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無敗の皐月賞馬

デアリングタクトが桜雨に濡れる桜花賞を目の覚めるような末脚で突き抜け、無敗の桜花賞馬が誕生した翌週、今度は中山競馬場で皐月賞が行われる。

昨日行われた中山GJは大雨、それも1日に60mmもの降雨を記録する不良馬場で行われ、死闘の末にオジュウチョウサンが空前絶後の5連覇を果たした。

前日は雨に濡れ、不良馬場での開催であったが、皐月賞当日は晴れ、最悪の馬場コンディションもレースを経るにつれ回復していき、皐月賞はインが少し傷みながらも稍重でレースが執り行われた。

この日曜日はどんな結末を迎えるのか、テレビの前で固唾を飲み見守るファンの興奮はレースを追うにつれ高まっていく。

共同通信杯覇者ダーリントンホール、スプリングSを快勝したガロアクリーク、ホープフルS2着のヴェルトライゼンデなど俊英ひしめく中、3頭の人気が抜きん出ていた。

3番人気はサリオス。

新馬、サウジアラビアロイヤルカップ、朝日杯フューチュリティSをどれも底を一切見せない快勝でここに駒を進めた。この3連勝全て1600mという事が懸念材料ではあったが、血統や勝ちっぷりでは問題にならないだろうという見方であった。鞍上に昨年春旋風を巻き起こしたD.レーンを迎え、無敗での皐月賞制覇を期す。

2番人気はサトノフラッグ。

未勝利、一勝クラスと連勝し臨んだ弥生賞ディープインパクト記念が圧巻の一言。まずまずのスタートから中段に控え、武豊を背に4コーナーで一マクリで勝負を決めた。正に昨年亡くなった父を思わせるような勝ちっぷりに大きな期待を背負うこととなった。鞍上には新たにC.ルメールを配し、史上初の弥生賞と皐月賞の同一年親子制覇を狙う。

1番人気はコントレイル。

新馬戦を快勝し、東京スポーツ杯2歳Sを6馬身差、2歳コースレコードの圧勝。続いたホープフルSも内枠からソツのない競馬で快勝し、中山コースへの不安もない。三冠馬候補と目する向きもある。手綱は新馬戦とホープフルSで騎乗した福永祐一が継続騎乗で執り、無敗での皐月賞親子制覇を狙う。


1-1 コントレイル 福永

1-2 レクセランス 北村友

2-3 コルテジア 松山

2-4 テンピン 中井

3-5 サトノフラッグ C.ルメール

3-6 ディープボンド 横山典

4-7 サリオス D.レーン

4-8 ウインカーネリアン 田辺

5-9 ブラックホール 石川

5-10 アメリカンシード 丸山

6-11 クリスタルブラック 吉田豊

6-12 マイラプソディ 武豊

7-13 ダーリントンホール M.デムーロ

7-14 キメラヴェリテ 藤岡康

7-15 ラインベック 岩田康

8-16 ガロアクリーク L.ヒューイットソン

8-17 ヴェルトライゼンデ 池添

8-18 ビターエンダー 津村



中山競馬場に春を告げるGIファンファーレが鳴り響き、各馬の枠入りが始まる。枠入りは順調、最後18番のビターエンダー津村が収まる。


第80回皐月賞のゲートが開いた。

ダーリントンホールがややアオるスタートで遅れたものの全馬横一線の立ち上がりを見せた。

注目の先陣争いはウインカーネリアンが軽く押して出ていき、2番手集団に内からテンピン、サリオス、外にキメラヴェリテで前は固まるか。いや、外からキメラヴェリテがウインカーネリアンを交わして先頭に立っていく、キメラヴェリテがペースを握る。その後ろにディープボンドが続き、サトノフラッグとコントレイルはスタート出るも前に出していかず中団から中団やや後方の位置取りとなって18頭が1コーナーに飛び込んでいく。


1コーナー、キメラヴェリテが逃げの手に出る。ウインカーネリアンはこれを追わずに2番手、この後ろにビターエンダーとディープボンドがいる。これらをやって5番手に無敗の朝日杯馬サリオス。その後ろ、ラインベック、テンピン、ヴェルトライゼンデを挟んで5番のサトノフラッグは中団外。その更に2馬身後ろ、コルテジア、ガロアクリークの後ろインにいるのがコントレイル。外にはマイラプソディが動きを見せ、残り800を通過、この隊列が少しづつ縮みながらも並びは変わらず残り600を切り、レースは加速していく。


キメラヴェリテに早くも並びに行ったのがウインカーネリアン、内をするすると立ち回ってポジションを上げていくサリオス。しかし、テレビの前で見守るファンの目線はそこには無い。では何処に向いているのか、外、1番外に人々の視線が向く。

つい10秒前まで内に居たはずのコントレイルが居る。

いつの間に外に出したのかわからない。コントレイルがとてつもない勢いで上がってきている。サトノフラッグもその勢いに合わせ一気に仕掛ける。サリオスが内、サトノフラッグとコントレイルは大外に、4コーナー出口、3強が横一線に並ぶ。

直線に向いた。

内でキメラヴェリテが頑張っているが手応えがない。その外馬群を割ってサリオスがやってくる。伸び脚がいい。しかしその外にいるウインカーネリアンも懸命に粘り、外のサトノフラッグ、コントレイルも余勢を駆って伸びてくる。

4頭に絞られた。いや、コントレイルとサリオスの手応えがいい。コントレイルがサトノフラッグを置き去りにし、サリオスが外に寄れる。これによりウインカーネリアンの進路も外に向いた。これでサトノフラッグの進路は消える。2頭の間、ウインカーネリアンも置いていかれた。

ついに2頭に絞れた。残り200m。

どちらも無敗の2歳王者。

無敗で1冠目を狙う者同士の激しい意地のぶつけ合い。

ダミアン・レーンが、福永祐一が、懸命にムチを飛ばし、懸命に馬のストライドを伸ばさんと追っている。

漆黒の馬体が跳ぶように、栗毛の馬体が力強く地面を蹴って疾駆する。2頭と2人が坂を駆け上がり、後続は大きく離された。


そして、決着の時は来る。

坂を上がり切り、僅かに、しかし決定的な差が少しずつついていく。

最後は外、コントレイルが半馬身出ていた。

父と息子、2代での無敗の皐月賞制覇としてコントレイルは栄光のゴールに飛び込んでいった。

サリオスは2歳王者として文句なしの走りを見せた。しかし、内を上手く立ち回ったサリオス、外から豪快に捲りあげたコントレイルとの差はあるようにも思えた。

3着にはそこから3馬身半差離れて最後ガロアクリークが追い込んだ。サトノフラッグは直線攻防での不利が祟ったか5着、それでも力は見せた。


レース後の勝ち名乗り、そしてインタビュー。


福永は思い描いたレースではなかったと語る。 それでも、馬の力を信じ、最後は外に持ち出してからは素晴らしい手応えで突き抜けそうと話す。

鞍上の思うままに運べた訳ではないながらにこの末脚を繰り出すことは直線が伸びる東京の舞台に替わる事は大きなプラスであり、早くも父以来となる無敗での2冠達成が現実味を帯びてきていた。


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