野営にて
簡単なキャラ紹介その2
「パチ・・パチッ・・・」
焚火を囲いながら、それぞれ思い思いの表情をしている。
夕食は現地調達した素材をウルレアとアリスが調理し、料理が出来ないトトマラは代わりに材料となる素材を集める。
トトマラは獣の狩りに手慣れているだけでなく、落ちている草やキノコについての知識も豊富であり、食べられる物とそうでない物も一目見れば分かるらしい。
本人曰く、山育ちのトトマラにとっては料理を作る事より数十倍簡単だそうだ。
そうして出来上がった夕食の味は、店で食べるものにも引けを取らない美味しさだった。
食事も終わり、一息ついていたところでウルレアへ気になっていた事を聞いてみる。
「そういえば、さっき戦闘の時に光ってたのは一体何なんだ?」
「あれは…、マナを集めて刀にエンチャントしたんです。」
「私達デミククルは、大気中に散らばるマナを扱う魔法が得意な種族ですから。」
デミククルという初めて聞く単語に思わず聞き返してしまう。
「デミククルは私の種族の事です。」
「伝承では、蛇の魔物と人間が結ばれたのが、私達の祖先だと言われています。」
大体こういう言い伝えは眉唾物と聞くが、ウルレアの顔を見ると本人は信じているんだろう。
「2人共魔法使えるのいいよね~、私なんて前に出て囮になるぐらいしか出来ないもん。」
「おかげで未だに冒険者ランクもCのままだし。」
横で聞いていたトトマラが話に混ざって来た。
「私もCなのであまり関係ないですよ。」
「それを言ったらアリスさんの方がスゴイですし。」
持ち上げられるのに慣れてないのか、すかさずアリスへ話の矛先を向ける。
「アリスもすごいんだよね、もう冒険者ランクAになってるんだもん。」
ここまで黙って聞いていたアリスは、話を振られ慌てて反応する。
「まぁね。私が取得してる魔法の数を考えたら当然よ。」
アドリブに弱いのか一瞬驚いたもののすぐに胸を張るその姿は、年相応の少女の可愛さを感じさせる。
これでもうちょっと愛嬌があれば、きっと男にもモテるだろうに勿体ないと思う。
「それに比べて、私達ルーンレイスはみんな魔法なんて使えないから戦士ばっかりだよ。」
周りと比べ、自分だけ魔法が使えない事にコンプレックスを感じているのが伝わってくる。
「俺はトトマラの戦い方も大事だと思うけどな、肉壁も立派な仕事だと思うぞ。」
フォローするつもりじゃなく、素で思った感想を口にする。
「肉壁って何の事?」
聞きなれない言葉に首を傾げ、こちらをまっすぐ見つめてくる。
獣人とはいえ、こんなかわいい娘にじっと見つめられるなんて慣れてないのでどうしても照れる。
「肉壁って言うのは、パーティーの中で前に出てみんなを守る役割の人をそう言うんだよ。」
弁解という訳じゃないが、他意のない誉め言葉で使った事を伝える。
「そっか、前に出てみんなを守りながら戦うのが肉壁かぁ……」
俺の説明を聞いて納得したのか、嬉しそうな顔で耳をパタパタしながらそれ以上聞いてくる事はない。
静かになってしまったため空気を変えるべく、アリスへ話を振った。
「そういえばアリスは魔法をどこで覚えたんだ?」
その瞬間、険しい顔つきになるもすぐいつもの不愛想な顔に戻ると、一言だけ口にする。
「そんな昔の話もう忘れたわ。」
本当に忘れた訳ではないのだろうが、暗にこれ以上この事について話す気はないという空気を出されたら、さすがに突っ込んで聞く訳にもいかない。
結局その夜は、それ以上話が弾む事もなく夜は更けていった。