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「リャニャ」
カクン、と船を漕ぎかけたリャニャの頭を、大きな手が支える。
「食べながら寝るな」
「すみ、ません」
はっとして、リャニャは姿勢を直すが、少しするとまた、うつらうつらと揺れてしまう。
ため息を吐いたクラシュ師匠が、リャニャからカトラリーを奪う。
「これだけ飲み干せ」
代わりに持たされたのは、スープの入ったマグカップ。
言われるままに飲み干し、カップを机に置けば、ひょいと椅子から持ち上げられた。
「?」
半分眠っているリャニャは、されるがままに運ばれる。
「今日はもう寝ろ。間違っても風呂に入ろうとは思うな。溺れる」
リャニャに触れる、闇の精霊の気配。浄化だ。
「ありがとう」
目を閉じたまま、微笑んで礼を言い、リャニャは精霊に手を伸ばす。なにかして貰ったら、魔力をあげないと。
精霊はリャニャから魔力を受け取ると、くすくす笑って、リャニャの額に口付けを落とした。
{おやすみ、愛し子の弟子}
{良い夢を}
「おやすみなさい」
リャニャも答えて、口付けを返す。精霊は笑いながら、リャニャから離れた。
「お前は」
天鵞絨のような声が、リャニャに降る。
「忌避しないのか、闇を」
言われた意味がわからず、リャニャは首を傾げる。
「どうして?」
なにを司ろうと、精霊は精霊だ。同じ階位ならば優劣はない。
「…………いや」
そっと、柔らかい、寝台に降ろされる。
「なんでもない。お前はそれで良い」
丁寧に布団でくるまれ、頭をなでられた。
「ゆっくりおやすみ、リャニャ」
温かく、柔らかいものが額に触れる。
誰だろう。わからないけれど。
「おやすみなさい」
解けかけた意識で答え、リャニャそのまま深い眠りへと、落ちた。
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