第7.5話3人の試練③スローン編
スローン博士の過去が明らかになります。
ゼロポイントの守護者になる前は、なんとIOで人の感情に関して研究していた彼女。
彼女の仮説は当たっているもののジェノに全てを持っていかれてしまう。
彼女の研究を逆手に利用し、ジェノの恐ろしい物語が幕を開けます。
私はスローン――ゼロポイントの守護者。
だが、かつては人間だった。9歳で大学に飛び級入学した神童。その能力を買われ、イマジンド・オーダーのNo.2エージェントになった。
最初はいい組織だった――。
だが、ゼロポイントを狙い始めてから、組織は暴走した。彼らはゼロポイントを「ただのデータ」としか見ていなかった。すべてを仕組みで解明し、技術として取り込む――それが最優先事項だった。
「ゼロポイント――長年我々が研究対象にしてきたが、未だにわからないことだらけね」
実験を重ねるうち、私はある仮説を立てた。
【ゼロポイントは人の心そのもの】
だが組織は認めなかった。その後、私が守護者になったとき、この仮説が正しかったと確信した。
しかし――私は大きな過ちを犯してしまった。
「人間を完全に制御できるカプセル」
禁忌に触れたこのカプセルは、副作用も少なく、暴走した感情を完全にコントロールする。だが裏には、依存を生み出す問題があった。
組織はそれを黙認し、私は改良を続けた。そしてついに、完全無敵の薬が完成してしまった。
後にこれが、大きな誤算になるとも知らずに――。
***
そしてあのジョーンズに私は世界を分断するように告げ、私は人間としての人生を終えた。
すると、創造主が現れた。あまりにも私を哀れに思ったかどうかは知らないわ。よって私はその創造主からゼロポイントの守護を命じられた。
ゼロポイントの守護者は主に人の心を守ることに役割を徹している。
絶望を持った人に勇気を与えたり、頑張っている人の背中を押したり、一見地味そうな仕事だけど、ここの創造主にそう命じられたわ。
この創造主から告げられたことはたった一件――。仮面一族をなんとしてでも守り通せだった。
最初は何のことだと思ったわ、創造主に聞いたらとんでもない答えが返ってきたわ――。
「かつて――その一族に救われた……。
そして私のこのゼロポイントは…………彼らから譲渡されたものだ――それがゼロポイントの始まりだ。
譲渡はお前もわかるだろう――相手を間違えると致命的になる――」
***
そして数千年後経ってから、仮面一族の大吾たちがやってきた。名乗らなくても彼らが仮面一族だとすぐにわかった。
創造主と同じゼロポイントの雰囲気を感じたから。そして私は彼らに力を貸した。
まさか、大吾たちを襲ったあの鬼も仮面一族だということは例外だったけど、問題はそこからだった。
大吾が救出に向かう際、どうしても不安が拭えなかったので大吾たちが時間を止めていた現実の世界の流れをもう一度見直した。
するとあの男が、私が作っていたカプセルを持っていた。感情を殺しながらも時間が一瞬止まった感覚――。
そしたら大吾に声をかけられ、ふと我に返る。
「スローン……?」
「何?」
「ポータルを開いてくれ、行ってくる」
「……ええ、わかったわ」
【この先はいけない】と言うことができなかった。彼らはこのカプセルの正体を知らない。
もしこれを壊すチャンスがあるのなら――彼らが任務に出た後――。集中状態なら一人抜けても気が付かないでしょ。
これで終わらせないと大変なことが起こる。
大吾はあの時代へ、残り2人はかなりの集中状態に入って特異点を探している。
私は席を外し、時間を遡った。目指すは、あのカプセルが完成する直前――あの時代。
「あの忌まわしいカプセルは、絶対に葬り去らないといけない」
私は過去の自分の意識に潜り込んだ。過去の記憶を読み取り、ジェノの行動を監視するために――。
***
―スローンの過去―
「ところで、スローン、例の薬の開発は順調か?」
黒スーツにサングラスをかけ、私に声をかけてきたこの男こそが、私が所属していたかつての黒塗りの組織、イマジンド・オーダーの創設者のジェノ。
この私でさえも何を考えているか予想もつかないが、いいことではないのは確か――。
「問題ありません、副作用も今のところ確認はされてないわ――。
(それにしても、人間の感情をコントロールして何になるのかしら、どこか踏み込んではいけない領域に行きそうね)」
「おっと、変なことは考えないでくれよ、No.2のスローン。この国の悲願でもあるのだよ。
見ていたら人間は愚かなことばかりしているとは思わないのかね?
戦争、争い、いじめ――、なぜ歴史はこうも残酷に繰り返すのか――そしてこの醜さは幼少の頃から始まる。
完璧な秩序にこのようなものは不要だと思うだろ?スローン」
「……仰るとおりです。私もこの醜さについては、嫌なほど目にしてきましたから」
スローンの脳裏に、ある記憶が蘇った。理不尽な暴力。見て見ぬふりをする大人たち。そして、失われた大切な人――。
(あのときも……私は何もできなかった)
「そうだろ? 全ての元を完全にコントロールして、そうならないように封じ込める。わかったら、完成まで急いでくれ」
こうして私は、自分のPCに膨大なソースコードを組み合わせ、完成を急いだ。
(確かこのプログラムには、副作用として依存を生み出してしまう――理性を完全に脳から遮断し、私が思ったのとは全く違う効果が生まれる
でも、おかしいわ――私のプログラムには一切そのような危険な副作用を生み出す要因となるものが一切はいっていない
これは…………どういうことなの……。)
もう一度私は膨大なソースからプログラムを読み解くが、歴史的な大失態を招くような操作が1つも見当たらない。
――そう考えると、もう1つしか考えられない。
「あいつが、意図的に書き換えている――にしてもどの段階で!?」
私はその場で意識を集中した。霊界の守護者として修行を積んだおかげで、人の行動パターンから未来の選択をある程度予測できる。ターゲットをジェノに絞り、念のため録画デバイスも仕込んでおいた。
そして――見えてきた。
やつのとんでもない野望が――。
***
――スローンが見た、ジェノのたくらみ――
コーヒーを淹れながら、新聞を手に取ったジェノは、特集記事を一瞥した。
「あいつが、意図的に書き換えている――にしてもどの段階で!?」
私はその場で意識を集中した。霊界の守護者で毎日修行しているおかげか、多くの人は行動が一定で将来どのような選択をするのかが大体検討がつく。そして、ターゲットをジェノに集中し、一応念の為に録画のデバイスも仕込んでおいた。
見えてきた――やつのとんでもない野望が――。
***
コーヒーを淹れながら、新聞を手に取ったジェノは、特集記事を一瞥した。
「へぇ……霊界ね。存在しないものをこうも詳しく特集するとは、バカバカしい」
彼は新聞を丸めて捨てようとした――その時、ある見出しが目に飛び込んできた。
『ゼロポイント――人間の心の核を物理的に抽出・操作可能に』
ジェノの手が止まった。
「……何だこれは」
彼は新聞を広げ直し、その記事を凝視した。そして――食い入るように読みふけり始めた。
(まさか、あの男がここまで執拗に霊界に興味を示すとは……)
当初、【ゼロポイント=人の心】というのは当然受け入れられず、眉唾として処理されてきた。
守護者の仕事してからはこちらの説のほうが正しく、その事実を知ったときには頭が上がらなかった。
そしてあの男はあろうことにも堂々と私の研究室で、私のいない間に時間を盗んでプログラムを書き換えていた。
「悪いな、スローン。お前の考えていることはお見通しだよ!
私の野望は誰にも止められない!!こんな組織を裏切るようなプログラムを書いていたとは、望み通り裏切り者にしてやるよ」
そして――プログラムが完成して発表ののち数日後、連日ニュースになっていた。
「速報が入りました!イマジンド・オーダーのNo.2が開発した感情をコントロールし、精神的な助けとなるカプセルにとんでもない副作用が発見されたとのことです!この薬の副作用には、人間の感情を急激に抑圧し、薬が切れたときに膨大な渇望感を生み出し依存症に陥ってしまうとのことです」
何度も何度も映像を繰り返し、あの男の先を行くことを考えた。全く非の打ち所もなく、与える隙も少なすぎる。
絶望だけが焼き付けてもこのままでは本当にこの世界ごとあいつの好きなようにされてしまう。
何よりも嫌なのが創造主との約束を守れなくなってしまうことだった。
唯一の救いが、あの男はまだ私が取り憑いていることには気づいていない。今ならなんとかなるかもしれないともう一度映像を巻き戻し、
ダイブした。
「本来のプログラムに戻す――そうすれば悲惨な結果は免れるはず」
スローンはジェノがプログラムを書き換えて離席の瞬間を狙った。
「さあ、どこを変えたのかしら……。
待って…………何よこれ………………。さっき見たものとは比にならないほど残酷な結果が映し出されていた」
さっき見たのは、人に対しての副作用だった。
このプログラムは、幻影を見せつけ、共食いをさせるものへと変貌していた。
「…………あり……えない!…………何のために!?」
あまりにも驚愕してその場から動けなくなった。無慈悲で残酷なプログラム。これをどう使うのか想像しただけでも恐ろしい。
そしてあろうことにも、あの男――ジェノが戻ってきた。
だが、何かがおかしい。
そのジェノは、先程いたジェノとは違う。見た目はジェノそのものだが――目が違う。人間の目ではない。奥底に、どす黒い何かが蠢いている。
「俺の周りを嗅ぎつけているのは、やはりお前か――」
その声は、ジェノの声ではなかった。
「…………っ!!」
「お前がゼロポイントの守護者なら、俺は地獄の門番だ」
スローンは息を呑んだ。地獄の門番――人間の負の感情から生まれた、悪魔そのもの。
「恐怖、渇き、憂い、悲しみ、憎しみ――人間がこれらを生み出してくれたお陰で、俺は多くを支配できる。そして霊界も、俺のものになる」
この地獄の門番は、嘲笑っていた。
急いで戻らなければと思っても、手も足も出ない。
「恐怖、渇き、憂い、悲しみ、憎しみ――人間がこれらを生み出してくれたお陰で、俺は多くを支配できる。そして霊界も、俺のものになる」
人間の負の感情から生まれたこの悪魔――ジェノは、嘲笑っていた。
急いで戻らなければと思っても手も足も出ない。
「おっと――、いつもこの世の中はそうだろう?スローン
知りすぎたものは消される運命だと――。それが秩序というものだ」
「…………っ!!!!!」
目にも止まらぬ早さで私は傷を負ってしまった――。霊体にもかなりの傷を受けた。
霊界とはまた別のもの――自分にもわからなかった。意識を失う寸前で私はワープ装置を起動させた。
次元の裂け目から放り出されるようにして、私は元の場所に戻った。
視界が霞む。霊体がひどく損傷しているのが分かる。そこに、集中状態から解けた健堂とジェイドの驚愕した顔が映った。
「スローンさん!? な、何があったんですか、その姿!」
私は、消え入りそうな意識を必死に繋ぎ止める。
伝えなければ。修正はできなかった。でも、この真実だけは――。
「これを……見て……奴らの……本当の目的を……」
私は最後の力を振り絞り、過去で見た「書き換えられたコード」の映像を彼らの脳内へ直接送信した。
「私は…………大きな…………過ちを……」
ジェイドが私の体を支えようと手を伸ばす。
「スローン!?」
もう、時間がない。大吾、ごめんなさい。あなたに、もっと早く伝えるべきだった。
「に、げて……大吾を連れて……これを使って……早く、ここから……!」
私の意識は、そこで深い闇の中へと沈んでいった。
ここまでお読みくださりありがとうございます。
スローン博士については、フォートナイト内でもともと黒塗りなので、ここからフォートナイト内でも都合の悪いことはなんだろうと発想をめぐらしたらゼロポイントの守護者にいきつきました。
守護者になってからは全てを知ってしまった彼女。仮面一族を逃がそうとはするものの、ジェノの魔の手が…。




