最初の夜
勘太は、疲れていた。非常に、疲れていた。足が棒のようになり、いまにも折れてしまいそうだった。
村を出てからかれこれ半日ほど歩いているが、歩いても歩いても森を抜けられずにいたからである。
親にもらったのは3日分の食料とナイフと簡易テントだけであったので、勘太はなるべく早く集落を見つけたかった。しかし何の希望も見つけられないまま日は西へと傾いてゆく。
テントの張れそうないい感じの木立を見つけたので、勘太は今晩はそこにテントを張ってキャンプすることにした。枝を集めてきて、炎の魔法を使って火をつけ暖を取り、近くにあった沢の水をついでに煮沸してから冷まし、干し肉をそれで流し込んだ。その後はテントに簡易結界を張って、勘太は眠りに着いた。
”ドガーン!!”
強烈な爆発音に勘太は叩き起こされた。簡易結界のおかげで無事だったが、結界の外の木は倒されており、焦げ臭いにおいがする。何の音かと周囲を見渡すと蛍のような小さな虫たちが大量に飛びまわっていた。魔獣の1種である”爆虫”だ。反応性の高い薬品を上から落としてくる危険な生き物で水に弱く、体内の薬品は爆薬として利用できる。そう勘太が幼い頃読んだ図鑑に書いてあった。
「アクア・スプラッシュ!」勘太がそう叫ぶとスプリンクラーのように大量の水が爆虫たちに撒かれた。
羽に水がかかったりして、爆虫たちは次々に落ちていく。
爆虫を壊滅させる頃には太陽が東から顔を出していた。
勘太は爆虫の死骸を集め、そこから薬品を取り出して何匹分かまとめて葉っぱに包んだ。そしてそれを10個といくつか作った。それを小袋に入れて、テントをしまって歩き出した。
空には雲がなく、太陽が勘太の進む道を明るく照らしていた。