今を生きる私以外の皆様へ
―今を生きる私以外の皆様へ
今夜全人類を殺します。―
差出人不明の手紙が警察に届けられて、物事が大きく動くかと思われたが、皆が皆信じるわけではない。
たとえ警察でもね。
どうせイタズラだろう、だって短時間で全人類を殺せるわけ無いと笑って、この話は終わりになった。
私は考えた。もしこれが本当に起きたらどうするのかと。
夕日の風を浴びながら、
何もできない無力感を感じ、唇を噛んだ。
唯一出来る事は、送ってきた動機を考える事だけ。
事実にならないで欲しいと思いながら、瞼を閉じ、相手の動機を考えた。
私が思うのは、意図せずに皆から嫌われていじめられてきたからの復讐。
それとも、自分が嫌いで自殺願望が生まれて、一人だけでは満たさせなかった。
いや単純に、意味は無いのかもしれない。
わからないけど。
考えても仕方がないか、そう思って瞼をあける。
そこには、綺麗な星が空一杯に広がっていた。
明るい都会では珍しい程の夜空だ。
「綺麗」と無意識に声に出ていた程に。
しばらく見ていると、キランと一筋の流れ星が落ちる。
すると次々に無数の流れ星が流れ出した。
何処かで誰かが泣いてる・・・・そんな気持ちになった。
気にしすぎだろうか。
あの手紙が忘れられないからなのか。
そろそろ帰ろう、私の家へ。
明日も朝が、早い。
道を歩きだした時に一人の女性とすれ違う。
[ありがとう、さようなら・・・・私以外の全人類の皆様]
そう声を聞いたのを最後に、
辺りは赤と白が混じった世界に
意識は行った。