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アニメイト様主催の、ブックフェア2023宣伝隊長特別キャンペーン『相棒とつむぐ物語』コンテストの応募作品です。
お題がバディがということで、恋愛だけでなく友情愛をメインに描いてみました。
文字数の規定は12,000文字以内です。
この企画はポイント重視のようですので、応援して下さる方はポイントいただけると嬉しいです!
※テンプレからは外れて行きます。正統派の恋愛で、ざまぁにはならないです。期待した方、すいません。
金糸銀糸に彩られた貴族の方々が、豪奢なドレスに身を包んだご令嬢方と踊られている。
そのダンスはさながら白鳥の求愛のよう。
そして広間の中央で踊る一際目を引くペア。レオ王太子殿下とその婚約者、ラ・フォンテーヌ家のご令嬢。
お二人がステップを刻むたびになびく互いの髪は、まるで陽に照らされた小麦畑のように輝いて、どちらも御伽噺に出て来るような美しさ!
ああ、なんて素敵なカップル! 今夜、殿下は、ついに正式に結婚を発表されるんだ。
広間の端に控えるメイドの私は、ついつい過去の思い出に耽ってしまう。
8年──。そう、私がレオ様にメイドとして仕えてもう8年経ったんだ。
レオ様と出会ったのは、忘れもしない私が13歳の冬。
私は事故で両親を亡くして、宮殿でメイドをしている叔母に引き取られた。
それで私もメイドになって、レオ様の身の回りの担当になった。
「レオ様。今日からこの棟で働かさせていただく、ミーナ・ミナーリと申します」
ベッドの上で、クマのぬいぐるみを抱いて離さない10歳の男の子に私は挨拶した。そのお顔はまるでお人形のよう。
「……ミーナ。……うん、よろしくね」
レオ様は元気がないのかな? 子どもだった私は遠慮もせずに聞いてしまった。
「レオ様、元気がないのですか?」
「……うん。姉さまがお嫁に行っちゃったんだ。いつも一緒にいてくれたのに。兄さまも留学してるし、僕は一人ぼっちになっちゃったんだ」
「レオ様は寂しいのですね」
「うん……。僕、寂しいよ。独楽も竹馬もブランコも一人じゃつまらないよ」
そこで私はまた身分もわきまえず切り出してしまった。
「レオ様、私でよければお相手しましょうか?」
その時のレオ様の目の輝きようったら、天使のようで!
「ほんと!? ミーナが遊んでくれるの?」
「ええ、私、こう見えても独楽回し得意なんですよ! 誰にも負ける気がしませんね!」
「じゃあ、今から勝負しよ! 勝負しよ!」
私は自分の仕事も忘れてレオ様と遊んだ。まあ、後でメイド長にこっぴどく叱られたけど。
でも、それからレオ様はしょっちゅう私に遊ぼうとねだるようになりましたね。
ああ10歳のレオ様──。
「ミーナ、遊ぼ! 遊ぼ!」
「だめですよ、レオ様。私、仕事がありますから。それにレオ様はお勉強の時間ですよ」
「勉強なんか嫌いだよ! ねぇ、遊ぼうよ! 遊ぼうよ!」
「やれやれ、仕方ない。ちょっとだけですよ」
「やったー!」
そうしてまた、たっぷり遊んでしまってメイド長に大目玉を食らったなぁ。
ああ、12歳のレオ様──。
「ミーナ、これあげる! 」
「まあ、綺麗なお花! ありがとうございますレオ様」
「ミーナ、僕、いいこと思いついたんだ。大人になったらミーナを僕のお嫁さんにしてあげるよ!」
私はそれを聞いて吹き出してしまって。
「ぷっ。ありがとうございますレオ様。でも紳士の殿方なら、まずは女性の気持ちを確かめるのがマナーですよ」
「そ、そうか。ミーナは僕と結婚してくれる?」
「お気持ちは嬉しいのですが、私とレオ様では身分が釣り合いません。レオ様は国を背負われるお方。私なんかよりもっと良い方が見つかりますよ」
「むー。別に身分なんかどうでもいいじゃないか! 王位は兄上が継ぐし、僕は好きな人と結婚するよ!」
「お気持ち、有り難く頂戴します。でもまた、大きくなった時に考えましょ?」
「もー。そう言って誤魔化すー!」
ふふ。もしかしたら私はレオ様の初恋の人だったのかもしれないなぁ。
ああ14歳のレオ様──。
レオ様はどんどん成長して、もう私の身長なんかとっくに追い越してしまいましたね。
お声もハスキーになって、雰囲気も落ち着いてきて。
「ミーナ。これを君に贈るよ」
「まあ、毎年、お花を下さってありがとうございます。でも何で毎年この日に下さるんです?」
「僕が愛しい君と出会った日だから」
もー! 甘い言葉も使えるようになっちゃって、このこのこのー!
ああ16歳のレオ様──。
でも、ある日、ご不幸があって……。
「レオ様、一昨日から何も召し上がっておられません。何か口に入れないとお体に障ります」
「……食べたくないんだ」
「レオ様、お願いです。食べて下さい」
「うぅ……。母上……。兄上……」
お母様とお兄様を事故で亡くされたレオ様は泣きじゃくっていて、か弱い少女のようで。
私はついついレオ様のベッドの隣に座って、レオ様を抱きしめてしまった。
「レオ様、私も両親を亡くしています。貴方のお気持ちは痛いほどわかります」
「ミーナ……」
レオ様は抱きしめる私の方を向いた。私達は目が合ってお互いを見つめる。
私達は何とも言えない空気に包まれて。
すると、徐々にレオ様の顔が私の顔に近づいて来て。
唇と唇が──。
──触れそうな瞬間。
「だ、だめです。レオ様」
私は咄嗟にベッドから退いた。
私は真っ赤になって、鼓動の高鳴りを抑えられなかった。
「なぜだ、僕はずっと君に好きだと言って来たのに!」
「今のレオ様は王位を継ぐ身。戯れでも私のような者とこんなことをすべきではありません」
「戯れじゃない! 本気なんだ! 本気で君のことが好きなんだ!」
その言葉は私の心をぎゅっと締め付けた。
「レオ様……」
「どうか君の気持ちを聞かせてくれ。君は僕のことを好きじゃないのかい?」
ああ、レオ様──。
幼い頃からずっと私を好きでいて下さったレオ様──。
私は──。
私の気持ちは──。
「……私も、好きです」
私がその言葉を放った瞬間、レオ様の顔は蕾が開くように綻んだ。
けれど──。
「いいえ。申し訳ありません。今のは聞かなかったことにしてください」
「なぜだ! ミーナ!」
「申し訳ありません。レオ様のお気持ちは受け取れません。私とレオ様は好きになってはいけないん、で、す……」
涙が、私の頬を伝った。
窓の外からは雨音が聞こえる。きっと春の嵐だろう。私はその雨のように涙を止めることが出来なかった。
「失礼します」
そう言って私は扉へ向かった。
「ミーナ!」
ベッドからレオ様が私を呼び止める。私は振り返ってレオ様を見た。
「君の覚悟はわかった。だから僕も覚悟を決める。僕は王位を継ぐ。ただし僕はこれから悪魔になる!」
レオ様がそう言った瞬間、窓が光って雷鳴が轟いた。
稲光に照らされたレオ様の顔は妖艶で、その眼差しは畏怖すら感じた。
私は失礼しますと言って急いで部屋を出ると、すぐさま人気のない所へ行って泣いた──。
……なんてこともあったけれど、あの夜のことは夢だったかのように、次第に私達は平常に戻りましたね、レオ様。
お兄様が亡くなって王太子になられたレオ様は、嫌いだったお勉強も必死に取り組むようになりました。
きっと王位を継ぐご覚悟が出来たのですね。
レオ様は私に普通に接して下さったけれど、もう好きだと言ってくることはなくなって、私に毎年下さっていたお花も途絶えてしまいましたね。
でもそれでいいんです。レオ様は妃を迎えねばなりません。私のようなメイドに言い寄って変な噂が立っては困ります。
寂しい気持ちはあるけれど、私はもう心の整理がついたつもりです。
そして、今、18歳のレオ様が私の目の前で踊ってらっしゃる。婚約者とご一緒に。
レオ様。長年お仕えしてきたレオ様が妃を迎えられる。メイドとしてこんなに嬉しいことはございません。
私は感無量なのですよ。うるうる。
と、そこで広間の音楽が止んだ。
「──みんなに聞いて欲しいことがある!」
おっと、ついに来た。ダンスを終えたレオ様達は二人で広間の正面に歩いていく。
正面にはレオ様のお父上の陛下がいて、二人を見守っている。
さあ、いよいよご結婚の発表だ。レオ様が口を開く。
「私、レオ・ディ・レオナルディは、婚約者、ララ・ラ・フォンテーヌと──」
うんうん。
「の、婚約を破棄して、ミーナ・ミナーリに求婚する!」
……。
……。
何つった?




