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グラスの街

アメドリムの街を出て数日、この日も俺達はグラスの街を目指し歩いていく。

道中、先頭を進むトトマラがいち早くオークの群れに気づき、声を上げる。

「オークが5匹、みんな気を付けて!」

それを聞き、すぐさまウルレアとアリスも臨戦態勢に入る。

「エンチャント」

愛用の刀にマナを込めると、瞬く間にオークたちを切り伏せていく。


このパーティで魔物と戦う所を何度も見ているが、そのほとんどはウルレアが倒していた。

トトマラはタンク、アリスは魔法使いと役割がないわけではないのだが、2人が

魔物を倒すより先に、ウルレアによって倒されてしまっているパターンがほとんどであった。

例によってこの日もアリスの詠唱が終わる頃には、残っているのはオーク達の死骸だけという有様である。


「また1人で倒しちゃうんだから。もう私達いらないんじゃないの~?」

ウルレアに近づくとトトマラは無邪気に笑いかけ、楽しそうに会話している。

アリスはその様子を無表情な顔で見つめており、何を考えているか表情からは読み取れない。

「さっきのオークたちにモンスターグラブを使えば捕まえられるのかな?」

「一体どうやってオークの身体があのボールの中に入るんでしょうか…」


「それなら間違いなく入ると思うぞ。魔法と同じ感じに思っておけばいい。せっかく使うなら生きてるやつ相手じゃないと意味がないだろうけど。」

本家と同じなら、相手がオークだろうが伝説のモンスターであっても、弱らせる事が出来れば大抵のモンスターは捕まえられるはずだ。多分だけども。

その後も順調に進み、目的地であるグラスの街目前のところで夜になった。


「今日はここで野営にしよう!」

道中集めていた食料を使い、ウルレアとアリスが夕食の準備を始める。

料理が出来ない俺とトトマラは、慣れた手つきで野営の準備を行う。

おかげさまでこの生活にも慣れてきて、最初は夜もなかなか眠れなかったが、今ではぐっすり眠れるようになった。

夕食が終わりみんなで一息ついてる時、ふと気になっていた事を聞いてみる。

「みんなはどうして冒険者になったんだ?」


「私は冒険者だった父さんに憧れてて、それがきっかけで村を出て冒険者になったの。まだまだ修行中って感じだけどね。」

いつもと変わらない笑顔のままトトマラは答える。


「わ、わたしは里のしきたりが嫌で飛び出してきて。冒険者として登録したところを2人と出会って、仲間に加えてもらったんです。」

ウルレアにしては珍しく、いつもより少しだけ熱のこもった声に聞こえる。


「妹を探すためよ。」

いつも通りの無愛想だが、短くもアリスの強い意思を感じさせるその言葉に、その場の誰もそれ以上踏み込んで聞く事は出来なかった。


翌朝、再びグラスの街を目指し進む。

しばらく進むと、久しぶりの街が見えてきた。

「わぁー、あれがきっとグラスの街だね。どんなところかワクワクするなぁ。」

「ようやくまともな宿に泊まれるわね。」

目の前に映る街に、トトマラとアリスは思い思いの言葉を放つ。


街の入り口に着くと、あまりに人の気配がない事に気づく。

今まで立ち寄った街には差はあれど人の活気というものがあったが、ここはあまりにも人の姿が見えない。

「全然人がいないね。」

「人の姿が全く見えないのは変ですね。何かあったんでしょうか。」

トトマラとウルレアは異常な街の光景に辺りを見回す。


「なぁ、みんなこの街に来るのは初めてなのか?」

3人から肯定の返事が返ってくる。

「とりあえず誰かいないか探してみよう。」

このまま突っ立っていても埒が明かないので、とりあえず街の中を進む。

普段は露店などが並んでたであろう場所も人の姿はなく、まさにがらんどうといった様子である。

そうして進んでいくと、子供たちが数人集まっている姿が見えた。


「ねぇねぇ、君達なにしてるの?」

ようやく人が見つかった嬉しさを隠さず、トトマラは駆け寄り声を掛ける。

いきなり見ず知らずの大人から話しかけられこちらを警戒していたが、トトマラは持ち前の人懐っこさですぐに打ち解け会話している。


話を聞くと、どうやら大人達からはあまり外に出ないよう言われているらしい。

理由については聞いても教えてくれないそうだ。

子供達から商会の場所を聞くとその場を後にする。

教えてもらった方向へ進むと、やがて商会と思しき建物が見えてくる。

ここまで開いているお店がなく不安だったが、幸いにも開いているようだ。


入り口のドアを開け中へ入る。

そこには冒険者の姿はなく、中にいるのは受付のお姉さん1人だけである。

「あのー、アメドリムから商品を卸しに来たんですけど。」

「ごめんなさい。今うちでは依頼の受付や商品の買取はしてないのよ。」

「はるばる来てもらったのにごめんなさいね。」

お姉さんは生気のない顔で申し訳なさそうに言葉を放つ。


思いがけない状況に誰も言葉を発さない。

申し訳なさそうなお姉さんの顔を見ながらこの後どうするか考えていると、入り口から初老の男性が入って来た。

「外から来た方がいると聞いたが、やはり冒険者の方でしたか。」

「私はオーキンス、この街の町長をしています。」

「この街は今緊急事態で他所の街との交流は行っていないのです。本当に申し訳ない。」

見ず知らずの自分より年下の男女に向かい、深く頭を下げる。


トトマラはその痛々しい姿に黙っていられず、この街で起きてる事態に踏み込もうとする。

「教えてください。緊急事態って何か困ってるんじゃないんですか?」

町長が言い淀んでいると、入り口から若い男が慌てて入って来る。

「オーキンスさん!やつらがまた街の入り口まで来てます!!」

それを聞いた町長は、入って来た若い男と商会の外へ出ていく。

「すまない、用事が出来たので私はこれで失礼する。」

「君達も早くこの街から出ていきなさい。」


ただ事ではないと感じた俺達は、顔を見合わせ町長の後を追った。

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