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「美味しいよ、食べる?」
周りにひとがいるから、少し控えめにリャニャはモフに問う。
{りにー}
食べるか訊いて、モフが食べたことはない。なにか答えが返ったこともない。それでも訊くのは、訊くとモフが嬉しそうにするからで。
けれど今日のモフは珍しく答えて、その答えにリャニャは目を見開く。
「そう、なの」
{りにーあ}
「そっか、ありがとう」
はにかんだリャニャに、サトラ先輩が訊ねる。
「なんて言われたの?」
「わたしの作る料理の方が美味しいから、いらないって」
「みんなしてさらっとそう言うこと言う。学食だって美味しいのに」
確かに美味しい、とリャニャはちんまり乗せられたトマトパスタを口にする。トマトの味はトマト煮のほうが濃厚だが、パスタも茹で加減が絶妙でトマトとチーズの相乗効果も良かった。
「パスタも美味しい」
「でしょ!下手なレストラン行くより美味しいの、ここのパスタ」
思わず呟いたリャニャの言葉を拾って、アミラ先輩が笑う。
「トマトパスタ以外のパスタも美味しいから、試してみてね」
「はい」
昼食は賑やかに、和気藹々と進んで。
「アイスを奢りますから、好きなものを選んで下さいね」
「やったあ、ねえ、リャニャちゃんソフトクリームやろ!楽しいから!」
誰かが遠慮する前に、サトラ先輩がリャニャの手を掴んで立ち上がる。
「ソフトクリームを、やる?」
「一食分ずつソフトクリームが出る魔導具があってね、自分で作れるんだよ!」
それは楽しそうだと、リャニャはわくわくする。
「上手に作るのに技術が必要でね。と言うわけでお前ら、リャニャちゃんに見本見せろ」
「えでも」
「先輩が奢ってくれるって言ってんだから、遠慮しなくて良いんだよ。ですよね、先輩」
「ええ。全員、ソフトクリームで良いですか?ほかのものが良い方は?」
訊いてアガード先輩は、さっさと人数分のソフトクリームの食券を買ってしまう。物腰柔らかなようで、押しが強いひとだ。
「はいどうぞ」
そのまま食券を配られては、もう遠慮も出来ない。
さあ行けとサトラ先輩に追い立てられて、食券片手に食べ終えたトレイを返し、ソフトクリームの魔導具に向かう。
「味がたくさんあってね、あそこで職員さんに伝えると、用意してくれるんだ」
アイスクリームコーンを渡された生徒が、緊張の面持ちで魔導具に向かう。魔導具から吐き出されたソフトクリームはコーンに吸い込まれ、コーンからあふれて。
「おいこの下手っぴ」
なんとも形容しがたいぐちゃっとした造形になった。
「リャニャちゃんの見本にならないだろ、真面目にやれよ」
「苦手なんだよこれ」
続くふたりも、ぐちゃっとした出来栄えになり。
「どうだ!」
次のひとりはソフトクリームらしい形になんとかなっていたが、
「まだ形が悪い!」
サトラ先輩にあえなく却下されていた。
「ふっふーん、アミラ先輩にまっかせなさーい!見ててね、リャニャちゃん」
続いて魔導具に向かったアミラ先輩は、
「おお、やるじゃん」
まるでお手本のような、綺麗なソフトクリームを作って見せた。
「じゃあ僕もやって見せるね」
その後に作ったサトラ先輩も、売り物のようなソフトクリームを作って見せて。
「こんな感じで、ソフトクリームが出て来る速度に合わせて円を描くと綺麗に巻けるよ」
サトラ先輩が助言をくれたものの、上手く出来るだろうかとリャニャは不安に思う。
「リャニャちゃん、そう緊張しなくても」
緊張するリャニャの肩をなでたアミラ先輩が、魔導具を指差す。
「あんな出来でも味は変わらないから」
あんなと指さされたのは、サトラ先輩に続いて挑戦した初級魔法師で、暴れに暴れたソフトクリームは、今にもコーンからこぼれ落ちそうになっていた。
「どうせ下手だよ」
「いや、リャニャちゃんの緊張がほどけたから許す」
「失敗しても誰も怒らないから、楽しんで」
サトラ先輩とアミラ先輩に背中を押されて挑戦したリャニャのソフトクリームは、
「まあ、初めてならそんなものだよ」
「コーンの上に乗ってるだけ上手!」
暴れるソフトクリームに遊ばれた出来になった。
コーヒー片手に座って待っていたアガード先輩が、そんなリャニャのソフトクリームを見て笑う。
「なんだか、あなたに似た見た目になりましたね」
笑いつつ声をかけるのは、肩に乗る小モフで。
{にっ}
話題にされて嬉しかったらしい小モフが膨らんでソフトクリームの横に浮くと、確かにぐちゃっと丸まったソフトクリームはモフによく似ていた。
「ふふ、可愛いですね」
そんな風に笑って言われると、リャニャの失敗ソフトクリームも、可愛らしく見えて来る。
「さ、溶ける前にお食べなさい」
「はい。いただきます。一緒に食べる?」
まだポワポワとソフトクリームの周りに浮いている小モフに声をかければ、嬉しそうに震えてから、アガード先輩の肩に戻った。
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