第14話~不愉快~
ブルークが扉を開け部屋に入った瞬間、たくさんのフラッシュが焚かれる音が聞こえた。それに臆せず入っていくブルークについて私も部屋へと入っていく。私が部屋に入った瞬間少し会場がざわつく、ちなみに今日の私は眼鏡を外してきている。学校に行ったり、買い物に行く時は眼鏡をしているので同一人物だとバレないようにするためだったけど、裏目に出たかもしれない。ブルークと共にステージの真ん中にある机に向かってゆく。私が定位置に着いたのを確認した後、ブルークがマイクを持って話し始める。
「この度は、会見にお集まりくださりありがとうございます。今回私たちウルテマが発表させていただくのはこちらにいる真城菫さんがウルテマの新メンバーとしてデビューするということです」
と、外行きの感じで話しはじめたブルーク。やっぱり猫の被り方が上手いなー、とか考えていると会場がざわつき出した。
「どういうことですか関本さん⁉︎今回私たちは先日の問題に関する謝罪会見だと聞いたのですが⁉︎」
「謝罪会見などとは一言も言っておりません。ただ私は一言先日の件に関する重大な発表があると言っただけですが」
「では先日の件に関する謝罪はないということですか⁉︎」
「はい、ありません」
と、記者たちの勢いのある質問に淡々と応えていくブルーク。こういう時やっぱりブルークはすごいって思うわ。
「ではそちらの真城さんがウルテマにデビューするというのは先日の件にどう関係するのですか?」
「それを今から説明しようとしていたところです。勘の言い方ならわかってると思いますが、何を隠そう彼女こそが先日の件の中心人物、
PN ヴァイオレットです」
「どうも、真城 菫です」
と事前に打ち合わせた通りに話を進めていく。ただその過程でされるであろう質問への回答は行き当たりばったりだったりする。
「先程謝罪はないとおっしゃいましたが、ファンの皆さんに迷惑をかけたとは思わないのですか!」
「全く思わない、訳ではありません。すみれさんの存在を隠し、ファンの皆さんを不安にさせてしまったのは申し訳ないと思っています。しかし、こちらにも事情というものがありまして、すみれさんはまだ高校生です。それも三年生、存在を世間に晒したせいで勉強が疎かになり、希望していた進路に影響が出たとなればこちらはどうお詫びすればよいかわかりません。それに両親にも申し訳が立ちません。その理由から、すみれさんの存在を隠していました。まぁそのツケが回ってきたのが今の状況なわけですが」
「ではなぜ、今になってプロになるのですか⁉︎」
「まぁ、ここまでいろんな人に認知されてしまっては逆にプロになる方が将来的にも安定していけると判断したからです」
「それなら、真城さんはそれで良いのですか⁉︎、将来を勝手に決められて、やりたいことがあったのではないのですか⁉︎」
ここで私に質問が飛んでくるか。まぁ、私は別に納得してるから良いも悪いもないんだけど。
「別に良いですよ。ゲームは好きですし、逆にこれからゲームをする時間が減ると思っていたので嬉しいくらいです」
「それでは、両親は⁉︎親は納得しているのですか⁉︎」
両親、か。お父さんとお母さんが生きてたらなんていうだろうか、まぁ二人なら私の夢を応援してくれるだろうなぁ。叔父さんも私の好きなようにするといいって言ってたし。
「まぁ、大丈夫だと思いますよ」
「な!?そんな曖昧な返事でいいと思っているのですか!社会をなめないでいただきたい‼︎」
ああ、めんどくさい、
「あなたの両親はそんなこと望んでないんじゃないですか⁉︎さっきの曖昧な返事から両親には許可をとっていないのでしょう!つまり、あなたの両親は協力的ではないということなんじゃないですか⁉︎」
「すいませんが、その質問は、」
「私は真城さんに聞いているのです!どうなんですか⁉︎」
この人に、私の家族の何がわかるというのだろう。
「あなたのいう両親というのはお父さんとお母さんのことでしょうか?」
「それ以外に誰がいるのですか⁉︎」
「それなら、私に両親はいません、中学校に入ってすぐ事故で死にました。でも両親はいつも私のしたいことをしなさいと言ってくれていましたし、私はそんな両親が大好きでした。私の両親のことをわかったようにいうのはやめてください、はっきり言って、不愉快です」
私の一言に会場が静まり返る。生放送だって言ってたっけ、なんか私と関わると放送事故になることが多いね。まぁでも今回はフォローをするつもりはない。私は別に悪くないし、人の家庭に首突っ込むから悪いんだ。あぁ全く、
気持ち悪い。