花雨にそよぐ桜冠
2022年4月12日、いよいよ桜花賞がやってきた。
桜花賞当日。阪神競馬場は朝から雨が降り続いた。
良馬場であった馬場コンディションは昼前には稍重に変わり、10レースが発走する前は重馬場となっていた。尚も雨は降り続き、春雨にくゆる桜花賞となった。
混戦の中、選ばれた18頭、18人の力比べになるだろう。そんなレースになる気配が漂っていた。
1-1 ナイントゥファイブ 松田
1-2 チェーンオブラブ 石橋
2-3 スマイルカナ 柴田大
2-4 サンクテュエール C.ルメール
3-5 マルターズディオサ 田辺
3-6 ウーマンズハート 藤岡康
4-7 ヒルノマリブ 北村友
4-8 リアアメリア 川田
5-9 デアリングタクト 松山
5-10 フィオリキアリ 藤井
6-11 クラヴァシュドール M.デムーロ
6-12 インターミッション石川
7-13 マジックキャッスル 浜中
7-14 ミヤマザクラ 福永
7-15 ヤマカツマーメイド 池添
8-16 ケープゴッド 岩田望
8-17 レシステンシア 武豊
8-18 エーポス 岩田康
雨が降り注ぐ阪神競馬場、ファンファーレが鳴り響き、ゲートインが始まった。
歓声も拍手もない、静かな枠入りで、奇数番、偶数番の各馬とも順調に枠入りが進み進んだ。
最後にエーポスが収まり、桜花賞がスタートした。
内の各馬が比較的好スタートを切り、3番のスマイルカナが押して出ていき逃げの態勢を取った。少しスタート遅れ加減であったレシステンシアも押して押して2番手を取りきり、スマイルカナを見るような競馬を展開していく。
その後ろの集団にはマルターズディオサやサンクテュエール、リアアメリアなど、混戦の中で注目される有力馬達が位置取り、デアリングタクトはその後ろであった。
最初の600mは34.6、この馬場ではかなりのハイペースで馬群は縦長になりながら進行していく。3コーナー手前、スマイルカナの逃げ変わらず、ピッタリマークするレシステンシア。
この後ろからはチューリップ賞覇者マルターズディオサも色気を見せて3番手、デアリングタクトはそこから6馬身以上置かれた馬群の外にいる。
4コーナーを回って直線コース、直線入口早々と先頭に立とうとするのは2歳女王レシステンシア、しかし負けじと逃げたフェアリーS覇者スマイルカナが抵抗を見せ、2頭の叩き合いの様相を呈し始めた。
しかし、300mを切ったあたりでレシステンシアが手応え優勢、先頭に代わる。外に持ち出してマルターズディオサが追いかけてきている。しかし、後続馬もこの道悪とハイペースからか速い脚を使えず、後続各馬は前から離れてしまった。
しかし、テレビから見ていたファンはこの瞬間に外から1頭、1頭だけとてつもない脚で追い込んでくる馬を目撃する。
デアリングタクトだ!
瞬く間にマルターズディオサを交わし、スマイルカナ、そして先頭を往くレシステンシアを一気に射程圏内に入れた。
懸命にムチを飛ばし、レシステンシアを鼓舞する武豊、必死に追ってレシステンシアを交わそうとする松山。しかしスピードの違いは歴然であった。
最後は突き抜けた。その言葉がピッタリの末脚を発揮し、1馬身半差をつける快勝で新女王の誕生、そして無敗での桜花賞制覇を成し遂げた。
鞍上松山弘平はゴール後大きなガッツポーズを繰り返し、彼自身のGI2勝目を挙げた喜びを表現した。
1頭遅れて戻ってきたデアリングタクトと松山。
松山は右手を高々とあげて人差し指を1本立てた。
これからの未来を予言するような、三冠宣言ともとられかねない表現をし、彼女、そして彼の桜花賞は終わりを告げた。
そして、混戦だった20年の牝馬クラシックに主役が生まれ、デアリングタクトは世代でただ1頭の牝馬三冠、そして史上まだ例のない無敗での牝馬三冠に挑む権利を手にした。