第9話~大馬鹿~
戦闘の衝撃から、ぼーっとしていると開始前のロビーにワープした。ロビーにはすでにやられていた二人が待っていた。二人は私が帰ってきたとわかるとすぐに駆け寄ってきた、というかアイちゃんは抱きついてきた。どうやら倒された後も私の様子をロビーのテレビで見ていたようだ。
「すごいよヴァイオレットちゃん!! あのスカイさんを正面から倒しちゃうなんて!」
「こら、アイ。ヴァイオレットちゃんも疲れているだろうからそんな抱きついちゃだめだよ。でも、本当にすごいよ。スナイパーだけでなく近接もあのレベルでできるなんて」
「あとあと、罠とかも作ってたよね⁉︎このゲームってそんなこともできるんだって驚いたよ!」
「まぁ、フルダイブゲームはプレイヤー自身の技術も反映できるからね」
「じゃあヴァイオレットちゃんは現実でも罠を作れるってこと?」
「どうだろう、作ったことないからわかんないや。この技術はゲーム友達におしえてもらったんだ」
「それでもすごいよ。あっ、そういえばスカイさんと知り合いみたいな感じだったけど、ていうかスカイさんのチームに誘われてなかった?」
「そうだよヴァイオレットちゃん!なんで断っちゃったの?ていうかスカイさんとどういう関係⁉︎ブルークさんのことも言ってたよね⁉︎」
般若の如き形相で捲し立ててくるアイちゃん。そんな顔できたんだね、じゃなくて。
「そんな一気に質問されてもこたえられないよ、一つずつね」
「あっうん、ごめんね? 興奮しちゃって」
「大丈夫だよ」
「じゃあじゃあ、一つだけ質問していい?」
「一つと言わず何個でもいいけど、」
「それは悪いよ、個人情報だからね!」
と、得意そうに笑う。まぁ私もプライベートな質問には答えないつもりだったからいいけど。
「なにが聞きたいの?」
「えーっとね、これはヴァイオレットちゃんと一緒に戦ってたときから気になってたんだけど、ヴァイオレットちゃんって何者?」
「ん?どういう意味?」
「そのまんまだよ、プロゲーマーじゃないって言ったけど並外れたプレイヤースキルを持ってるし、プロゲーマーとも知り合い。それに、ブルークさんと仲良さそうな口振りだったよね。だから、「アイ、ちょっと待って」
と、アイの質問に割って入ったのはメグミだった。
「どうしたの?」
「あまり人の事情に口を出してはいけない。それに、動画配信者としてあるまじき行為だ」
「あっ、えっと、そうだねうん、確かに非常識だったかも。ごめん、ヴァイオレットちゃん」
二人はさっきの勢いが嘘のように静まってしまった。確かに私は気にしたことがなかったけどブルークと親しい仲というのはあまり良くないかもしれない。ブルークとはだいぶ前からの付き合いだ。私が中学生の頃にこのゲームで知り合い、そこから仲がよくなっていった。ブルークがプロゲーマーだと気づいたのは高校に入った頃だった。中学卒業と同時にブルークがテレビにでたり、雑誌に載ったりと表で活動しだしたことで判明したことだった。ブルークに特別な感情を抱いたことはない。でも、周りからすれば良いものではないだろう。軽率だった、ブルークはただのゲーマーじゃないんだ。配信している人達の前でほいほい個人情報ばら撒いたりして。私は、
「とんでもない馬鹿だね」
ブルークの事情を考えてなかった。