おやつは行く道で食べる予定
よろしくお願い致します
コソ泥のように学校裏に行き、給食室の裏口を目指す。お目当ては、今日の給食で出たミルクロールパン。給食室の裏口の横、積み上げられケースの中を覗き、綺麗な状態のミルクロールパンを探し出す。泥田家分3つと自分のおやつ4つ 計7つを拝借する。ついでに牛乳が入ったケースもあったのでこれも7つ頂いていこう。パンが潰れないよう、テトリスのように収納する。ランドセルの中身は食料と筆記用具だけとなった。教材は、クラスの掃除箱に隠してきた。クラスメートと共に考え出した知恵だ。ランドセルも心も軽くなる。任務を終え、こそこそと学校の裏から出たつもりがクラスメートに鉢合わせた。仕立ての良い黒の半袖ワンピースを着ており、長い黒髪を2つの三つ編みに結っている。肌が見えるところはほとんど包帯に巻かれている。さらに右目は眼帯で覆われ、左頬にガーゼが貼られている少女 小比類 巻
白と黒のコントラストから鯨幕を連想させてしまう。
「まきちゃん、傷の調子はどう?」
ゆらりと首を傾け、気怠そうだ。眼帯で塞がれていない三白眼の左目を細め、顔を歪める。
「あぁ、てめぇこれが大丈夫に見えんのか。あん?大丈夫に決まってるだろ。ダンプカーに跳ねられて、引き摺られたことがなんだよ。それくらいでオレが死ぬかよ。骨は1つもヒビ入ってねぇし、ちょっと、ちょぉっと血がでたぐらいで周りが騒ぎ立てる。オレがそんなに弱っちいやつに見えんのか?舐めんのか?オレのこと過小評価してっから心配かけんだよなぁ。こんな包帯飾りだよ。これぐらいかすり傷だよ。いらん心配かけてんじゃねぇょ。
心配してくれて、ありがとな」
「・・・・」
彼女とうまく友好関係を築くためには、ちょっとした時差が必要なんです。ほんとうに素直な子なんでこれからもよろしくお願いしますね。怒涛のツンデレを浴びせると、何かに気付いたのか?片目だけの三白眼で睨みつけこちらにずんずん近づいてくる。その迫力に気圧される。包帯に巻かれた腕を伸ばし、自分の襟を掴み、引き寄せる。鼻を寄せ、匂いを嗅がれる。
「メシの匂いがすんぞ」
まきちゃんからは消毒の匂いがした。
「欠席した人の分を拝借してきた」
それを聞くとさらに顔を歪める。
「泥田のとこか?」
といい襟から手を離す。
「そだよ。あと、おやつ」
「おやつ?まぁいい。あんま関わるなよ。何度かオレがわざわざプリント届けたことあるけどよぉ。ときどき見るからに怪しいやつ来てっから」
「怪しいってどんな感じ?今のまきちゃんといい勝負?」
「ははっ!口が達者なやつが」
「うわははっ、度胸あるでしょ」
歯を見せて、お互い笑い合う。ひとしきり笑った後、片目でこちらを見つめ
「様子のおかしい傷面と顔に刺青がある二人組の男だ」
「様子がおかしい?」
と聞くと左手の肘裏を右手の人差し指でつつく。あぁ、そういうこと。薬中か。
「ただの借金取りらしいがな。オレにはそうは見えねぇ。お前そういう危ねぇ連中によく目につけられるからよ」
「何のことやら?」
「ゆうの親とか」
今世でも血の気の多い奴らと何かと縁があるので生活を守るのに必死だ。両親だけは守りたい。
「まぁ、ゆうくんと行くんで大丈夫でしょ」
「ボディガードがいるなら安心だな。泥田のこと頼んだぜぇ」
とひらひらと手を振り、立ち去った。
ゆうくんもこれから泥田家に行く予定だったが別件で呼び出しをくらっている。何がバレたんだろう。というわけで、帰りは1人で下校することになった。軽くなったランドセルを揺らしながら目的地に向かう。
ボディガードはいない。なんか変なフラグ立っていない?
ありがとうございました。
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