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回想回
それは、リャニャが中級課程の修了を認められたのちの、初夏のこと。中級課程を終えて晴れて上級課程への道が拓かれたティエジア魔法魔術学院の見習いたちの、師匠を決める指名会のことだった。
指名会は、学院で最も大きな講堂で行われる。師匠を求める見習い魔女と、弟子を求める学派員が一堂に会して、学派員により希望順位ごとに弟子の指名が行われる。見習いは指名されなければ師事できないが、指名されても弟子となることを断る権利はある。
学派員ひとりが持てる弟子の上限は、功績や助手の数により異なるが、いちどの指名会で指名出来る弟子の上限は一律で定められている。持てる弟子の上限に関わらず、十二人まで。順位付けして、一位から順に指名して行くことになる。すなわち、第十二順位までに指名されなければ、見習いは師匠を得ることが出来ないと言うこと。
いやが上にも高まる緊張感に、リャニャはガチガチに緊張していた。
指名されない、と言うことはない、はずだ。入学から三年で上級に上がるのは優秀さの証。十一歳での入学も珍しい早さなので、リャニャは中級見習いとしては若い。若い優秀な弟子が欲しいと言う指導者は多く、リャニャも事前に何人かから、良ければ弟子にならないかと打診を受けていた。どの方も評判の良い学派員で、きっと誰に師事しても、良い師弟関係を築けるだろうと思う。
けれど。
リャニャには憧れる魔女がいて。出来るならば、憧れの魔女、ウィルキンズ先生の研究室に入りたいと思っていた。
ウィルキンズ先生は偉大な魔女で、功績も多く実力も評価されている。自身が持てる弟子の数も多いし、すでに弟子を持てる地位の弟子も数多くいる。ウィルキンズ先生本人でなくとも、弟子の誰かに指名して貰えたら。
せっかくリャニャを弟子にと打診してくれた方々には悪いが、リャニャはウィルキンズ先生の研究室に所属する学派員の申し出を受けるだろう。そのことは相手にも伝えていて、だからどうか上位では別の見習いを指名して欲しいとお願いしていた。
ウィルキンズ先生に憧れる見習いは多くて。だからウィルキンズ先生の研究室の学派員たちは、事前に誰を指名するつもりか口にしない。以前、自分が指名されたいがために、弟子入りを打診されていた見習いを害した見習いがいたからだそうだ。
十分、リャニャの気持ちは伝えたつもりだ。嫌われてもいない、と思う。だから、リャニャをウィルキンズ先生の研究室にと言ってくれる学派員がいると信じている。信じたい。
祈るように両手を握り合わせて、リャニャは時を待つ。定刻になって、会場を見渡す。この時点で会場にいないなら、そもそも今年は弟子を指名するつもりはないと言うことになる。
いらっしゃった!ウィルキンズ先生!
隣にいるのは親しくしている学派員で、ウィルキンズ先生の三番弟子に当たる方。リャニャに気付いて、にこっと微笑んでくれた。一位の札を持って振っているのは、もしかしてリャニャを一位に指名してくれるつもりだと言うことだろうか。
期待と不安で、手が震える。
進行担当の副学長が、開始の合図を告げようとした時だった。
「待った待った!参加します!!まだ一位指名始まってないですよね!?」
声と共に、会場への乱入者が現れたのは。
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