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生きる環境

よろしくお願いします。


相変わらず扉を打ちつける音は止まず、それをBGMにし、ちゃぶ台を囲み、各々が食事をとっている。

ランドセルからパンを出し差し出したとき泥田くんがそっと手を伸ばして来た。細い指が微かに震えて見えた。牛乳を見せると

「水が止められているから喉がカラカラなんだ。助かったよ」

「冷蔵庫の中は何もないの?」

「お酒だけなんだ」

布団に丸まっているごみを剣山にする算段を立てていると、パンと牛乳に目を輝かせる妹さんと目が合い、その計画は頓挫した。相変わらず扉を打ちつける音は止まず、それをBGMにし、ちゃぶ台を囲み、各々が食事をとっている。

泥田くんの妹さんはパンを半分残し、食べるのをやめてしまった。不審に思い、飲んでいた牛乳パックのストローから口を離す。

「美味しくなかった?」

綺麗なやつを掻っ払って来たはずだが。

「つぎはいつになるかわからないから」

と妹さんは答える。頭の良い子だな。自分の置かれている状況を加味して、生き残る方法を考えている。

「パンでも米でもプリンでもまた綺麗なもの持ってくるよ。盗みが得意だから平気だよ」

ちなみに前世から殺しも得意だよ。いらん情報かな。

妹さんさんは残りのパンを再びほうばり始め、泥田くんはペロリとたいらげた。少しばかりか血色が良くなっている気がする。妹さんの後ろで泥田父が丸まって寝ている。パンと牛乳を近くに置いたが反応は無し。会ったことも話したこともない、これからも見たくもない話したくもない泥田父。部屋を見渡し、泥田兄弟を見る。泥田父は子供をほったらかしにする親の典型的な例だな。


回想

薄暗い、足の踏み場もない、物が散乱した部屋。カビだらけのパンと伸びきったインスタント麺、腐った果物、脱ぎ捨てられた衣服、タバコの吸い殻、床を這う虫、汚れたちり紙。ここは部屋というよりゴミ箱と呼ぶのが相応しいな。疼く牙を舌でひと舐めする。今日の獲物は一匹じゃないから心が躍る。土足で踏み込みお目当てのものを探す。左の襖を開けるとむぁっと甘ったるい匂いと籠った空気が肌を撫でる。ここもゴミ箱。ガリガリの男と丸々太った女がベッドの上で全裸で横たわっていた。情事が終わったあとなのか、男の手にはタバコがあった。こちらと目が合うとケダモノたちは怯えた小動物に変わる。サッサ終わらせようと爪を伸ばす。手を振り上げた瞬間、気配を感じた。微かな息づかいの音の方向に目を向ける。黄ばんだ押し入れの引き戸を開けると傷だらけの痩せた小羊が2匹。オスかメスか判別はつかない。痩せ細った子供がふたまわり小さい子供を抱きしめていた。その腕は点々と火傷がある。伸びきった傷んだ髪から覗く目はこちらを見ていた。爪が伸びた指を口元に当て、シッーと呟く。

「良い子は食べない。悪い子だけ」

後ろを振り返ると醜い獲物と目が合う。そして、手を振り上げ、爪をたてた。


回想終了

前世、主食が人間だった。真核生物ドメイン動物界脊索動物門哺乳網霊長目ヒト科ヒト族ホモサピエンスサピエンスだった。

主に凶悪犯、刑法犯、窃盗犯、粗暴犯、風俗犯、一般刑法犯、特別法犯、知能犯、包括罪種などを犯したものから肉を頂戴していた。あのとき出会った子供達はどうなったか。腐った親達に縛られることが無くなったのだからある程度は将来を選択出来るはずだが。泥田兄弟もそうだろう。2人が適切な処置を受ければ今よりも良い暮らしができるはずと思い、布団に丸まった泥田父を見る。掛け布団にくるまってできた山は、規則正しい起伏が止んでいた。布団が少し捲れた隙間から見えた獣の目と目があう。

また、よろしくお願いします。

頑張って続けていきたいです。

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