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第8.5話ジェイルThe Fragment of Memories and the Hidden Truth

サイドストーリーのジェイル編です。

今思うとそのまま第8話に組み込んでも問題なかったなと後悔(笑

未来予言の能力を身につけたために両親から捨てられ鬼になってしまったジェイル。大吾のお陰で人間に戻され、託された欠片で彼の記憶と本当の力を取り戻す。

「……………………任せた」

 声になっていたかどうかもわからない。

「…………1欠片だけでも……お前に……………………」


 大吾は何を思ってか僕に最後の一欠片を託してきた。でもどこか懐かしい記憶が蘇ってくる。


(温かい)


 最初はそれだけだった。

 大吾のゼロポイントの欠片が胸に触れた瞬間、ジェイルの中で何かが動いた。小さな、しかし確かな熱だった。

 ジェノの闇の中でずっと凍えていた何かが、その熱に反応している。

(これは——)

 映像が流れ込んできた。

 最初は輪郭のぼやけた断片だった。光の中に立つ人影。子どもの笑い声。温かい手の感触——。

(兄さん!)

 その顔が見えた瞬間、堰が切れた。

 記憶が、一気に溢れ出してきた。

 ***

 幼い頃の自分が見える。

 兄の背中を追いかけて走っている。転んで膝を擦りむいて、それでも泣かなかった。

 兄に「強いな」と言われたかったから。

 一族の修行。剣の稽古。霊界の話。

「ジェイル、お前には特別な力がある」

 祖父の声だ。父母からは痛い仕打ちを受けてきたが、何故か祖父だけは僕に優しかった。

「未来を見る力——しかしそれだけではない。お前の本当の力はまだ眠っている」

(本当の力——)

 記憶がさらに流れ込んでくる。

 鬼になる前の夜のことだ。ジェノの影が自分の中に忍び込んできた瞬間——あのとき自分は何を感じていたか。

 恐怖ではなかった。

 怒りでもなかった。

(俺は——諦めていた)

 一族を苦しめてきた呪いのシステム。歴代の長男たちが消えていく理不尽。それを変えられない自分への絶望。

 その隙をジェノに突かれた。

(だから俺は飲み込まれた。恐怖ではなく——諦めによって)

 記憶がさらに深いところへ潜っていく。

 鬼として過ごした時間。ジェノの中に取り込まれていた時間。意識があるのかないのかもわからない暗闇の中で——それでも消えなかったものがあった。

 兄に会いたい。

 ただそれだけが、ずっとそこにあった。

(これが俺のゼロポイントだったのか)

 大吾の声が蘇る。

「お前が鬼だったとき、最後まで消えなかったものがあっただろ。それがお前のゼロポイントだ」

 そうだ。ジェノに飲み込まれても、何百年経っても——消えなかった。

 その事実が、今になって胸に刺さった。

 ***

 記憶が、さらに奥へと続いていく。

 祖父の言葉が再び響いた。

「お前の本当の力はまだ眠っている」

(本当の力——未来予知だけではない、と言っていた)

 ジェイルは自分の手を見た。

 かすかに光っている。大吾から受け取った欠片の熱が、まだそこにある。

 そして——わかった。

 自分が何をしてきたか。一族を苦しめてきたこと。創造主の願いを壊してしまったこと。兄さんがジェノにやられたこと。それら全部が——自分が背負うべきものだった。

 しかし同時に、もう一つのことも分かった。

 それを背負えるだけの力が、自分にはあった。

 最初から。ずっと。眠ったまま——。

(世界の再構築)

 祖父が言っていた「本当の力」の正体が、今初めて形を成した。

 壊したものを、作り直す力。

 ただし条件がある。自分が何者であるかを完全に思い出したとき——初めて使える力だ。

(大吾――。)

 ジェイルは倒れたままの大吾を見た。

 こいつが欠片を渡してくれなければ、俺は今もジェノの闇の中にいた。記憶も、力も、取り戻せないままだった。

(お前のおかげだ)

 そしてジェイルは——静かに、覚悟を決めた。


 僕は、古びた一族の歴史書の最後のページを破いた紙をポケットから手に取った。

 そして大吾に視線を落とすと、アイツが霊界に行きたがったビジョンが見えてきた。


 ***

「緊急…………何のことかわからない。いや待てよ、続きが気になりすぎて夜も眠れない。

 なぜ、破けてしまったのか……なんか一番肝心なところな気がする……健堂もジェイドもどうせ大したことないから気にしなくてもと返されたけど、ここは兄として気になる」

(……ぶっ、大吾かわいいとこあるやん)

 僕は大吾の可愛さに思わず吹き出さずにはいられなかった。幼少の頃の純粋な好奇心――。

(そうだ、大吾!ここが一番肝心なところだ。)


 ビジョンはここで切れ、僕は霊界に戻っていた。

 ここまで見ると、やはりこの紙切れは大吾に託したほうがいいと改めて思った。

「——さて、戻ったら僕も一仕事しますか」


 見えてきた――あのジェノの恐怖はまだ霊界中を覆いかぶさっていた。


(第8話へ戻る)

ここまでお読みくださりありがとうございます。

かなり短いサイドストーリーでしたが、ジェイルの本来の力に目覚め、いよいよ物語はクライマックスへ。

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