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いい人なのに酒癖が悪い人っているよね

次の街から結構マジメな話になります。

「それじゃあ、トキヤが正式に仲間になった事にかんぱーい!」

トトマラの音頭で乾杯し久々の酒を呷る。

数日前テストに合格した俺は、3人と一緒にいくつかの依頼をこなしていた。


何度か取引をして分かった事だが、商会の担当者は基本的に商品のメリットについて説明をすれば、金額について揉める事は少ないという事。

元々の金額がぼったくりでないというのもあるのだろうが、こちらがきちんと商品について説明すればそのまま商談成立する為、非常にやりやすかった。

またアーリ〇ン以降、商品を見て不思議な感覚を受ける事はなかった。

商品自体が現代で見た事あるような物ばかりなのもあるかも知れないが、今のところは順調に異世界に適応できている。


「あんなに簡単に取引決めるなんて、トキヤはホント凄いよねー。」

「そうですね、私じゃとても真似出来る気がしないです。」

トトマラとウルレアが褒めてる横で、アリスも小さく相槌を打っている。

実際そんな大したことはしてないので少しこそばゆいが、悪い気はしない。

どちらかと言えばこの3人の交渉能力が低すぎるだけな気もするが、それは言わないでおいた。


途中、トトマラがトイレに席を立つ。

「ねぇ、トキヤは冒険者になる前は何をしてたの?」

しばらくすると、いつもと様子が違うウルレアが俺の横に座り話しかけてきた。

「え、いやそのPC操作とか色々と。」

「へぇ~、お姉さんにはよく分からないけどトキヤって凄いのね♡」

指で俺の足をなぞりながら、耳にフッと息を掛けしなだれかかってくる。

元々色気のある外見に似合わず控えめな性格のウルレアからは想像できない、積極的な態度に経験値の浅い俺は当然キョドるしかない。


「ねぇ、トキヤは彼女はいるの?いないならぁ、お姉さんがトキヤの彼女に立候補しちゃおうかしら♪」

「いないですけど。ていうかキャラ変わってない!?」

首筋に顔を寄せると、蛇の様な長く細い舌で俺の首筋を舐め、尻尾を身体へ巻き付けてくる。

嬉しい事には違いないが、されてるこっちが顔が赤くなってきた。

アリスに助けを求めようとするが、静かにちびちびとお酒を飲んでいる。

絡まれるのを恐れてか、我関せずといった様子で助けてくれそうな気配はない。

下の息子の暴走を心配してると、ようやくトトマラが戻って来た。


「あ~、2人共なにやってるの!!」

状況を見て一瞬で理解したのか、ウルレアを引き剝がしてくれる。

「トキヤに迷惑かけちゃダメでしょ。まったく、ウルレアはお酒飲むとすぐこうなるんだから。」

「ンフフ、トトマラは怒ってる顔もホント可愛いんだから♡」

「こらっ、ちょっとダメだってもう。やめなさいって言ってるでしょ!」

今度はトトマラへ抱きつくと、舌でペロペロと舐め始める。


「本人には全く自覚ないけど、ウルレアはお酒飲むと性格変わるのよ。」

今頃になってしれっと寄って来たアリスは、他人事のように眺めている。

処世術とはいえ少しは止めようとしろよ、と心の中で突っ込んでおく。

結局、ウルレアが酔いつぶれて眠るまでこの騒ぎは続いた。


翌日、部屋を出てみんなと合流する。

「ふわぁぁ、おはよう…」

「みなさんおはようございます。」

眠そうに挨拶するトトマラとは対照的に、ウルレアは昨晩の事を何も覚えておらずケロっとした顔をしている。

男としてはあんな風に絡まれて悪い気はしないが、後々の事を考えるとウルレアにお酒を飲ますのはやめておこう。


そんなこんなで今日も商会へ行き、依頼が無いか探していく。

いくつか掲示されている依頼を見るも、どれも低ランクの冒険者向けで中々良い物は見つからない。

そんな時、シュエイから声を掛けられた。

「きみ達依頼を探してるんだよね。よければこの依頼なんかどうかな?」

「内容はグラスの街まで商品を卸してもらいたいんだけど。」

そう言って、奥から商品を持ってくる。

その形状は一見ただのボールにしか見えないが、真ん中に大きなボタンのあるその特徴的なデザインに嫌な予感しかしない。


「これはモンスターグラブって言ってね。弱った魔物に投げつけると、この中に捕まえる事が出来る優れものなんだ。」

「へー、このちっちゃなボールの中に魔物を捕まえられるなんてすごいよこれ!」

トトマラをはじめみんな喜んで聞いているが、本家の方を知っている俺は黙って見ている事しか出来ない。

結局、全員乗り気でシュエイの提案に賛成し、依頼を受ける事になった。


「最近、グラスの街から来る人がいなくて気になってるんだよね。」

帰り際、そんな言葉を耳にしながら商会を出る。

そして俺達はグラスの街で事件に巻き込まれたのである。


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