第8話~1on1~
スカイたちがヴァイオレットの正体について話している頃、ヴァイオレットは正面からの戦闘を避けられないなら初手でできるだけ削ってしまおうということで罠を作っていた。
「相手の動きを止めるならやっぱこれでしょ」
と、独り言を言いながら罠を作っていく。扉を開けた時に作動するようにして、持っていたグレネードをひとつ残して、他をありったけ仕掛ける。簡易的だが扉の向こうの人を吹っ飛ばすくらいなら容易いだろう。爆風が届かないところまで下がり、スカイさんたちが上がってくるのを待つ。しばらく待つと、扉が勢いよく開いた。罠は上手く作動し、扉の向こうの二人を吹っ飛ばす。すかさずひとつだけ残しておいたグレネードを投げ込んだがスカイさんには避けられたようだ。ダウンしている男の人、名前なんだっけ?まあいっか。素早く駆け寄り確殺を入れる。スカイさんは階段下へと逃げていたようだった。
「こんにちは、スカイさん。お久しぶりですね。さっそくですがさっきのお返し、させてもらいますね?」
「遠慮しとくよ」
「そんな、遠慮なんてしなくていいのに」
私は笑みを浮かべ、手に持っているショットガンをスカイさんに向ける。
「ブルーク以外に負けるわけにはいかないんで、ここで死んでもらいますね」
「やなこった」
「あら、拒否権はありませんよ?」
ショットガンの引き金を引く。爆発のダメージはあまり入っていなかったようで一発では倒しきれず、スカイさんは階下へと身を躍らせていた。
「逃がさない!」
思わず大声が出てしまった。できれば今の一発で仕留めたかったけど、スカイさんも瀕死だろう。回復する隙を与えず殺すため、階段下へと逃げるスカイさんを追って私もすぐに階段を飛び降りる。しかし、すでにスカイさんの姿はなかった。
「普通に逃げられた」
逃がさないとか叫んだ手前、少し恥ずかしい思いをした、と思ってたけど逃げたわけではなさそうだ。目の前の部屋に気配を感じる。部屋の前に駆け寄り、扉を蹴り飛ばす。案の定、部屋の隅で回復しているスカイさんを見つける。部屋は物置部屋のようで障害物が多いホールのようなところだった。ショットガンを構えながら障害物を避けながら部屋を駆け抜ける。スカイさんも私が部屋に入った瞬間に回復の手を止め、銃口をこちらにむけていた。
「簡単にはやられないよ!」
「いいえ、終わりです!」
スカイさんが引き金を引いた瞬間、置いてあった荷物に手をつき空中に身を躍らせて散弾を回避する。
「んな、アホな⁉︎」
跳び上がった勢いそのままにスカイさんに蹴りを入れて床に押し倒す。それでも銃をはなさないのは、さすがと言わざるを得ない。しかし、私は既にスカイさんの手を足で押さえつけ、スカイさんの頭にショットガンを当てていた。
「チェックメイトです」
「負けたよ。やっぱりうちのチームに入らない?」
「お断りします」
「即答、そっか。じゃあ気が変わったらいつでも言ってよ」
「ありがとうございます。それじゃあ、さようなら」
「容赦ないッ」
スカイさんの頭にゼロ距離で散弾を打ち込んだことでスカイさんのアバターは崩れていった。
目の前にCHAMPIONの文字が現れる。時間にして30秒だったものの、体感5分くらいに感じた。それほどにスカイさんは強敵だった。
「ちょっとの間こういうのは遠慮しよ」
あまりのしんどさに口からこぼれた言葉さえも叶わない状況になるとはまだ知らない。