むかしの話
それは気の遠くなる程むかしのこと・・・
この世界に存在していた二つの種族である人間とビーストは長い間戦争をしていました。
その戦争は300年も続き、人間もビーストも疲れ切っていてもう戦いはうんざりでした。
しかしこの二つの種族は極めて仲が悪く、人間は天使を、ビーストは龍を信仰していたこともあって、話し合いの場が設けられることはありませんでした。
そんなある日のこと、ある戦場にて空が黒雲に覆われてその中から龍でも天使でもない禍々しい巨大なものが現れて両軍に向けてこう言いました。
「我と取引をしないか?この戦争を終わらせることと引き換えにこの世界で最も価値のあるものを渡せ。明日ここにまた来るから、それまでに返事を考えておけ。」
そしてすぐにその禍々しいものは黒雲の中に消えて行きました。
人間とビーストは初めてこの時話し合いをして、普通にやっていては戦争が終わりそうもないので禍々しいものとの取引に応じることにしました。
次の日の昼、太陽が南中する頃に禍々しいものはやってきました。
「一日経ったので返事を聞きに来た。さあ、どうする?」
代表としてトゥルールという青年が
「私たちは戦争を終わらせたい。取引に応じよう。」
と答えた。
禍々しいものはそれを聞いて笑いながら、
「グハハハハハ、ガー八ッハッハッハ。いいだろう、交渉成立だ。」
と言った。
すると、急に辺りが真っ暗になり、地面が揺れ動き人間とビーストの間に巨大な壁が出現し、両軍とも戦う気が無くなった。こうして300年続いた戦争はあっけなく終わった。
しかし、その代償として世界から光が奪われた。光を失ったことで生物の目は退化し、何も見えなくなった。