第7話~リベンジ~
東京のとあるプロゲーマーたちの事務所でブルークこと関本 蒼太は知り合いのプロゲーマーの配信を見ていた。
「あのバカ、やってくれたな」
ヴァイオレットが一人でランクマをしていた件についてはわからなくもない、これまで我慢できていたこと自体が奇跡だ。そう、ここまではいい。どうしてよりによってスカイと同じマッチに入り、終盤戦で戦っているのか、しかもこの男怒られるなーとか言いながら、嬉しそうに暴露してやがる。
「あいつとの縁切ろうかな」
本気でそう思うくらい事態は大きく、取り返しのつかないことになっていた。SNSではヴァイオレットについての話題で持ちきりだ。
ブルークの相棒、インビジブルスナイパーの正体判明!とか、ブルークの相棒は女の子⁉︎交際発覚か?などなど、俺は今SNS上で燃えに燃えている。
「はーっ、こうなる予感はしてたよ?うん。たださ?知り合いからバレるとかマジないわ〜、ほんとないわー」
愚痴っても時間は戻らないのでこの事態の収束に尽力するブルークだった。
「マジで覚えてやがれ、スカイの野郎、次会ったらグーパンは確定だぞ」
「うわっ!?」
「?どうしましたスカイさん?」
「いやなんか寒気が、俺死んだかも」
「訳わかんないです、さっさと行きますよ」
「結構真剣なんだけどなー泣」
緩い雰囲気ではあるが二人の目は真剣だ。これからヴァイオレットが隠れているであろう屋上へと向かうのだから。
「あの子は多分屋上だ、ショットガン持ってるから気をつけてな、俺が突っ込むからお前はバックアップしろ。俺が死んだらお前も死ぬから本気でやれよ」
「わかってますよ、これでもプロゲーマーの端くれですから。相手が可愛くても手を抜くなんてする訳ないでしょ」
「だといいけど」
なんとも言えない緩い雰囲気のまま屋上へと続く扉の前に立つ。
「いいか、カウントするからタイミング合わせろ。いくぞ、3、2、1、GO!」
勢いよく扉を開けた瞬間、扉が吹き飛び男二人も吹き飛んだ。
「グハッ」
「グヘッ」
吹き飛んだ拍子に後ろの壁に叩きつけられる。見かけによらず、そこまで体力は減っちゃいない。この程度はすぐに回復できる。回復する暇があれば、だが。壊れた扉の向こうからグレネードが飛んでくる。今回は正真正銘本物のグレネードだ。
「スカイさん!!」
階段下へ突き飛ばされ、爆発を逃れるが、ケイドは爆発に巻き込まれダウンする。
「後はお願ぃ」バンッ
という重い音にケイドの言葉は遮られた。
「こんにちは、スカイさん。お久しぶりですね。さっそくですがさっきのお返し、させてもらいますね?」
「遠慮しとくよ」
「そんな、遠慮なんてしなくていいのに」
少女は艶やかに笑い、手に持ったショットガンを俺に向けてくる。
「ブルーク以外に負けるわけにはいかないんで、ここで死んでもらいますね」
「やなこった」
「いいえ、拒否権はありませんよ?」
バンッという重い音と共に体に衝撃が走る。
「クッソ!」
悪態をつきながら階下へと体を躍らせる。
「逃がさない!」
俺とヴァイオレットちゃんの鬼ごっこが始まった。