり、とスモークの中に×××が膝をついた。
──うーん、第一関門は案外簡単に突破しちゃったか。こんなあっさり「神様」と自分の死を受け入れてくれちゃうなんて。
その方が手間が省けていいに越したことはないんだけど。
下手すると、この辺の解説と本人に現状を納得させるだけで延々10分以上も使っちゃう時もあるし、そうなっちゃうと後でマイケ君に「何やってんですか」ってどやされるし。
よし、さっさと第二関門いって終わらせちゃいますか。
──だが、×××よ。
──お前の命にはまだ生き延びるだけの価値がある。
告げた途端、力なくうなだれていた×××が、がば!と勢いよく顔を上げた。
──これからお前を、お前の行きたい別の世界へ生まれ変わらせてやろう。
──無論、ただでとは言わぬ。
──お前が欲しいと思っている、人智を超えた力……望む能力ならばなんでも与えてやる。
「行きたい世界……? 望む能力?」
──そうだ。
──例えば、お前が過去に読んだことのある物語の世界へ送り出すことも可能だ。
──能力についても然り。
──生きていれば、「こんなことができたらいい」と憧れる力の一つや二つはあるはずだろう?
──遠慮などせず、なんでも言ってみるがいい……これがせめてものボクからの詫びだ。
──それから、生まれ変わった先でお前は様々な強敵や試練を前にすることになるだろうが、案ずる必要はない。
──お前はその能力と、絶対的な強運と並外れた人望によって必ず守られ、思うままに幸福な人生を送れるよう取り計らってやる。
一気に捲し立てていく。
自分は死んだという絶望と混乱で正常な判断能力に欠いている今のタイミングで、「好きな世界で好きな力を持って生まれ変わり好きな人生を生きられる」という好待遇をちらつかせてしまえば、大抵の凡人は簡単に縋り付いて条件を呑むもんだ。
今まで"喚んだ"人間たちもそうやって誘い込んできたのだから。
さあ、これで丸め込む準備は万端。
あとは彼自身が選んで決めて、おしまい・チャンチャン♪だ。
さーて、君はどこに生まれて何になりたいのかな?×××君。
願わくは、マイケ君の予想が外れていませんように。外れててもすぐに制御装置の設定変更は可能だけど、それだと時間がロスしてしまう。あの子は「できる子」って言われてるから余計に、些細なミスを気にして落ち込んじゃうんだよなあ。
そうやって待っていると、しばし黙考していた×××君が結論に辿り着いたのか、ゆらりとスモークの中で立ち上がった。
立ち直り早いねえ……。平均的な子はここで「あっちにも行きたいこっちにも行きたいこれもあれもしたい」って迷いまくってなっかなか決められなくて、待ってんのが面倒だったりするから。
この子は順応性と即決力のある"優秀"な子だったんだな。"優秀"って言っても、神様基準での話だけど。
それはともかく……。
──答えは出たようだな、×××。
「……ああ」
問いかけると、×××ははっきりと頷いた。
うん、さすがはマイケ君だ。確かに「チョロい人種」だった。
──では、言うがいい。お前の望みを……。
「俺を元の世界に生き返らせて、元通りの生活をさせてくれ」
──よかろう。では早速お前を……なんだって?
反射的にいつもの調子でいつもの決まり文句を続けようとして、ボクは素っ頓狂な声を上げた。
すぐに「しまった」と冷や汗をかく。ついつい「神様」ではなく素の口調が出てしまった。
しかし、×××は気にせずに続ける。
「他の世界に転生なんてしなくていい。元いた所に帰してくれ。あと能力とかは別に要らない、代わりに今までと同じ生活をさせてくれればあんたを恨んだりしない」
……おいおいおいおいまじですか。よりによってそのパターンいっちゃう!?
やばいなーまずいなーどうしよう。とりあえず説得してみようか。
気持ちを落ち着かせて、なんとか「神様」の口調を取り戻す。
──残念だが、それは叶えられぬ。
「なんでだよ。カミサマなんだろ? 俺の願いなら何でも叶えてくれんじゃねえのかよ」
──すでに、世界に穴は空けられてしまった。"お前が死んだ"という穴が、だ。
──穴は時が経つにつれて自己修復し、塞がれることだろう。
──しかし、その穴に別のものを押し込んで蓋をすれば、逆に化膿させ、理を乱しかねないのだ。
「別のものでもなんでもねえじゃんか。俺が俺自身の穴を埋めてどう都合が悪いんだ、意味分かんねえ!」
──たとえ本人に相違ないとしても、一度死に、再び生まれ変われば、それはもう"違うもの"だ。
──○○○×××の意識を持っていても、もうお前は元通りの○○○×××として生き直すことはできん。
──だから『別の世界に』と言ったのだ。
実は全部口から出まかせなんだが、なかなかそれっぽい説得力のある方便になってるんじゃなかろうか。
半分はこの説明で諦めてくれるんだけど。
「うるせえ知るか! 大体てめーの身から出た錆なんだろ! だったら何とかしろよ、勝手に殺されて今までの生活取り上げられて、別世界に放り込まれて『はいそうですか』なんて言えるか!!」
ううん……頑固だ。
ため息が出そうになったけど、神様たる者が簡単に憂鬱になっちゃいけない。
ごめんねマイケ君、3分の公約破っちゃうわ。許してね。
──なぜお前はそこまでして元の人生に戻りたがる?
──挫折を経験しなければ終着点に辿り着けない波乱に満ちた退屈な人生に比べれば、何の苦労もなく約束された幸福が保証されている新たな世界に生まれ直した方が良いに決まっているだろう。
──それだったら、私も叶えてやれる。自らの過ちを償えるのだ。
──さあ、望みを言え。お前はどの世界に生きたい?
ほとんど駄目元でごり押ししてみる。もう最後通牒みたいなもんだ。
だけど、×××君は首を縦には振ってくれなかった。
「……確かにそうだよ、俺は今までろくな人生送ってこなかったよ。まともに職にも就けなくてニートで……だけど俺には夢があったんだよ。小説家になりたいんだ! 何年何十年かかってもいい、書いた作品がボロクソに叩かれてもいい、それでも誰かに『ああ、読んでよかった』って思える話を書きたいんだよ! 一度だけでいいから自分の本を出したいんだよ! そのために自分の全部を使って、就職も蹴って書くことだけに集中しようと思ったんだ。親も俺の夢を認めて仕送りしてくれてたんだ!
諦めるんだったら、自分できっちりケジメつけてからだ。いきなり殺されて尻切れトンボで中途半端に終わるなんてあってたまるか! 別の世界に生き直して、それで俺の夢は叶えられんのかよ? 欲しい能力で文章力をもらったって何の意味もねえよ、第一その世界に俺の親はいねえじゃねえか! 俺は、誰にも恩返しできねえじゃんか! だったら、死ぬほど辛くたって元の世界に帰って死に物狂いで這い上がってやる。
何が『手違いで殺した』だ、何が『それなら償える』だ。てめえの尻拭いに、てめえの都合を持ち込んで、俺をいいように丸め込んで何がどう償えるってんだ。チート転生させてハッピーエンドに引っ張り込んでハーレム気分味あわせりゃイチコロだと思ってたのか? 人間なめてんじゃねえや、このモウロク野郎!」
感情のままに捲し立て、顔を赤らめ、ぜいぜいと肩を上下させる×××。
……ま、正論だね。
こりゃ、いくら言って聞かせたところで無駄だわ。
張り詰めていた顔の筋肉から力を抜き、組んでいた手もだらりと下ろした。口髭に指を突っ込んで、仕込んでいたマイクのスイッチを落とす。
「あー……そうか。うん、分かった」
ここまで頑張って保ってきた声音と口調も通常モードに戻して、ボクは佇んでいた壇をおもむろに降りた。
急に軟化した「神様」の態度の変わりように驚いたのか、×××は目をぱちくりさせている。
「……じゃ、悪いけど死んでね」
くい、と掌で首を切る仕草をしてみせる。
瞬間、口を「え?」と訝る形にしたまま×××くんの姿はぱちんと弾けて消えた。
むわ、とその余韻で足元のスモークが蠢いて顔にかかり、再度むせ返りそうになった。
「──お疲れ様でした、神様」
「うん。マイケ君もねー」
見計らったように、マイケ君が携帯端末を手にして制御室を出てきた。
その顔には渋い色が浮かんでいる。
「……申し訳ありません」
「うん?」
「3分で済ませろなんて、軽率なことを……」
「いいのいいの。見誤ったってしょうがないよ、大体あの程度の情報で見極めろなんてのが難題もいいとこなの。マイケ君はむしろよくやってくれてんだから、そんな顔しなーい」
ね?と小首をかしげて笑い、マイケ君の頭を撫でてやる。
するとマイケ君は途端に不機嫌になって「子ども扱いしないでください」と手を払った。
「でも本当に誤算でした……まさか、たかだか21年しか生きていない一介のニートごときが、あんな絵にかいたような夢なんてものをを理由にしてチート転生を拒むだなんて」
「うーん……意外と奥が深いねえ、人間は」
言いながら、×××君が消えた後を見やった。
──ボクたちは、正確に言うと「神様」ではない。
秘書天使には「神様」と呼ばせているが、それは業務上必要な単なる職位名に過ぎない。
そもそも、ボクを含める「神様」はほんの数十年前には存在しなかったのだ。
世界には、その理を司り、あらゆる命の行く末を、世界の有り様を決定づけられる、真に全知全能の「絶対者」がいる。
言うなれば、"それ"こそが人間たちが「神」と呼ぶモノに相当するのかもしれない。
だが、"それ"は真の名など持たない。正確には、名などあるのか、そもそも人間のように有機的なものなのか、分からない。
ただ、そういう「意志」と、無から有を生み出す超越的な「力」があることだけは確かだ。
ボクたちはとりあえず便宜的に「絶対者」と呼ぶことが多い。
そして、ボクたち神様が生まれるきっかけが起こった数十年前。
それこそ本当に「絶対者」はある手違いを起こしてしまった。
その瞬間から約半世紀の間、数多の人間が当初の予定よりも早く死ぬ運命に書き換えられてしまったのだ。
「絶対者」は困惑する。
「絶対者」は全知全能であるがために、いかなる過ちも許されない。
犯した過ちによる綻びを放置すれば、世界の理を揺るがし、その理に根差してこそ意義を成す「絶対者」の存在をも脅かす。
しかし、一度犯した過ちは撤回するには大きすぎた。
ならば、何らかの形で埋め合わせねばならない。
どこかで汚点を作ったならば、同じだけの名誉を成して、均衡を保てばよい。
そうすれば最終的にはじき出される結果数値はゼロになり、「全知全能」であることができる。
こうして生み出されたのが、「絶対者」の手違いにより"死ぬことになってしまった"人間達を救済する「仮想世界転生システム」なるものだった。
「絶対者」は地上に生きる人間達から気まぐれに選んだ者が頭の中で思い描く「仮想世界」に間借りし、"死ぬことになった"彼らをそこに"喚んで"転生させることで、残した寿命分を消化させるシステムを構築した。
だが、人間がそれだけの見返りで自身の不運を受け入れられるかどうかと聞かれれば、答えはノーだ。
だから「絶対者」は彼らに己の全知全能の片鱗を同時に分け与えるという条件を付けることで、「別世界に生まれ変わる」という埋め合わせを押し付けやすくした。
そんな彼らと「仮想世界」との仲介として創出されたのが、神様とその補佐をする天使たちだ。
「絶対者」は神様と天使たちに枷を付けた。
それは、書き換えられた運命によって死ぬことになった人間達が、本来生きるはずだった残りの寿命を全て、神様と天使たちに転嫁するというものだった。
一人当たり未消化の寿命が、仮に十年だったとすれば、100人分で一千万年。しかし、今後救済措置が必要とされる人間達の数はさらに桁を増やねばならない。合計すれば何兆何億年という寿命が神様たちを縛り付ける結果となった。
同時に、神様たちはその"死ぬことになった"人間達を自らの元に"喚び"、彼ら自身に「転生する」ことを了承させて送り出し、未消化の寿命を全うさせることで、自分達に転嫁された寿命をその分だけ削り落とせる。
つまり、より多くの人間達と、より効率的に交渉して速やかに転生させればさせるほど、神様たちは課せられた「長すぎる寿命」という呪縛を解くまでの時間を短縮できる。借金を分割返済するのと同じ道理だ。
神様たちはその為に様々な手法を凝らして、人間達との交渉術を進歩させていった。
「神様協会」はその一環として設立された機関だった。
ある神様は、雰囲気に流されやすい人間の性質を利用して自らをより神々しく演出しようと躍起になり、ある神様は話術を工夫することで相手の人間を納得させやすくしようと努めた。
また、神様協会は"喚んだ"人間達が「自らの予定外の死」「別世界への転生」「全知全能の片鱗の授受」という状況をより呑み込みやすくするために、ある一大プロジェクトを手掛けた。
彼らが転生する先は、人間の頭の中にある仮想世界──その仕組みを利用したのである。
例えば、ある学生が転校するとき、転校先の学校やクラスの雰囲気といった情報が一切無い状態では「うまくやっていけるのか」と必要以上に不安がるケースが存在する。
しかし、事前にその転校先を実際に訪ねて見学し、体感的な情報を得たりしておくと、そういった不安は驚くほど払拭されていくものだ。
このような人間の心理に着目して、神様たちは仮想世界を借りている人間自身の意志に作用し、彼らが自ずから、その思い描いた世界を外に発信するよう仕向けた。
例えばそれは小説であり、漫画であり、アニメであり、ゲームであり、ドラマといった形をとる。
そうして具現化された仮想世界を観賞した周囲の人間達は、やがて「こんな世界に行きたい」という潜在的な願望を抱く。
だから、その中で"喚ばれて"しまった人間に転生の話を持ちかけると、生前の願望とあいまって、神様からの交渉を受け入れやすくなっていくのだ。
さらには、付加する能力についても分かりやすく把握できるよう、「全知全能の片鱗」などという小難しい言葉ではなく魔法、霊力、変身能力といった具体的な言葉や形態に洗練し、人間達が選びやすくなるように調整した。
特に最近になっては、実際に力を得て無事仮想世界に転生し、万々歳の余生を送っている者達の姿を、まだ生きている人間達の表層意識に「アイディア」や「ネタ」として浮上させて、作品として送り出させることで、より「仮想世界への転生」に対する強い憧憬を根付かせつつある。
これが、今日普及している、いわゆる「チート転生最強主人公宣伝プロジェクト」である。
今となってはその手軽さで、ほぼ100%の神様たちが使っている手法だ。
──だが、どんなに工夫をしても避けられないことがあった。
中にはまともすぎる人間がいて、どんなに好待遇を突き付けても首を縦に振らないケースがあるという現実だった。
一度死んでしまった以上は、元の通り蘇らせることはほぼ不可能である。
それでは「絶対者」自らが世界の理を崩すことになり、全知全能ではなくなってしまう。
時間をかけて納得させることも可能だが、それではいつまでたっても神様たちは転嫁された寿命を消化できない。
仕方なく、そのように認めない人間は、未消化の寿命を残したまま問答無用で「死なせる」しかなかった。
その分の寿命は神様にツケとして回されるが、後を詰まらせて数百人分の寿命を全部背負うよりも、スピーディーに終わらせてほんの数人分だけ残すくらいの方がまだマシだ。
そういう考え方が神様たちの中で当たり前になっていた。
そして、ボクも──
「ああー、これで120年分の寿命残留決定か。やれやれだなあ。ほんと、うだつの上がらん神様でごめんねえ、マイケ君」
「そんなふうに思うのなら、パソコンで活動報告記事を書く思考力を人間を説き伏せるテクニックを磨くことに費やしてください」
「うう、ほんとつれないなあ……」
「さあ、さっさと次行きますよ次。マイクスイッチ入れ直すの忘れないでくださいね」
「はいはい。まるで小姑だねえ」
どうも。毒舌のキビシー天使・M君に今日もしごかれちゃったGODです。
しかもまた哀れな若い子を説得しきれず一人死なせちゃいました。我ながら罪作りだなあ……。
これでさらに無駄に長生きしちゃいます。もっと頑張らないと。
それにしても、いつになったら終わるんだろうねえ、この盛大なる責任転嫁と尻拭いの押し付け合いの悪循環は? ……いや、すいません、言いすぎましたごめんなさいorz
せめて、何か予想外の面白い事でも起こらないかしらと願ってやみません。




