第16話~ゲームとの出会い~
二人が死んですぐの頃の記憶は曖昧だ。二人のお葬式が終わったあと、私は叔父さんの家に引き取られた。学校へ行く元気も出ず、与えられた部屋で何もせず、ご飯を食べては眠る、自堕落な生活を送っていた。今考えれば、最も叔父さんに迷惑をかけていたのはこの時だった。それでも、叔父さんは支えてくれた。私の心の傷が早く癒えるように。その一つがゲームだった。ある日、私の部屋へ訪れた叔父さんは、
大きな箱を置いて出ていった。私も最初の方は放置していたけど好奇心に耐えられず開けてしまった。中には、アイマスクのような機械といくつかのゲームが入っていた。私は、あまりゲームはしない派の人間だったが、せっかく買ってきてくれた叔父さんに申し訳ないと思って、やってみることにした。なにを思ったのか私が最初に取ったのはあろうことか相手を殺して勝つバトルロワイヤルゲーム、legends of gunsだった。私の中にあるフラストレーションを発散したかったのかもしれない。今となってはもう覚えていないけれど、最初にそのゲームをとった過去の私を褒めてやりたい。なんてったって、ここでこのゲームを取らなければ私は一生死んだままだったかもしれないから。
グローヴァを頭につけて寝転がる。
「と、次は『ゲームスタート』?」
思ったより簡単だなぁ、なんて思ってると視界が真っ白になり、思わず目を瞑る。
『キャラクターを作成してください』
目を開けるとキャラクター作成画面だった。驚いたことに、目の前には自分そっくりの女の子が立っていた。どんなテクノロジーかは知らないけど、こっちからすれば好都合だった。めんどくさいから髪型と、髪と目の色だけ変える。制作を終えると次はチュートリアルだった。
『このゲームは同じマップで50人が一位を目指して戦うゲームです。ゲームが始まるとマップに直接ワープします』
という綺麗な女性の声と共に練習場のような場所にワープする。初めてのワープに混乱していると、10メートルほど前に真っ赤な人形が現れた。
『前方の人形は敵です。お好きな銃を使い、倒してみてください』
ガチャガチャと、大層な音を立て地面から武器が迫り上がってきた。
『右からスナイパー、マクミラン、ドラグノフ、Kar。
アサルトライフル、AK-47、 カービン。
ショットガン、レミントン、マスターキー。
サブマシンガン、トンプソン、MP5。
ハンドガン、コルトパイソン、グロック19。
グレネードは、フラググレネード、スモークグレネード、スタングレネードの三種類です』
あまりの多さに一瞬、なにがなんだか分からなかったが、とりあえず右の方から使ってみることにした。
「これは、マクミランって言ってたっけ。」
『はい、マクミランは射程が長く、1キロ以上の狙撃が可能です。しかし、扱いが難しく、 それをこなせる人は少数です』
「て、丁寧にどうも」
『これが仕事ですから』
「会話できるんだ」
『高性能AIですから』
ほえーと、感心していたが、すぐに当初の目的へと向かう。扱いが難しいって言ってたな、でも、
「そんなこと言われたら挑戦したくなるよね」
すみれの生気のなかった目に小さな火が灯っていた。ゲームという未知の存在はすみれ自身でさえも気づかないほど少しずつ影響を与えはじめていた。
まず手始めに、一番前の人形を狙う。バァンッ!!という、思わず耳を塞ぎたくなるような音と共に弾が飛んでいくのが見えた。もちろん、当たるはずもない。
「こんにゃろう、絶対当ててやる」
すぐに撃とうとしたがどうしてか撃つことができない。引き金を引こうと四苦八苦しているとまた、AIのお姉さんが話しかけてきた。
『コッキングをしないと撃てませんよ、右に付いてるレバーを引いてください』
「こうかな?」
『そうです、よくできました』
と、なんか絶妙に子供扱いされてる感じがしたけど気にしたら負けだ。
コッキングに成功した私は、その後も撃ち続ける。反動や音にも慣れてきた頃に、コッキングしても弾が出なくなってしまった。
「あれ?お姉さーん、撃てなくなっちゃったんだけど」
『ああ、弾切れですね。マガジンを出現させるのでリロードしてみてください』
と、お姉さんの言った通り、真横にいくつかのマガジンが現れた。その後、先程と同様に四苦八苦しながらリロードを完了する。
「ははっ、なんか楽しくなってきた」
こんな感情、いつぶりだろう?もっと、もっとこの世界で遊びたい!
これが、私のゲームとの出会いだった。