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 研究室を飛び出したサトラ先輩は、そのまま足早にしばらく進むと、後ろをうかがって、誰も追って来ていないことを確認し、息を吐いた。

「あー……おもいっきり喧嘩売っちゃった」

「あの、すみません、わたしのせいで」

「え?いやいや、日頃の鬱憤晴らしだよ!」

 速度を緩めて歩きながら明るく言って、サトラ先輩は笑う。

「師匠と先輩の言ってることってさ、間違いじゃないんだけど、一般的じゃないんだよね。ほら、指名会のときの、覚えてる?」

「指名会の?」

「師匠に逆指名かました勇者がいたでしょ?」

 パティ・ジンガーさんのことか。

「覚えています」

「まあ、忘れないか。その、逆指名して来た見習い、パティ・ジンガーって言うんだけど、高位貴族令嬢なのに優秀だって有名なんだよね。あ、女性差別とかじゃなくてね、ご令嬢って、単なる箔付けのために学院に来てるひとが多いから、大抵、成績はそこまで振るわないんだよね。でも、彼女はこの前の指名会に参加していた見習い魔法師のなかでは、十指に入るくらいの成績優秀者なんだよ」

 家の力もあるし、師匠や先輩じゃなく、ほかの魔法師を逆指名していたら、喜んで受け入れられたと思う。

 サトラ先輩は首を傾げて言う。

「実際、あんな騒ぎ起こしてたけど、無事指名されて上級に上がってるしね」

「指名する方がいたのですね」

「うん。高位貴族出身の魔法師がね。師匠と先輩には遠く及ばないけど、そこそこ優秀なひとだよ。いけすかないけど。あのひと、貴族しか弟子にしないから」

 肩をすくめて、サトラ先輩は話を続ける。

「学院では、学問の前には皆平等であるって謳ってるけど、実際、権威権力におもねる教授もなかにはいるよ。先生たちだって、人間だからね。好き嫌いもあれば、妬みねそみもある。だから、そんな教授たちの付けた成績なんて当てにならないと言えなくもないけど、それでも、数値化された確固たる評価だからね。まるきり当てにならないことはないし、重視する教授は多いよ。だからこそあの子、リャニャちゃんに強気に出られたのだと思うし」

 自分の優秀さを自負してるんだろうねと、サトラ先輩は苦笑する。

「大抵の人間は高位貴族に睨まれたくないし、逆らわないよね。それが一般的。でも、クラシュ・サガンには通用しない」

 そうだ、あのとき、ジンガーさんは自分の方がリャニャより成績が優秀だと言ったのに、クラシュ師匠が反論した。

「クラシュ師匠は、ジンガーさんが優秀だとは思えないって」

「そ。まあ貴族どころか王族でさえも、特級魔法師クラシュ・サガンの機嫌を損ねたいとは思わないだろうからね。立場上仕方ないことだし、彼女の責任でもないんだけど」

 小さなため息を落としてから、サトラ先輩は続けた。

「親の立場って言うカサ上げがない状態での、純粋な能力で、パティ・ジンガーは師匠の眼鏡に適わなかった。リャニャちゃんとの相対評価ではなく、絶対評価でね。師匠とアガード先輩の目から見て、彼女は無能なんだ」

「成績は、良いのに?」

「成績が良くても。そりゃ、知識は多いに越したことはないだろうけど、中級課程までの実技なんて、あのふたりからしたらおままごとみたいなものなんだよ。おままごとが得意です!って威張られて、リャニャちゃんは評価する?」

 辛辣な言葉に、リャニャは目を泳がせる。

「なんなら、専科の授業や実技、いや、教師陣の研究ですら一部は、お遊びとしか思ってないかも。なんだそれって感じでしょ?」

 ずれてるんだよと、サトラ先輩は両手を上げる。お手上げ、と言いたいらしい。

「先輩が浮世離れしてるのは、事情があるし、まだ仕方ないとは思うんだよ。本人も、気にして直そうとしてるし。でも、師匠はもうちょっと、世間一般の常識ってものを気にして欲しい。間にはさまれる僕が、どれだけ苦労してることか!」

 ああーっと呻いて、上げていた手で頭を抱えるサトラ先輩。

「だからね!リャニャちゃんを攫ったのは八つ当たり!状況細かくわかってないけど、リャニャちゃん居心地悪そうだったし、なんか詰め寄られてたんでしょ?」

「えと、はい」

「そっか、んー、リャニャちゃんが嫌でなければ、僕が部屋を出てからの話、教えてくれる?僕も気になるし、リャニャちゃんも客観的な意見、欲しいでしょ」

「はい。お願いします」

 リャニャが答えると、サトラ先輩はニコッと笑って頷いた。

「じゃ、さっさと寮に戻ろうか。道端じゃ、誰に聞かれるかわかんないからさ」

つたないお話をお読み頂きありがとうございます

続きも読んで頂けると嬉しいです

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