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リャニャは十四歳。ティエジア魔法魔術学院に所属する、見習い魔女だ。
十一歳で入学許可証を受け取って、三年間。優秀な成績を修めて、この秋から上級課程の受講を許された。
ティエジア魔法魔術学院の見習い課程は五つ。
初級、下級、中級、上級と修了を認められて初めて、見習い終了の試験でもある卒業課程に移れる。
修了を認められない限り、何年でも同じ課程を受け続けることになり、特に中級は十年以上も修了を認められない見習いもいるほどだから、リャニャの三年で上級と言うのは、なかなかに迅速な昇級だ。
座学が中心の初級、下級に対して、中級は実技を求められるから、どんなに座学が優秀でも魔法魔術の技量がなければ修了を認められない。中級課程を突破出来ずに見習いを抜けることを諦めるものも多いので、中級が見習いを抜けられるのかの、ふるい落としの場でもあるのだろう。
中級課程と上級課程にはそれほどの隔たりがあり、上級課程を受けられる見習い魔女、すなわち中級見習いになってこそ、ようやく魔女の卵を名乗れるのかもしれない。
だって、上級課程に上がって初めて、見習いたちは自分の師匠を得ることになるのだから。
もちろん、中級課程までにも教えてくれる先生はいる。けれど、先生と師匠は全くの別物だ。どんな立場のどんな分野の専門家に師事するかで、その後の人生にも大きく影響する。
魔女としての自分の人生を共に背負い、手を引いて歩いてくれる。それが、師匠と言う存在だ。
そんな師匠だが、ティエジア魔法魔術学院では、学院の卒業生と教師陣で構成されたティエジア学派の学派員による指名方式で決められる。
つまり、どれだけ見習いが師事したいと思っていても、相手から指名されない限りは師匠になっては貰えないのだ。ゆえに中級以下の見習いは、成績優秀品行方正であろうと努める。万一にも誰からも指名されず、師匠なしが理由に上級課程へ上がれないなんて悪夢を回避するために。
リャニャももちろん、出来る限りの好成績を修めたし、生活態度も授業態度も真面目に愛想良く過ごした。
すべては憧れの魔女、ウィルキンズ先生に指名して貰うために。
ただ優秀なだけでは覚えて貰えないと、ウィルキンズ先生の関わる講義は取れるだけ取ったし、質問にウィルキンズ先生の研究室を訪れもした。先生にもその弟子にも顔を覚えて貰えて、ウィルキンズ先生本人は無理でも、弟子の誰かには指名して貰えるかもしれないと、思っていた。
思っていたのに。
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