始まりの街
東の森を抜けて、見える街は、冒険者の街ーバトラ。
森が近くにあり、外敵となる多数のモンスターが存在しているため、ギルドが盛んになった。今では冒険者たちの宿泊地となり、街も大きく賑わっていた。
「さてと、じゃあ、さっそくギルドってやつに行くかー」
街の中でも一際目立ち、人が賑わう場所へと向かう。冒険者の街というだけあって、通り過ぎていく人々は武器を携えているようだ。森の方面へ続々と進んでいく。
(まるで本で読んだ軍隊の行軍だな。)
それを尻目において、アレクはギルドであろうものに着く。外もそうだが、中にもたくさんの冒険者が内接する酒場で酒をかっくらっている。登録申請所と言うところには、あまり人はおらず、受付嬢が座っているだけだ。碧い髪のサラサラヘアーで、誰が見ても美人だろう。
「あら、冒険者登録かしら?」
「あ、そうで…」
ふと、どこで読んだか忘れていた本を思い出す。冒険者は敬語など使わないと書いていた気がする。アレクは言い掛けた言葉をしまい、言い直す。
「ああ、そうだ。登録を頼む。」
「ふふっ」
「ど、どうして笑うんだ?」
「だって、あなた今舐められないようにと思って敬語やめたでしょ。」
見透かされていた事に恥ずかしくなり、アレクはそっぽを向いた。美人な受付嬢はどうやら意地悪らしい。
「兄ちゃん、面倒くさい嬢に当たったな。そいつは趣味がわりーぞ」
「誰が趣味が悪いですって!?」
屈強な冒険者が助言をくれたが、もう遅い。すでにめんどくさそうな感じである。
「まあ、いいわ。この石版に手を置いて。」
「はい。」
手を置くと青白い光であふれ、文字が浮かび上がる。ステータスというのだと、先程の冒険者が教えてくれた。
「ふむふむ。なかなかいいんじゃないかしら。」
「おっ、バレッタのお墨付きか。兄ちゃんよほど筋がいいな。」
「ん?どういうことだ?」
「そいつはなかなか厳しくてな褒めるのはいいステータスの人材のみなんだよ。」
「ええ、これがカードよ。」
カウンターからすっと、黒のカードが出てくる。
「兄ちゃん黒か。なかなかみねえ色してんな。」
この冒険者が言うには、その人物にあった色が出るという、誰も得しない謎機能があるそうだ。アレクは不思議そうに見つめ、ポケットにしまう。
「なくしてもいくらでも作れるけど、なくしすぎると剥奪されるから気をつけなさい。」
失くさないようにチェーンでもつけようかと思いながら、冒険者の心得といううものを簡単に説明してもらった。
「以上よ。ちなみにそこにいるのがここのギルドマスターのオリガよ。」
「え゛?」
「よろしくな兄ちゃん。」
「強そうだとは思ったけど、まさかマスターとは…」
「まあ、よろしく頼むぜ。ここからは好きな依頼を受けるといい。この受付嬢でも誰でも依頼は受理はしてくれるぞ。」
「ええ、受け付けるわよ。アレク君。」
「なんかむず痒いし、アレクでいいよ。バレッタさん。」
「あら、それじゃ私もバレッタでいいわよ。私こう見えても18なのよ?」
振り返ってオリガを見るとうなずいていた。どうやらホントらしい。これで同い年とは恐ろしい美貌である。とにかく、バレッタを呼び捨てで呼ぶことを承知し、掲示板から手頃な討伐依頼を選ぶ。
「おっ、もう行くのか。気が早いな。」
「戦いたくてうずうずしてんだ。バレッタ頼む。」
「受理したわ。気をつけていきなさい。」
足早に走っていく姿を見てバレッタは、小さく微笑む。
「おっ、よほど気に入ったんだな。」
「そうね。」
バレッタはまっすぐ前を向きながら、ため息をつく。何かの未来を憂うように…。